続コンプレックス Vol.8

合同研修、4月10日からスタートしたものであるが、
Ｔ波顧問やＮ川取締役にも色々と担当していただき、
英会話、お花、デザイナーのＳ藤一郎さんにも話をしていただいた。

私自身が担当するコマも多く、全体コーディネートから、講師への折衝から
会場の押さえ、備品手配など大変だった。

流石にこの頃は私にとって忙しさのピークだった。
何から何まで全て私が一人でやらなくてはならないのだ。
だから、何でこうなることが分かっていながら1月に採用だったのか？
考えれば考えるほど腹が立った。

一方、Ｏ坪氏は何をやっているのか…
全くと言っていいほど手助けになどなっていなかった。
今として思えば、やりたくても何も出来なかったのだろうが…

その素人のＯ坪氏、
やけにSPAに対してだけは入れ込んでいた。
商品内容やら、いろんなことで大いに口を出し、
この分野だけは、自分が仕切りたいというのが見え見えであった。

「好きにすればいいさ…」

と思ったりもしたが、この頃から彼に対する思いが
複雑なものになってきており、
「まあ、オープンするまで、オープンまでの我慢！オープンすれば、彼は関係ないんだ！」

と、日々自分に言い聞かせ、
なるべく彼と深い話をしないように努めた。
話をすればするだけ、爆発する可能性が高いと思ったからだ。

合同研修は本社で行われたが、その後、全員「界ASO」に出勤先を変え、
それぞれのセクションでの研修、備品受け入れ、掃除などの業務へと移っていった。

一方、鹿は相変わらずで色んなところで色んな人と問題を起こしており、
話題の人となっていた。

素晴らしい面での話題ならば嬉しいとこであるが、
残念ながら　悪い面での話題の人であった。

その頃の話で今でも語り次がれている話の中にこんなのがある。

オープン前は、スタッフの出勤時間や帰りの時間も一緒だったので、
バラバラに行くよりも乗り合わせて行こう！
と、何人かで乗り合わせて来ていた。

或る日、料理長の車で行くことになっていた鹿がいくら待っても来ない…
仕方無いので、部屋まで行って『ピンポン・ピンポン』と押しても応答が無い･･･

更に『ピンポン・ピンポン・ピンポン』と押すと、
中でようやく人の気配が
『あっ、ハイ･･･』
『なに、寝てたの？もう行く時間だよ！どうすんの？』
『あっ、す、すいません。すぐ行きます！』

ところがそれから待てどくらせど来ない･･･
再度、彼女の部屋に行ってみたところ、な、なんとシャワーを浴びている
音がしている。

これには流石の料理長もブチッと切れてしまい、
鹿を置き去りにして出発、
シャワーを浴びて

「あ～すいませ～～～ん、お待たせしました～～」

というのりで出てきた鹿は、もう車が無いので焦ったことと思う。

鹿は料理長にすぐ電話を入れた。

「ひどいじゃないですか～！」
「ひどい！？ひどいのもオマエだろう～が・・・ブチ」

鹿は、自分の車でなんとか界ASOに来た。
最初からそうすればいいんだ。

もう、その頃私は鹿に対して何の期待も持っていなかった。

会議の席で、
「男の人への手技はお腹や太ももなんかは外さないと、あそこが元気になってきちゃいますんで！」

な～んてことを平気で言う本物の馬鹿だった。

また、提案の仕方や説明も全く自分本位であり、
会社組織というものが全く分かっていないノータリンであった。
今までどうやって生きてきたんだろう。

そうだ、2度目の面接に来てもらって採用を決めたとき、
彼女をJRの原水駅まで送ってやったことがあった。

その時、鹿はこんなことを言っていたのを思い出した。

「あの～私、最近彼とも終わったんで、何も引きずっていません。界ASOのことだけ考えて、頑張ります。」

気持ちは分かったが、この人普通じゃない･･･と思った。
そして、その時の予感はしっかり当たっていたわけである。

鹿は、勝手に東京でのショーへの出張を決めてチケットを手配したり、
何の許可も得ずに、大きな買い物をして着払い送らせたり、
信じられないことを次から次へと行い、もう我々の予測を大きく超えてしまっていた。

しかし、そこまでいくと私も黙認出来なくなった。

Ｏ坪氏に事の詳細を伝え、
「彼女に始末書を書かせます。それが提出された後、解雇を言い渡すしかありません。本人が何か言ってきても、こちらには始末書が既に3枚もあるわけですから･･･」

Ｏ坪氏は意外にあっさりと

「そうですね、そうしましょう･･･」

この人、なんだか頼りない･･･
どういう時に役に立つのか更に分からなくなった。

先ずは彼女に始末書を提出させ、
そして、彼女を呼んで話をした。

「それって、首ってことですか？」

みたいな、ふて腐れた口のききかたをしたが、
それ以上何だかんだ言ってくることも無く、意外に大人しく引き下がった。

まあ、あれだけ始末書書いているんだから、仕方無い･･･って
思ったんだろう。
ようやくスッキリした。