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【エッセイ】My graduation

「へぇー、意外にキレイにしてるねぇ」

「意外って、何!(笑)
澄んだ精神は澄んだ部屋から宿るんだよ」

「また難しい事、言ってー」

「テキトーに座って!何か飲む?」

「ねぇ、卒業アルバムある?」

「引っ越し繰り返して失くしたんだけど、友達が見ないからって、この前、譲ってくれたんだー」

「えー、見たい!見たい!」

「借りたモンだから、汚さないでよー」

本棚の一番上から大事そうにアルバムを引きだす

「へー、何組だったの?」

「A組」

「...どのコ、好きだったの?」

「特には居なかったなぁ」

「あっ、居た、居たー!
変わんないじゃん」

「ビールでいい?」

「あっ、ありがとう」

キッチンでハイネケンを開けて、部屋に戻る

「どうしたの?」

「...」

「何、何?」

「うーん、何か、悔しいなって」

「何が?」

「だってここに居ないんだもん」

「誰が?」

「私が」

とりあえず、乾杯!

「卒業式の朝に図書室に忍び込んで、誰も読まない難しい本に、自分の書いた歌詞、挟んできたんだぁ」

「えー、どんな歌詞なの?」

「あれー、どこにやったっけなー
これかな」

〜『置き忘れたgraduation』written by 廣瀬求

すっかりと色を変えた誰もいない教室
あの頃の笑い声と重ねれば少し切ない

錆びついたスコアボード
南向きのグラウンド

すれ違う制服たち
ヤケに頼りなく見える

時の早さに飲まれ
いつの間に忘れていた
時のない空間の中にいたあの頃...

どこにでもありそうな3階建ての校舎
どこにでもありそうな笑顔たちの中で
僕は生きていた いつも戸惑いながら
夕陽を背に帰るさみしさに似たMy graduation

サヨナラとかけ出した夕暮れの交差点
孤独の意味さえ知らなかったあの頃...

どこにでもありそうな平凡な恋をして
どこにでもありそうな細やかな夢を信じて
僕は生きていた みんな同じ風に吹かれ
喜びもさみしさも分け合いながら生きていた

どこにでもありそうな3階建ての校舎
どこにでもありそうな笑顔たちの中で
僕は生きていた いつも戸惑いながら
夕陽を背に帰るさみしさに似たMy graduation

あの日
机の上 置き忘れたフォトグラフ
あの日
グラウンドに置き忘れたgraduation♪〜

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