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【チカホへの道 #20】中西登志紀さん編

「博士学生学生が描く、66のミライ」受賞者紹介の最後を締めくくるのは「最優秀賞」受賞者の農学院 博士後期課程2年 中西登志紀(なかにし としき)さんです。

「応用分子昆虫学研究室」に所属する中西さんは、日本人の私たちになじみ深い”あるもの”を使って、医療のミライに挑戦する博士学生です。”あるもの”とは何なのか?ヒントは研究室名・・・?答えを探しに行きましょう!

もっと多くの方々に自分の研究を知ってほしい!- イベント参加の決め手は熱い想い -

「研究者の方々だけでなく、もっと多くの方々に私の研究を知っていただきたい!」この想いが本イベント参加を決めた理由でした。
普段の研究生活の中で出会う方々は同じく研究をしており、その方々に対する発表にはいくつかのルールがあります。発表内容の順序、話す速度等、丁寧にお話しすることが出来れば研究内容を理解していただけます。
しかし。それはあくまで研究者の中でのルールです。実生活の中で考えると、例えば両親や祖父母に自分の研究を伝える際、10分も聞いてもらえるとは限りませんし、研究者の方々に対してと同じように説明をしても、その面白さを伝えることは難しいでしょう。
そこには特有のコツがあるのだろうと感じていましたが、それが何か?理解出来るほどの機会がこれまでになかったため、結果的にそのような場では研究の話をしない、しても盛り上がることを期待しない、いつしかそのような態度を取ってしまうことが増えていました。研究者を名乗る上でこれは問題だと感じ、現状を打破すべく、本イベントに参加しました。

研究内容を発表する中西さん

伝える難しさ、伝わる喜び、そして自信  -作成の過程で -

早速ポスター作成で普段とは異なる難しさを感じました。どうやったら立ち止まって見ていただけるか考をえていく中で、市民の方々の興味についての理解が甘かったことを痛感しました。そんな中で作成したポスターは当日まで見ていただけるか不安に感じておりました。
イベント当日、その不安は杞憂に終わりました。市民の方々は私が想像していたよりも、科学に興味があり、ポスターも長い時間立ち止まって見ていただけました。発表も最初は私が話したいことを押し付けてしまっていましたが、徐々に市民の方々の目を見て、相手の興味に合わせて発表できるようになりました。さらにその中で普段自分では気づいていなかった研究の面白さについて気付かされる場面もありました。これらの経験は発表における対話の重要性、自身の研究に対する自信を知ることにつながりました。

カイコ、ご存じですか? - 中西さんの研究の素 -

カイコは古くから衣服の原料であるシルクを生産できる昆虫として、人類の暮らしを支えてきました。日本においても養蚕業は戦前、日本の発展を支えた産業の一つであり、かつては至る所にカイコの餌である桑畑が広がっていました。しかし安価な化学繊維が開発され、普及した後にはその需要が急激に落ち込みました。また、養蚕農家の方々の高齢化に伴い、国内の養蚕業は衰退し、かつて見られた桑畑も激減しました。

カイコでタンパク質!?   - カイコのイマ -

現在、カイコは新たな産業への応用が期待されています。それはかつて養蚕業に大打撃を与えてきた病原ウイルスを逆に利用した、タンパク質発現系としての利用です。
この系ではウイルスの特定タンパク質大量発現システムを利用することで、ワクチンや診断薬など、欲しいタンパク質を大量に一匹のカイコから得ることが出来ます。この系はカイコを飼う事が出来る、桑を供給することが出来ればどこでも利用することができるため、省スペースかつクリーンに大量のタンパク質を得ることが出来ます。しかし、問題点もあります。それはいくつかのタンパク質においては取得が困難であることです。

「カイコでタンパク質」が抱える問題 - DXで難問に挑む -

その原因は様々ですが、これまでは試行錯誤することによって問題解決に取り組んできました。この試行錯誤は多くの時間を消費するため、コスト上昇、また、新型コロナウイルスのような新たな病原体が出現した際、その対応に時間を要することになります。これらの問題を解決するためには、開発の段階で事前に最適な発現システムを設計し、欲しいタンパク質取得までの試行回数を最小化する必要があります。私はこの部分にD Xを起こしたいと考えています。

中西さんの研究成果発表ポスター

「カイコ×DX」実現の核を創る -中西さんが目指すもの-

これまで試行錯誤で行ってきたものについて、データを集積したデータベースを作成し、どのようにすれば上手くいきそうかを予測できるようにし、その予測に基づいた発現システムの構築、さらにその結果を元のデータベースにフィードバックし、データベースによる推測の精度を高めるために利用する、このようなサイクルを回せるようになれば、いつか欲しいタンパク質をいつでも大量に取得できる環境を整えることができると考えています。
私は現在ウイルスを用いた研究により、このサイクルのスタートとなるデータベースの作成を目標に実験を行っており、このサイクルを一刻も早く実現できるように努力を続けております。

小さなカイコが世界を救う - 中西さんが考えるミライ -

このD Xを実現することができれば、これまでよりも迅速に必要なタンパク質を大量に得られる世界を実現できると考えております。カイコを飼うことができれば大量のタンパク質が得られる本系の発展は、発展途上国における自国でのワクチン生産の実現にも寄与すると考えており、誰もが平等な医療を受けられる社会を実現できると期待されます。小さなカイコが世界を救う、そんな日が実現出来るようこれからも研究を続けてまいります。 

授賞式前に談笑する受賞者3名。和やかな雰囲気ですが、研究の話になると熱くなります!

市民の方々に教えて頂いたこと、そしてこれから・・・。-経験を更なる成長に活かす-

今回本イベントに参加し、とても良かったと思います。それは当初の目的であった市民の方々とのコミュニケーションの仕方を学ぶことができたことに留まらず、研究生活においても役立つことを経験できたことにあります。
学会等の場においてもこれまで発表する際、自分の主張を伝えることに精一杯で、相手にどう伝えたいか、興味を持っていただくにはどうしたら良いかを考えることが足りていなかったなと反省しました。ある一定のルールの中での発表でも、やはり常にどう伝えるかは考え続けなければいけないと感じることが出来ました。
私は本イベントで学んだことを今回限りのものにするのではなく、これからの研究生活の中でも活かしていきたいと思うとともに、今後も多くの人とのコミュニケーションの機会を積極的に利用していきたいと考えております。


3回に渡ってお伝えした「博士学生が描くミライ」。同じ農学部の学生でも、研究室が違うとこんなにも研究内容が異なるとは驚きです!

イベントに参加してくださった博士学生の皆さん、研究を温かく応援してくださった市民の方々、改めてこの度のイベントへのご参加をありがとうございました。皆さんが描くミライを手助けする研究が、北大の中にはまだまだ沢山詰まっています。これからもたくさんのミライをお伝えできれば!と思います。




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