【現職教員必見!】科研費(奨励研究)について②
はじめまして。現職中学校教員の副島です。
note初チャレンジ中です…!よろしくお願いいたします。
というわけで,現職教員の方向けの
「科研費(奨励研究)」
この記事は前回の続きです。
まだの方はぜひ①からお読みください。
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1. この記事はこんな人向け!
(前回のおさらい)
この記事は日々授業研究をしていて,こんなことを感じている教員の方におすすめです!
前回の記事を読んでいる人は読み飛ばしてください。
「授業研究は楽しいんだけど,教育書って高いんだよなあ…」
「学会に行って勉強したいけど,旅費や参加費が高いなあ…」
「お金があって●●が買えれば,こんな教育実践ができるのになあ…」
「実践を研究としてまとめて発信し,フィードバックが得たい!」
授業研究における金銭面で悶々としている方,
もっと研究を活発に進めたい方向けの記事です。
2. 科研費(奨励研究)とは?
(前回のおさらい)
科研費とは,日本学術振興会が行っている事業の一つで,研究者を対象に研究のための補助金です。これ,私たち学校の先生にも申請できる「奨励研究」という区分があるのです。
1年間で大体10万円~100万円の研究補助金がいただけます。
最大100万円!
今まで自腹を切って高い教育書などを買っていた方にとっては
目から鱗の金額ですね!
もちろん,お金のために教育研究をしているわけではないと思いますが,
これを知っているのと知らないのでは大きな差です。
3. 申請書の書き方(基本スタンス)
ざっくりというと,基本的なスタンスは
という感じですね。
もう少し詳しく書くと,
という感じですね。
基本的には,
わかりやすく書く
研究のアイディア,計画,準備,環境は整っていて,お金さえあれば充実した研究が実現可能なことをアピールする
この2点に尽きます。
このことを4節ではさらに詳しく,項目ごとに説明します。
4. 申請書に書く項目
前節で書いた基本スタンスをどのように書式に反映するか,詳しく書いていこうと思います。
まず,申請書の書式を学術振興会のウェブページからダウンロードします。
ダウンロードしたWordファイルを開くと,各内容について以下のように書いてあります。
このうち③は現職の教員にはあまり関係ないと思いますので,①,②の太字の内容について詳しく書いていきます。
申請書の書き方は,大前提として「わかりやすさ」第一です!
論文ぽく厳密さを追い求める必要はありません。
4-1. 背景,問題意識,特色と意義
研究論文を書いたことがある人であれば,「はじめに」や「問題の所在」とほとんど同じです。学術・学界の動向をとらえ,最近の研究をレビューし,何がどこまで明らかにされていて,何が明らかにされていないか,何が求められているのかを書きます。
「それっていろんな論文を読み込まないといけないんだよね?
無理無理,そんな暇ないよ。」
と記事を閉じたくなった方,もう少し待ってください!
そこまで厳密に捉える必要はありません!
確かに基本的にはその通りなのですが,「論文」と「申請書」はこの部分が大きく違います。もし論文を書き慣れている方がこの記事を読んでいる場合,このような違いがいくつかありますのでお気を付け下さい。
申請書の「背景・問題意識」では,参考・引用文献を書く必要は(多分)ありません。衝撃ですよね。明言されているわけではありませんが,筆者も周りの教員も,書かなくて通っています。おそらく2ページという制約上,書いていたら研究のことは何も書けないからなくても問題ないのでしょう。論文に慣れた人にとっては,「副島(2024)」みたいなのがないと少し不安もあるかもしれませんが……笑
また,論文のレビューをするというよりは,学習指導要領や指導と評価の一体化のための参考資料,答申などで求められていることを明確に書き,自分の研究の必要性をアピールできれば十分です。もちろん,研究論文の内容を踏まえて書ければ,より説得力がある文章が書けるとは思いますが,それよりも現在の教育界で求められていることをひとりよがりになったり肌感や自分の経験だけを根拠にしたりせずに書ければOKです。自分の主張を裏付けるために,学習指導要領などの記述を使う感じです。指導要領や令和の日本型教育の答申でいわれてはいるが,実現にはまだまだ課題があることなど,現職教員だからこそ感じている課題は多くあるはずです。それをわかりやすく書き,自分ましょう。これが特色と意義です。普通に実践されていることとは何が違うのか,どうして自分が(学校の教員が)取り組む必要があるのか書きましょう。
4-2. 研究目的・計画・方法
まず目的です。研究では目的がとにかく大事だと口酸っぱく言われます。これは論文でも申請書でも共通している思います。背景,問題意識,特色と意義を踏まえて,研究の目的を端的に書きます。ここもわかりやすさ重視で一文で言い切るのがいいでしょう。
「本研究の目的は~~~である。」とか,「本研究では~~~を明らかにする。」と言い切った方が,見る人は「お,これが目的だな。」と捉えやすいでしょう。
次に研究計画と方法です。例えば次のような流れが考えられます。
1学期(4~7月)には文献調査をして授業の計画をたてる。
2学期前半(9~10月)には授業実践をする。
2学期後半(11月~12月)にはその授業の文字起こしをしたり,子どもへの質問紙調査(アンケート)をしたりする。
3学期にはその成果をまとめて学会や研究会で発表して,意見をもらい研究をさらに深める。
こんな感じで,いつどんなことをするのか。そしてどんな方法で研究をするのかを書きます。アンケートを統計的に分析するいわゆる量的研究をするのか,授業をして授業の音声を文字に起こしたりワークシートの記述を分析したりいわゆる質的研究をするのか,などです。ページ数も少ないので簡単にまとめましょう。
4-3. 研究の準備状況と実行可能性
まず,準備状況についてです。
「よし!じゃあ申請書を書こう!」
となっても,まだ何もしていない0からの研究をいきなり申請書に書き出すのは難しいです。それでは説得力のある文章を書くのは難しいでしょう。
なので,少しはアイディアがあったり,いままでに関連する研究をしているものを書くのがいいです。
そこで,ここには過去にどんなことを研究・経験していて,それが本研究とどんな関連があって,どんな備品や装置が準備されているかを書きましょう。そのあたりを端的に書くことで「あ,この人はお金を渡せば研究を順調に進めてくれそうだな」と読む人にわかってもらう必要があります。
といっても,実験などをする理系研究者の方と違って,教員の研究なので,備品や装置の準備状況は書かなくてもいい気はします(私は書いていません)。
「いや~研究なんかしたことないよ!書くことないわ!」という人もいると思いますが,自分が気合をいれてやった実践や研究紀要にまとめた実践などはありませんか?
そういったことでも十分にかけると思います。ただ,過去の研究は申請書の2ページ目にも書く欄がありますので,ここではあっさりとでいいと思います。
次に実行可能性についてです。上記のことも実行可能性に含まれると思うのですが,ここでいう実行可能性とは指導者や協働研究者のことです。
実践を共にする同僚や,指導してもらえる大学の先生などを書きましょう。教員養成系の大学出身であれば,教え子の実践研究について,恩師の方も喜んで協力してくれるのではないでしょうか?
くれぐれも,無断で書かずに,名前の記載の許諾を得てから書きましょう。
4-4. これまでの研究活動及びその成果
1ページ目にも少し書いた「過去の研究」についてです。大学や大学院での研究もかけるので,書きましょう。卒論でどういう研究をして,それが教員として働く中でどういかされ,つながってきたのか。教員として何を経験し,どういう問題意識をもって研究を継続しているのか。こんなことも書きましょう。
また,研究で賞をもらっていたり,学会や研究会での発表歴がある場合も書きましょう!ただ闇雲に書くのではなく,「本研究をちゃんと遂行できることのアピールになる研究」を選んで書きましょう。関係ないことをだらだら書いても読む気がうせてしまう可能性があります。網羅的に書くのはNGです。
直接関係する発表がない?そんなことはありません。研究したのはあなたに変わりないわけです。過去の研究と今の研究にどこかしらに共通点はあるはずです。探しましょう!書きましょう!
5. 大切なこと
最後に,申請書全体を通して大切なことを2つ書きます。
①なによりもわかりやすく!
読む人は必ずしもプロ中のプロではない可能性があります。正確には,研究のプロですが,必ずしもその分野について超専門家ではない可能性があります。例えば,体育の先生(専門種目はバスケ)人も授業では水泳も教えますよね?けど,水泳を完璧に指導できるかというと,やはり水泳専門の体育の先生には及ばないと思います。つまり,「広く見れば専門だけど,狭く見ると専門でない」という感じで,申請書を読む人の専門と,あなたの研究が完璧にマッチしていない可能性もある,ということです。
また,申請書の評価はかなりの数を一人の人間がしなければいけないらしいです。研究者の方は多忙なため,1枚あたりを読む時間はかなり限られるとか……ということでわかりやすく,とにかくわかりやすく,読みやすい文章を心掛けましょう。申請書を評価する研究者だって人間です。読みづらければその時点でだいぶ敗色濃厚になります。みなさんは漫画と契約書,どちらが読みやすいですか? 答えは明らかですよね? 極端な例ですが,わかりやすさが重要なことがわかるかと思います。
つまり,「プロでしょ?わかってくれるよね?」という態度で専門的な言葉ばかりを使った難しい文章ではなく,図表や具体例を用いて「自然とわかってもらえる」文章を書く必要があります。評価者に,理解するための労力を割かせてしまったらダメなのです。自然と頭に入ってくるわかりやすい申請書が求められます。この辺りが論文と申請書で書き方が多少異なる大きな理由です(学会誌に投稿する論文は専門がかなり近い査読者が審査をするため,専門的な言葉を使います。むしろ使わないとだめです。)。
②読む人に「お!こいつはちゃんと研究できそうだな。」と思わせる!
例えば,みなさんはちょっと予算オーバーだけどすごく買いたい服を見つけたときにどんなことを考えますか?
「最近似たタイプの服が古くなっていたし,この店ならポイントたまるし,おしゃれだし,このデザインの服持っていないし,割引されているし,せっかく店に来たし…」と買う理由を多く探しませんか?それと同じです。
申請者にお金を渡す理由になることは多い方がいいのです。「研究の計画が練られている,問題意識がはっきりしている,昨今の教育事情を理解したうえで申請書を書いている,過去にも関連した研究で成果を上げている,指導者に恵まれている……」こうした「お金を渡す理由」がたくさんある申請書ほど,いい評価をつけたくなりますよね?(きっと)
わかりやすく,2ページ以内でこれらのことを伝えることが重要です!だらだらと書くのではなく,魂をこめて「お金をいただく理由」を書きましょう!
これらを踏まえた私のおすすめする作戦は,書いた申請書を家族や友人等に読んでもらうことです。筆者はよく妻にチェックしてもらっています…笑
教育分野の経験がない人が読んでも入ってくる文章であれば,とても分かりやすいものになっているはずでしょう。また,「読んでみてどう?この申請者,信用できると思った?お金渡したくなる?」と聞いてみるといいでしょう。
6.まとめ
思ったより長文になってしまいました(申請書の文字数より多い…笑)。暇なときに何度かに分けてゆっくり読んでくださるとうれしいです。
とにかくわかりやすく書く
研究のアイディア,計画,準備,環境は整っていてお金さえあれば充実した研究が実現可能なことをアピールする
それができているか確認のため,専門家でない人に読んでもらって意見を聞く
まとめるとこんな感じでしょうか。
もっと詳しく知りたい方は,Kindle unlimitedなんかでも科研費申請書の攻略本のような本があるので,一度読んでみるといいと思います。
この記事が多くの教員の実践研究ライフを豊かにし,よりよい教育が日本中で生まれたり広がったりすることを祈っております。
感想等知りたいので,コメントしてくださると幸いです。
それでは!
※この記事と前回の記事は筆者の経験と主観に基づいた内容です。
ご注意ください。もしこれらの記事をよんでくださり参考にしてくださった場合も,申請書の結果について責任を負いかねます。