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僕は今日もカネコアヤノを聴く

やっとバイトが終わった。
最近夕方から夜23時までのバイトが多い。
シフトが不安定な僕は朝に入ったり、昼に入ったり。夜に入ったり。
もう、1人でこの店回せるんじゃないかってぐらい
色んな時間帯で働いている。

そして今日も23時上がり…。
車に乗り込み急いで自宅に帰る
今は盆の時期、田舎にも里帰りのための若い人たちが沢山出歩いている。
いつもなら人っ子一人歩いていないこの田舎道が、盆や正月になると色んな若人で溢れかえるのだ。

くたびれた飲み屋街。
昔よりシャッターが増えた気がする。
37度2分の生ぬるい微熱風が僕の頬をかすめていく。 
僕は周りの音を塞ぐように音楽をかけた。

イントロから分厚いベースの音。

「今年はきっと何処へも行けない 憎たらしい暑い夏も今では恋しく思えるよ。庭には皮肉にも花が咲くいつかは此処も離れるだろう二人を連れて」

僕は思わず笑いそうになった。
こんな寂れた街で1番最初に流れてきたのが
「栄えた街の」だったから。

僕もいつかはこの街を離れる。
いつかこんな寂れた街が栄えた街になるように
祈っている。
毎年変わらずうだるような夏が来て
誰かの幸せを運んでこの街が栄えることを祈っている。
大事なことは言葉にするよ信じていてね。
僕は車から流れるカネコアヤノの音楽のボリュームを上げてアクセルを踏んだ。

だから僕は今日もカネコアヤノを聴く。

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