【エッセイ】新しい海
海沿いの道の駅の自動販売機でダイドーブレンドコーヒーを買った
20代の頃に、お金がかかって切りがないという理由から、缶コーヒーを買うことをやめていた
今日も給料日前の休日ということで、節約日ではあったが、何故だが久々にどうしても飲んでみたい気分になった
あの頃はダイドーブレンドコーヒーをひとつ買って、何時間でもウォークマンを聴きながら空を見ていられた
もう、そんな感受性は歳と共に失われたと思っていたけど、いざダイドーブレンドコーヒーがあれば、いつまでだって海を眺めていられる自分がいた
少し離れた隣に座った白髪の老夫婦
ソフトクリームをそれぞれカジりながら、水平線を眺め何か話してる
またその後に来た若いカップルが距離を保ちながら階段に腰掛けて甘く囁き合ってる
いつも待ち望んだ季節が
いつか何も告げず僕の前を通り過ぎた
愛する人を引き止めようと
自分を裏切った事もあった
他人がうらやましくて
自分を侮辱する夜をいくつも超えた
だけど、みんなこの海に捨てて
今日から生まれ変わろう
矛盾も妥協も辻褄もすべて飲み込むために
新しい海へ沈殿してた過去を解き放とう
どこからかベースボールキャップを被った3人組の兄弟の子供たちがやって来た
このコたちが僕の年齢ぐらいになる頃も、秋田のこの海の青さは守られているだろうか