警視庁警備部 天王寺澪 「0」
とあるリゾートホテルのプールサイド。
今週末、ここでアイドルグループのコンサートが行われる。
一ヶ月ほど前にアイドルグループが所属する事務所に爆破予告が届いた。
事務所からの警備依頼後、コンサートが行われるプールを中心として、ホテル内及び周辺の捜索が行われた。
私はプールの捜索の担当になった、のだけれど・・・。
プールサイドのボンボンベッドに
一人の女性が横たわっていた。
超が付くビキニの水着につばの広いハット、REONASのPOLARIZERサングラスを、かけていた。
その隣のボンボンベッドで一人の男が掛けたサングラスの下から横たわる女性をじっと見ていた。
女性が動かないのを確認すると、男は起き上がって女性の下半身に視線を向けると、サングラスのツルを触り始めた。
男がニヤリと笑った。
隣のベッドに怪しい男が横たわっていた。
じっと私を見ている。
動かないでいると男は起き上がり、私の下半身に顔をを向けた。
サングラスのツルの一部を指先で押し始める。
さらに動かないでいると、男はあからさまに私の方に体を向けて身を乗り出した。
男の顔は明らかに私の股間に向けられていた。
男がニヤリと笑った。
膝を立てて男の視線を遮る。
男はベッドから立ち上がって、私のベッドの反対側に移動した。
そして、また私の股間に顔を向ける。
私はわざと男の方の足をベッドから下ろした。股間が大きく広がる。
男が生唾を飲むのが聞こえた。
私は電光石火の動きで被っていたハットを男の顔に被せると男の耳元で囁いた。
「あら、私ってそんなに魅力的かしら。」
男の体が硬直する。
「女性の股間ってそんなに興味あるの?」
男の体が震え始める。
「ここで大声を上げてもいいんだけど、そんな事したらあなた困るでしょう?」
男が無言で小刻みに頷く。
「そうよねぇ、だったら私と一緒に来て下さらないかしら。」
男はゆっくりと立ち上がると、踵を返して私を振りほどいて逃げようとした。
仕方なく逃げる男の手首を掴んでひねった。
男の体が綺麗に円を描いて宙を舞い、プールサイドに腰を強かに打ちつけた。
手首を掴んだまま立たせるとプールサイドから警備の詰所まで男を引きずるように連れて行った。
「この男、迷惑防止条例違反の現行犯です。あろう事か私の下半身を、特に股間を熱心に撮影していましたわ。証拠はこのサングラスですの。」
そう言うと私は男からサングラスを外して閉じ、ツルの端面からマイクロSDカードを取り出した。
そして私のポーチから取り出したスマホのSDカードスロットに入れた。
ギャラリーのアプリを立ち上げSDカードのフォルダを開けると多数の写真が表示された。
「あらまぁ、こんなに沢山。嫌だ、私の股間、こんなにアップで撮られてる。」
「こ、こんな事していいのか?警察でも無いのに。」
「あら、私自己紹介がまだでしたわね。」
そう言ってポーチから身分証明書を出して掲示した。
「私、警視庁警備部の天王寺と申します。」
「嘘だろ。」
「あなた、よりによって警察官を盗撮していたんですのよ。」
スマホからSDカードを取り出すと警備員に渡した。
「これ証拠ですわ。無くさないようにして下さいね。それとコピーはしないように。そんな事をしたら捕まえに来ますわよ。では、本来の職務に戻りますので。」
そう言って私は唖然とする警備員と苦虫を噛み潰したような表情の男を詰所に残してプールサイドのベッドに戻った。
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