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【チカホへの道2023#19】受賞者のヨコガオ~池端さん編~

研究成果でSDGsに貢献する発表会『博士学生が描く、66のミライ』最優秀賞を受賞された、国際感染症学院 池端麻里(いけはたまり)さん。
ポスター題目は『プロバイオティクスで動物を健康に!!そして、ヒト・環境も健康に!』です。池端さんに自身の研究や、イベントに参加したいきさつなどを語って頂きました!北大の研究の一端を是非一緒に堪能しましょう!


プロバイオティクス、ご存知ですか?

私は、プロバイオティクスで動物を健康にすることを目標に、大学院で日々研究を行っています。プロバイオティクスという言葉はあまり聞き馴染みがないかもしれませんが、乳酸菌やビフィズス菌といった、ヒトや動物のからだに良い影響を与える生きた微生物のことをプロバイオティクスとよんでいます。例えば、ヨーグルトや乳酸菌飲料、お好きな方も多いと思いますが、これらもプロバイオティクス食品の一つになっています。乳酸菌飲料などの広告で「乳酸菌〇〇株には免疫機能を調節することが報告されている」といったプロバイオティクスの効果を耳にしたことのある方もいらっしゃると思います。

このようにヒトに対するプロバイオティクスの有効性についてはよく調べられています。畜産領域でもプロバイオティクスは飼料として広く利用されてきたのですが、動物に対するプロバイオティクスの効果を実験的に証明した研究はほとんどありませんでした。
そこで、私は今ある治療法やワクチンでは制御が難しいウシの感染症に着目し、「ウシ感染症×プロバイオティクス」をテーマに研究を行っています。

ウシ感染症×プロバイオティクスってどういうこと!?

具体的には、プロバイオティクスがウシの免疫機能を調節することで、感染症に対して予防効果を示すのかどうかを検証しています。
特に子牛は免疫機能が未熟なため、感染性の下痢症や呼吸器疾患にかかりやすく、残念ながら死亡してしまうことも多いです。そのため、プロバイオティクスに感染症に対する予防効果が認められれば、子牛を病気から守ることが期待できます。

ワクチン効果のサポート、する?しない?

また、感染症に対してはワクチンによる予防が重要とされていますが、ワクチンと併用することでその応答を増強させるものがあれば、感染症をより予防することが可能になります。その候補の一つとしてプロバイオティクスが挙げられており、マウスを用いた研究ではプロバイオティクスにワクチン応答増強作用があることが報告されています。

ウシのからだでは、効果あり?効果なし?

しかし、ウシにプロバイオティクスを給与した場合でそのような効果が認められるのかについては報告がありません。これらのことを踏まえて、私はプロバイオティクスがウシのからだの中でワクチンに対する応答を増強させるのかどうかについて検証を行っています。プロバイオティクスにワクチン効果増強作用が認められれば、プロバイオティクスとワクチンの併用が感染症対策として有効であることが期待されます。

山本理事から最優秀賞の盾が授与されました。盾は北大の木を活用したオリジナルのものです。

研究が、社会に与えるインパクトとは?

この研究の社会に与えるインパクトとしては、ウシの病気を防ぐだけではなく、ヒトの健康や環境保全にも貢献するということです。
例えば、プロバイオティクスの給与によりウシなどの家畜の健康を維持できれば、それが安全・安心な畜産物の供給につながります。また、感染症の予防・治療には抗生物質が用いられますが、抗生物質の乱用により、従来の抗生物質が効かない薬剤耐性菌の出現が問題となっています。
薬剤耐性菌は畜産物を介してヒトにも伝播するため、ヒトの感染症の治療を困難にする可能性があります。また、排泄物などに薬剤耐性菌が含まれていると、耐性菌による水系汚染や農産物の汚染にもつながります。そのため、プロバイオティクスによりウシの健康を維持することができれば、抗生物質の使用量削減につながり、ウシをはじめとした動物の健康だけではなく、ヒトの健康、環境保全にもつながることが期待されます。

最優秀賞『プロバイオティクスで動物を健康に!!そして、ヒト・環境も健康に!』

私が考えるミライ社会のかたちとは・・・

私が考える未来社会のあるべきかたちは、多くの動物やヒトが生涯を通じて病気で苦しむことなく、健康で幸せな一生を過ごすことのできる世の中です。現在取り組んでいる研究を通して、そのような世の中の構築に貢献していきたいと思います。

うまく伝えられるようになりたい!からのイベント参加

このイベントを知った時に、この機会を活かして、自分の研究内容を自分の研究分野以外の方々にもうまく伝えられるようになりたいと思いました。普段の生活では、なかなか自分の研究を簡単にわかりやすく伝えるといった機会がなかったので、このイベントへの参加は、自分の研究を一度見つめ直す良い機会だと思いました。また、自分がどのようなことを研究しているのかということも多くの市民の方々に知っていただけるチャンスだとも思いました。

イベント参加で見えた、新しいまなび

実際に参加させていただき、多くの方々にポスターを見ていただきました。皆さん熱心に私の説明を聞いてくださり、とても嬉しかったです。
質問もしていただき、こういうところがうまく伝えられていなかったのだと反省することも多く、またこういったことをもっと勉強するべきだという学びも多く得られました。今回のイベントへの参加は、自分自身を成長させる非常に良い経験となりました。
改めて、本イベントの企画・運営に関わってくださったすべての方々に感謝申し上げます。また、ご来場いただきました皆様にこの場をお借りして、心よりお礼を申し上げます。

受賞者代表で挨拶をする池端さん。

北大大学院生に聞く、「どんなケンキュー?」ー北海道新聞ー

池端さんの研究は北海道新聞の子ども新聞”まなぶん”でも紹介されています。是非ご覧ください!

池端さん自身によるポスター解説が聞ける動画はこちら↓


研究成果でSDGsに貢献する発表会『博士学生が描く、66のミライ』受賞者のヨコガオを3回に渡ってお届けしましたが、いかがでしたか?
北大では多くの学生や研究者がより良い社会の実現を目指し、日々励んでいます。研究者って遠い世界のヒト?いいえ、そんなことはありません。実は私たちの身近にある『?』を解明すべく日々奮闘しているんです。
少しでも『北大』や『研究』に興味を持っていただけたなら、今年は是非『サイエンスフェスタ2024』へ足を運んでみてください。(12月頃です)
きっと、あなたお気に入りの『サイエンス』がみつかります・・・!


北大院生のいろんなことが分かる、『おもしろ!北大Labo』も是非!


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