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授業で勝負しようと決めた1年目の研究授業

ずっと不登校の話が続いていましたが、「イエナプランと出会う前」という記事の続きを書きたいと思います。
イエナプランのことを書こうと思ったのですが、それまでの内容が濃厚で・・・
1年目の最後に行った授業がその後の私の考えにとても影響しているなと思ったので、今回はそのことについて。

適応指導教室アルバイトを経て、私は小学校教諭として採用され、そこで17年(育休6年の実質11年)担任を持ちました。
はじめから上手くいったわけではありません。
大変な時期を何度も過ごし、そのたびにたくさん学びました。

私自身の小学校時代は先生からの体罰と叱咤激励で育ったため、怒られない普通の教育を経験せずに先生になりました。
大学の実習や適応指導教室での経験で子どもとの接し方や指導は分かっているつもりでしたが、現場はそんな甘いものではありませんでした。
初めて担任したのは3年生。
子どもの人数が30人を超えると、適応指導教室でずっと少人数に寄り添ってきたやり方では全くうまくいきませんでした。
子どもたちとの信頼関係が築けず、授業もうまくいかず、管理職からは毎日呼び出しを受け、先輩教諭から毎日個別指導をうける毎日。
学級崩壊、パワハラ、上手くいかない人間関係・・・精神的にボロボロでした。
でも、負けず嫌いの性格なのでできない自分が悔しくて、ここで負けるわけにはいかない!と必死で外部の勉強会に出席したり、同じ研究部会の先輩に相談したり、本を読み漁ったりしました。

そうして迎えた1年目の3学期、当時所属していた学級経営部での研究授業が私の教員としての転機になりました!

社会「安全な暮らしを守る(火事をふせぐ)」の授業でした。
学級経営が上手くいっていなかった私は、先輩からの教えもあり、研究授業では子どもたちを惹きつけるような授業がしたいと思いました。
その時興味のあった「社会」で研究授業をやると決めたのですが、毎日私のことを監視し、ずっときつい言葉をかけ続けてきた同じ職場の社会科部の先生から「生半可な気持ちで社会の研究授業をするな」と怒られました。
でも、その先生が社会科教育の第1人者である北俊夫先生の勉強会に連れて行ってくださったのです。
そこで北先生の教えに感化され、そこから私は必死で社会科の勉強をし、消防署の教材研究をしました。
一緒に考えて準備をしてくださった研究会の先生方か
らもたくさんアドバイスをいただいたので、全て試してみました。

昔からスイッチが入ると止まらないので、そこからはやれることをひたすらやりました。

①消防関係の資料館をあたる
 研究会の先生の提案で、一人では大変だろうと皆さんが手分けして行ってくださいました。
私は集めていただいた資料を読み込み、消防関係の知識を得ました。

②舞台を手伝っていたときに知り合った音響の人に消防車の音源をもらった
何か消防につながる本物を、と考えた時にパッと思い付きすぐに連絡。
舞台の音響で使用している消防車の音源をいただき、それを授業の冒頭で流しました。
子どもたちは一気に消防車に興味をもち、そこから自然に火事の話ができました。
ちょっとでも繋がっていたらすぐに連絡するところは昔から変わっていません。

③新聞社の記事写真アーカイブを調べつくし、火事現場の写真を見つけ、新聞社に連絡し授業使用許可をとった
最初の授業で行ったのは写真からの問い出し。(あれ?この時からイエナプランみたいなことやってますね・・・)
なので、問いがたくさん出る写真を探していました。
先輩からのアドバイスで事故現場の写真を探し始め、ある新聞社のアーカイブで見つけました。
それは、テレビでも大ニュースになった有名な火事の現場写真。
その写真の何がすごいかというと、火事現場の様子が全て見える写真だったのです。
火事の火、煙、すごい台数の消防車と消防隊員、何本ものホース、ショベルカー・・・火事現場の消化現場の様子が分かる貴重な写真でした。
それを他の先生方に見せると、皆さんが「これはいい!」と言ってくださったので、すぐに新聞社に使用許可の連絡を。
担当の方と何度もやり取りし、授業での使用許可が下りました。
授業でこの写真を見た子供たちは写真を食い入るように見て、ワークシートを埋め尽くすくらいたくさんの問いを出しました。

④火事被害にあわれた方を紹介していただいた
私が力を入れてこの授業に取り組んでいたのを見ていた先輩の先生が、火事被害にあわれた方を紹介してくださいました。
とてもお辛い経験なので、その方のご負担にならないように少しでもお話が伺えればと思っていました。
一度お会いしてお話したところ、授業に協力してくださることになり、子どもたちの前で火事になったときの事を直接お話してくださいました。
子どもたちはお話に聞き入り、とっさの場合に人間がとる行動について、火事がどれだけ人の心に傷を残すのかということなど心に残る内容がたくさんあったようです。
この方とは、これ以降もお会いするたびにお話しするようになりました。

⑤消防署に出向き、授業の構想を伝え、見学の予約をした
休日出勤をして授業の準備をしていた帰りに学校の近くの消防署の前を通りかかり、ふらっとアポなしで消防署を訪れました。(今思うと信じられない行動です💦)
身分証も何も持たず、「○○小の教員です」というだけの私を怪しまず、その時勤務されていた消防士の方が親身に私の話を聴いてくださいました。
直接依頼に来るくらい熱心に消防について学んでいる先生だという風に思っていただけたようです。
消防署の中を詳しい説明付きで見学させていただき、消防士のお仕事についても詳しく教えていただきました。
そして、「子どもたちにこれ着た写真撮って見せたら?」と消防服まで着させていただき、写真撮影まで!
そして迎えた見学当日。
消防署の方々総出で、通報から出動までの様子を実際に再現してくださったのです。
目の前で電話を受けて素早くバーを滑り降り、着替えて消防車に乗り込む様子は迫力満点!
忘れられない光景です。
私の話を聴いてくださった消防士さんが、こういうことを見せた方がいいと思ってやってくださったサプライズでした。
本当に素晴らしくて、子どもたちはもちろん、一緒に行った先生方が一番感動しておられました。

⑥子どもが学びたくなる、安心して授業をうけられる声かけを徹底的に身に着けた
この年私のクラスは学級崩壊していました。
学級崩壊したことのある先生なら分かると思いますが、一度崩壊すると戻りません。
子どもたちは私の話をちゃんと聴きません。
でも、研究授業をするのだから、子どもたちとの関係もここでもっとよくしたい、という思いがありました。
授業の中身が面白いことは準備してきた私が一番知っています。
せっかくなので、それをちゃんと子どもたちに伝えたい。
子どもたちに面白さを味わってほしい。
その為には私が子どもたちとの信頼関係を築き直す必要がありました。
そのためにできることは、とにかく私が子どもたちに寄り添う姿勢をより強くすることでした。
子どもたちが安心して学びたくなるような声掛けを先輩方から教えていただき、ノートに書き、何度も復唱して体に叩き込む。
そのおかげで、フレーズがすらすら言えるようになりました。
それは、私にとっても子どもたちにとっても良いことでした。

そして、この研究授業は大成功しました。
子どもたちはこの授業に熱心に取り組み、それぞれの問いをもち、それを解決するために調べて冊子にしました。
子どもたちは授業中に私の話を聴いてくれ、一緒に授業を作り上げることが出来ました。
講師の先生も褒めてくださり、授業を見た先生方からも嬉しいお声をいただきました。
それまで私に冷たくきつい言葉ばかりかけてきた先生が、やっと人として認めてくれました。
そのとき授業を見に来た他校の先生から、翌年同じ授業がしたいと連絡をいただきました。
この時に使った教材はその時の勤務校の資産として、今後も他の先生が授業で使えるように学校に置いてくれることになりました。
(18年も前のことなので今どうなっているかは分かりませんが)

これが教員として自信喪失していた私に自信を取り戻すきっかけとなった授業です。
これは私一人ではできなかった授業です。
・最初から最後まで授業の構想を一緒に考えてくださった学級経営部の先生方
・突然の依頼にこたえてくれた音響を仕事にしている知人
・写真を提供してくださった新聞社の方々
・私の想いを聴いて素敵な見学内容を企画してくださった消防署の方々
・火事の経験談をお話してくださった方
・私の指導案で一緒に授業をしてくださった学年の先生
・授業準備をしているときに声をかけてくださった同僚の先生方
・社会科について教えてくださった先輩の先生
・自分の問いをもってあきらめずに最後までやり遂げた子どもたち
・子どもたちの作った冊子を読んで温かいコメントをくださった保護者の方々
本当にたくさんの方々の協力あってこそできた授業でした

これで私が学んだことは、
・授業している本人が面白いと思う授業をする
・授業が面白いと子どもはその先生と学ぼうとする
・授業を面白くするためには徹底的な教材研究が大事
・自分ができない声掛けは体に叩き込む
・たくさんの人に助けられていることへの感謝

この授業がその後の私の教員としてやっていく授業の原点となりました。
この時の資料やメモは今でも大事にとってあります。
これを見るたびに、この時学んだことを思い出し、新しい授業を作る意欲が湧いてきます。

そして、その後、私は授業の腕をせっせと磨くことになります。
それはまた次回に書ければ。

最後まで読んでいただきありがとうございました。

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