見出し画像

はじめての九州 長崎編

 九州旅行2日目、私たちは博多から長崎に向かった。目的はただ1つ、本場のちゃんぽんを食べること。それも、ちゃんぽん発祥のお店で食べること。長崎は他にも見るべきところがあるだろと思われるかも知れないが、旅の目的なんてメジャーなものでなければないほどオリジナルな旅になる。型にはまった旅なんて嫌なのだ。

 朝、レンタカーを借りて出発した。福岡の高速道路は街の高架上を走る、いかにも都会的な道だった。ただしばらく行くと、田んぼや畑も目に付くようになる。佐賀に入る頃には棚田も目に入るようになり、初めて見る景色に気分が高まった。高速を降りると、すぐに路面電車の線路と海岸があった。海なし県育ちの我々4人は、全員明らかにテンションが上がっていた。

 さっそく長崎ちゃんぽん発祥の店の横に車を停めたが、まだ時間が早かったので、海岸線を歩くことにした。少し歩くと大きな公園があった。港を眺めることができ、後ろには山が広がっていた。話に聞いていたとおり、すごく綺麗な街だと思った。

 開店の30分前くらいにお店に戻り、開店待ちの列に加わった。さすが人気店、既に多くの人が並んでいる。後ろのおばちゃんたちは中国語で話してて、前のおばちゃんたちは関西弁で話していた。数百年にわたって海外と日本との窓口としての役目を担っていた面影を少しだけ見た。

 本場のちゃんぽんは、色々な具材が入っていて、スープが想像以上にクリーミーだった。麺も太い。他にも中華料理みたいな料理を何品か食べた。美味しいんだけど、味や食感は形容しがたいものが多かった。春巻きと唐揚げの中間みたいな食べ物は、甘いけどしょっぱかった(名前は忘れた)。並んだ時間と同じくらいの時間で店を後にしたら、店の前には既に「close」の看板が。思った以上に人気店。ひょっとして旅の目的地としてはオリジナルって訳でもなかったのかも知れない。


 お店の近くには名所がいくつかあった。まず歩いて向かったのはオランダ坂だ。すごい急勾配。標識には「傾斜20度」と書いてある(ほんとか?)。陸上部と剣道部出身の2人が坂道ダッシュをはじめた。が、すぐ諦めて帰ってきた。10年分の老いと3年分のヤニの蓄積が、おれたちを忘れるなと言っているようだった。私はその背中をカメラで撮っていた。名所と言われてるけど特になにもなかったので、ほぼ通り過ぎた。

あと2秒後にダッシュをやめる友人たち。左の標識には傾斜20度とある



 次に向かったのは孔子廟。その名の通り孔子が祀ってある廟だ。中華的な装飾の建物が威容を誇り、その中は展示室になっていた。高そうな食器や孔子の弟子たちの像、サカナクションのアルクアラウンドのMVみたいな感じで名言が吊された展示なんかがあった。外ではちょうど変面のショーがやっていた。高速でお面を替えて、面の表情に合わせて踊るものだ。すごく本格的で異国情緒だなぁと思ったけど、ラジカセで流している音楽がブツブツ切れたり止まったりして踊りづらそうだった。それでも変面師はアドリブを効かせ、お客さんを楽しませていた。プロの気概を見たが、偉い人は放送設備を整えるかラジカセ買い換えるかしてあげてほしい。

 最後に向かったのはグラバー邸だ。高い丘(というか山)の上にあり、麓からは斜めに進むエレベーターみたいなので上がっていく。丘の上に着くと、山と港に囲まれた街を一望できた。あと、麓あたりから周りに猫がいっぱい転がっている。ベンチの下には皿に入った餌がおいてあって、おそらく地域の人たちが世話をしているのだろう。この街で暮らしたら、心穏やかに過ごせるような気がする。来世は長崎で猫に生まれるのもいいかもしれない。

 グラバー邸を一周し、丘を下りて車に戻ってきた。帰りは運転席に座った。高速に乗る直前、右には並行して走る路面電車、左には海という状況ができた。1週間くらい滞在したいなぁと後ろ髪を引かれながら、素敵な街での数時間を終えた。またいつか行きたい街。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?