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テキヤの東大生『香具師の旅』田中小実昌

ぼくは子供のときから、おふくろに意志が弱い、と言われてきた。しかし、意志が弱いのを、意志の力でなおそうというのは、論理的にも実際にもむりなはなしで、……

『香具師の旅』田中小実昌

作者の田中小実昌さんは東大中退。彼の作品は私小説よりで「ぼく(おれ)≒作者」と考えてOKらしい。

変わった人だなぁ。

怠け者だけれど、東大に籍があって、「バナナのたたき売り」に憧れて香具師になる。作品中には他に、進駐軍のレストランの皿洗いバイト、小さな劇場の裏方など、かなりやわらかい(そしてやくざな)仕事をしている。食うために、英語の探偵小説・少女小説の翻訳もやってます。

香具師になるにはやくざに挨拶をしなければならないのだけれど、
商売上の能力が高くても
「でもお前は東大だから、あまり深入りもさせられないし……」
と親分が遠慮しているのが、人情だなぁと思う。

この作品集の共通項は、女性との関係を描いているということ。
作品の中でも「兄弟ではないのだけれど、近親相姦みたいに思う」と描かれるように、相手のことをどこか妹のように考えているところがある。
世話を焼いてやらなければならない、というような。
恋愛感情とも違うような。家族っぽい感じ。
妻なら分かるんだけれど、浮気相手なんだわ。
そこも、不思議だなぁと思いながら読んでた。

個人的に「時代を感じるな」と思ったのが、女性の体に触る口実として
「しらみの取り合いっこをしよう」
というやつ。(いかにも白々しくて恥ずかしい)
相手の体にしらみがいるって分かってるなら、うつるから触らないものだと思うけど。
そういう衛生状態の時代だったのかなぁ。

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