夜光(20首)
U25に出した連作から20首です。過去の自分の歌を前提としている歌がいくつかあり、またそれが中心となった連作だったので評価されるはずがないよなと後から気がつきました。それ以前にやりたかったこと、と実力が見合っておらず、今見ると出したのが恥ずかしい出来なのですが、いくつか気に入っている歌もあるので公開します。よろしくお願いします。
°
夜光 芒川良
°
°
本を読む手をあなたは何度か止めてその度にわずかな砂の雨
足元が窮屈だから眠れない / 本当は靄のなかで見ている
深夜の自販機で缶ジュースを買って目覚めた枕元に青い紙
東京にいても自然は思うより傍にあなたは今どこにいる
春の夜に想定よりもぬるい風 その暗喩を滅ぼすために執拗にやさしくするといい
どの骨も丁寧にひとつずつずれてその連なりに星も降るはず
目も凍りつくほど暗い寝台で失恋をまさぐれば嬌声
後悔をしたとて拒むことのないくちづけ 窓の内は薔薇色
暗室の危険な恋を連写して窓辺にも大きな花 それで?
音が鳴る わたしはそうして口籠もり・花曇り・あなたは話し出す
一年ぶんの夜を集めて ここに いま 自慰したはずと自白しなさい
恍惚せよ 硝子を叩き割る音に不知火の言葉を想起せよ
告白の記憶は遠くそれまでに多くの口論も思い出す
電話で想いを、ありのままに伝えた夜は、よく眠れたんだよ、きっとね
光ったというより包まれた 耳の赤さにも原因はあるから
夏を / 夏のきみを 知らない とはいえ想像に難くないともおもう。
街頭のそばで一つの蝶になるまでを見ていて それは何方と?
白黒の夢で判別がつかない 霧は峰から性急にわたしに落ちてふたりの影絵
これまでの全ての比喩がこれまでの全ての自傷行為の全て
°
だれのこと・わたしは・明治神宮に降る雪に・あなたは・だれのもの
/
この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?