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『風神雷神雷神図屏風』にみる日本の余白文化

今日はお昼ご飯に近くのお店でテイクアウトしたピザとパスタを食べました。素朴な疑問なんですけど、ピザの上に乗ってる得体の知れない葉っぱってなんであんな美味いんですかね?固さも丁度いいし、苦すぎもないし、美味すぎでしょと思いながら夢中で頬張りました。ちなみにパクチーは嫌いです。
ビザの話は置いといて今回は「風神雷神図屏風」の構図について書きたいと思います!

遠近感を生む余白

「風神雷神図屏風」は江戸時代の初期に活躍した画家、俵屋宗達の名作です。俵屋さんは「琳派」という画風を生み出した人とも言われてます。そんな「風神雷神図屏風」は真ん中に大胆な余白を設けて左右に風神と雷神が鎮座している荘厳たる絵です。この真ん中の余白にはちゃんとデザイン的な意図があります。

風神雷神それぞれの屏風一つの正方形を対角線で結ぶと二等辺三角形ができます。特に雷神の肩からヒラヒラと伸びる帯がこの対角線を強調してます。(帯なのかな?それはちょっとわからんけど…)この三角形の余白が真ん中にドーンと出来るおかげで絵自体はフラットな絵なのに、遠近感がある絵になります。三角形というのは見ての通り、頂点が上に向かってすぼむ形です。この形は道路の真ん中に立ってみる風景と一緒ですよね。左右に建物が立っていて、道路の先がすぼみながら伸びているあの風景です。これによって遠近感が生まれると空間が生まれ、立体的な絵になって見飽きません。西洋の絵画だと遠近感を表現するために遠くのものと近くのものを筆入れの多い、少ないで描き分けるものが多いですが、この絵では余白の形で遠近感を表現しており画期的な絵です。発想的には色んなものを描き加えることで遠近感を演出するのではなく、モチーフを絞り、引き算をすることで遠近感を演出しています。このやり方は非常に日本的だなと感じています。

デザインの発見_04

「空(エンプティネス)」の文化

日本人は古来から「空(エンプティネス)」という概念に美や存在感を見出してきました。「空」というのが単なる余った部分ではなく、逆に主である、見えないだけでそこに在るみたいな考え方です。例えば日本文化の象徴である神社。神社って単的に言えばいわゆる祈る人が神様に自身の祈りを捧げる場所ですよね。お賽銭に銭を投げ入れて、鐘をカラカラと鳴らして神様を呼ぶわけです。小さい頃からやっていたことなのであんまり不思議に思わないですが、よくよく考えてみると実体のないものに向かって手を合わせているんですよね。鐘を鳴らして神様がいまそこに立っていると想像しながら皆祈ってる訳です。言い方悪いですけど丸投げの文化ですよね笑。「今ここに神様がいるんで各自想像して祈ってもらえますか?」みたいな。。
西洋だと例えばキリスト教とかって十字架が置いてあったり、キリストの像が掲げられているじゃないですか。それに向かって皆祈りを捧げている。神社と違って、「皆が信じているキリスト様はこのような姿だ!この方に向かって祈りなさい!」っていうような文化。真逆ですね。そんな日本の神社のように"神様がいるかもしれない場"に通ずる概念を「空(エンプティネス)」というらしいです。いわゆるこれって、さっきも書いたように「見えないけどそこにいる」っていう見る人の想像力を借りて成立する概念ですよね。表面的に見ると何もないわけですが、頭の中ではいろいろ建ち上がっている訳です。なので日本人というのは「空」というものに寛容だったわけです。風神雷神の絵を見て「え、何この余白…」ってなりにくい文化だったんじゃないかと思います。俵屋宗達は遠近感とか構図とか技術的な意図もあったと思いますが、風神と雷神の間に漂う「空気」みたいなものも描かないことによって演出しているのかなと思います。

幕の内万歳!な現代の日本

ところが現代日本では余白は何処へやらといった感じです。何でもいろいろと大量の情報を詰め込み、見る人の想像力は無視しています。特に自治体や役所の発行するチラシや冊子はその例です。たくさんの色を使い、たくさんの書体を使い、派手な見た目にすることに努めます。よく言われるのはいわゆる幕の内弁当のようなビジュアルです。いろんな種類のおかずが入りすぎて、結局何が美味しかったのか分からない。デザイナーではないからと言われればそれで済むのかもしれませんが、それ以前に自治体や役所というのは住む人の税金でそういったものを作るからにも起因するようです。それは、せっかく納めてもらったお金で作らせてもらうのだから余白があっては勿体無い、紙一面を使い切ろう!という考えです。役所の人からそれを聞いたときは正直、なるほど、、と思ってしまいました。しかし、せっかくの大事な情報も埋もれてしまうようなごちゃついたビジュアルはやはり直したほうがいいと思います。余白やゆとりあるスペースを恐れずに、見た目に優しいビジュアルが溢れるといいなと思ってます。

今回は以上です。

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