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【体幹を安定させる「呼吸」の方法】

今回は「正しい呼吸が体幹を安定させる」についてお話をしていきます。

アスリートにとって、「体幹を安定させる」ことはパフォーマンスを上げる上で、非常に重要な作業とも言えます。

体幹が安定(スタビリティ)しない限り、四肢を効率よく動かすことはできませんので、土台とも言える部分になるかと思います。

ただちまたで言う「体幹トレーニング」を行うだけでなく、「呼吸」から意識をして取り組む事と、「体幹を安定させる」こととはどういうことなのかを考えて上げると質の高い指導が行える様になります。


〜①腹式呼吸と胸式呼吸の違い〜

まず呼吸の仕方というと、「腹式呼吸」「胸式呼吸」を思い浮かべるのではないでしょうか。

腹式呼吸は肺に空気が入った際に、横隔膜が下がることによって、内臓が前後左右に押し出される事で腹部が膨らんできます。

決して腹部に空気が入る訳ではなく、「横隔膜の活発な動き」によって呼吸が行われています。

逆に胸式呼吸は「外肋間筋」を使って、肋骨が開く・閉じるの動きを繰り返す呼吸です。

横隔膜が使われていない訳ではないですが、メインとなるのは、外肋間筋の働きによる肋骨の動きとなります。


〜②体幹が安定をしていない選手の特徴〜

では体幹を安定させる為に必要な事ですが、逆に安定をしていない選手の特徴を考えてみましょう。

体幹とは首〜臀部までの、四肢を除いた部分を言います。その中でも筋肉に支えられる事が少なく、周りの骨とも連結していない箇所があります。

それは「腰椎の4番と5番」となります。

特に激しいトレーニング時や疲労が溜まった状態となると、この箇所を痛めることが増えてきます。

L4とL5は身体の中枢である脊柱でもあるので、この箇所を安定させることが、体幹を安定させることに繋がってきます。


〜③腰椎(特にL4)に付着をしている筋肉とは?〜

体幹を安定させる為には、腰椎を安定させることとお話をしましたが、どうすれば安定をすることができるのか。

それは「腰椎に付着している筋肉を活性化させる」ことです。

例えば体幹トレーニングを行なった後に、ラントレーニングを行うと軸が安定している感覚と、腕を大きく振らなくてもスピードが出ているという長距離選手が良くいます。

これは体幹トレーニングによって、腹部のインナーマッスル(腰椎に付着している筋肉)が活性化したことで得られるメリットです。

どの部位でもそうですが、筋肉が活性化すると、「筋繊維の収縮」「筋腹の増大」によって筋肉の中心に向かって起始停止(骨)が引っ張られる現象が起きます。

これにより筋肉の両端についている骨が安定をするのです。

ではその腰椎に付着している筋肉は何か。それは「横隔膜・大腰筋・腰方形筋」となります。

この3つはL4に付着している筋肉ですが、今回の「呼吸」という視点からいくと、「横隔膜」を活性化させることが体幹の安定に繋がってくると言えます。


〜④横隔膜を効率良く使える呼吸法とは〜

では呼吸トレーニングによって横隔膜を鍛えていきますが、先ほどの腹式呼吸の練習をするのも1つとなります。胸式呼吸よりも腹式呼吸の方が横隔膜の働きがある為、普段から使える様にすると良いでしょう。

また主流なもので「ドローイン」「ブレーシング」というものがあります。

〈ドローインのやり方〉

・息を吸って吐き出す時に、腹部を細くしていき腹腔を限りなく小さくしていくことで腹圧を高める

〈ブレーシングのやり方〉

・息を吸いながら腹部を大きく膨らませ、吐き出す時にもへこませずに「腹腔内圧」が下がらない様にする


どちらも聞いたことはあると思いますが、横隔膜を使って体幹を安定させるという視点からいくと、どちらの方が良いのでしょうか。

結論から話すと、「ブレーシング」が主に横隔膜を利用した呼吸のトレーニングとなります。

ドローインはどちらかというと、同じインナーマッスルの「腹横筋」を使った呼吸トレーニングとなります。

後ほど話しますが、腹横筋も体幹を安定させる為には、鍛えることが必要な筋肉となっています。

ですが、効率良くL4を安定させる為には、直接付着をしている横隔膜の方が重要となってくるでしょう。


〜⑤ブレーシングとドローインのメリット〜

腰椎を安定させる為には「ブレーシング」が良いとお話をしましたが、「ドローイン」も腰椎の安定に繋がる呼吸トレーニング方法です。

ドローインは「腹横筋」という筋肉が主に使われてきます。

腹横筋は「第7〜12肋骨〜腸骨の内側縁」に付着をしているので、活性化させることで「肋骨を閉じる動き」に繋がってきます。

この肋骨を閉じる動きが「腰椎の安定」を生み出していきます。


〜⑥リブフレア(肋骨が開いている)はアスリートにとって良くない〜

リブフレア(肋骨の外旋)の定義は「肋骨下角」が91度以上ある場合に該当をしてきます。

リブフレアが起きているということは、「肋骨が開いている」ことなので、呼吸時に横隔膜が下がってこなくなってしまいます。

「横隔膜が下がってこない=機能していない」ということになります。

これを防ぐ筋肉として重要なのが、腹横筋となってきます。

腹横筋は腸骨から第7〜12肋骨に付着をしているので、収縮をしてくれれば肋骨を閉じる動きを出してくれます。

肋骨が閉じる

横隔膜が機能する

腰椎が安定する

体幹が安定する

上記の流れになるので、腹横筋を使う「ドローイン」も体幹安定には必要な呼吸トレーニングとなってきます。

〜⑦横隔膜と神経支配〜

横隔膜の機能が向上すると、自律神経のバランスが整うことも分かっています。

これは神経支配が迷走神経となっており、副交感神経が優位となるということです。

普段アスリートは試合やトレーニング時には、交感神経が優位となりやすいので、身体を「リラックス」させたい時に副交感神経は非常に重要となってきます。

この事からも、交感神経を優位にさせる「胸式呼吸」と副交感神経を優位にさせる「腹式呼吸」の両方が行えることが大切であると言えます。


〜⑧トレーニングに応用した「ドローイン」と「ブレーシング」〜

ドローインとブレーシング、この2つのトレーニングは似て異なるものとなるので、メリットを理解した上で指導に使うことが大切です。

それぞれメリット・デメリットは以下のようになっています。

〈ドローインのメリット・デメリット〉

メリット:腹圧が高まる、可動性(モビリティ)がある

デメリット:安定する事には向いていない

〈ブレーシングのメリット・デメリット〉

メリット:腹圧が高まる、安定性(スタビリティ)がある

デメリット:可動する事には向いていない

例えばクランチを行う際に、脊柱は屈曲をしていく為、可動性(モビリティ)が出なければいけません。

逆にプランクは脊柱を固定させておくことが正しいフォームになる為、安定性(スタビリティ)がある事が大切です。

クランチ→ドローイン

プランク→ブレーシング

この様な使い方が解剖学的には適している為、トレーニング種目毎にどちらの呼吸法が適しているか確認をしてきましょう。

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