失語症状などのリハビリテーション
私は、社会人になって、二年間、夜学のカウンセラー養成講座に通って専門知識を学びました。
当時、カウンセラーの権威で、著書も何冊もお書きになっていらっしゃる、『国分康孝』先生からも、直接ご指導を頂いて、「心のケア」の知識を深め、友人もできました。人生の中で、最も人間的な講義であり、私にとっても貴重な時間だったと思います。
私は、サラリーマンで、学習の目的が、「購買行動、購買のモチベーションを上げるための人間行動の研究」だったため、カウンセラーとして就労したことはありません。
国分先生には、『学校を卒業して、もし、カウンセラーにならなかったとしても、症状のある人には、【カウンセリングマインド】を持って接してあげて下さい。』というご指導を頂いたので、優良生徒らしく、身近に、そういう方が感じられた時には、自分にできる親切で接して参りました。
その行為は無償で行い、症状が改善した人も多くいらっしゃり、思い出深い時間となりました。
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私は、下町の飲み屋街で、小さなカフェ 兼 アートギャラリーを経営していたのですが、お店なので、来店客を拒めないという事情もありました。内心は、本業には全く貢献しないカテゴリーの来客で、迷惑でもありましたが、できる限りニコニコと受け入れ、お話を聞く時間を持ったと自分では思います。悔いはありません。
精神障がい者の方は、暇なので、無料のバスなどで訪ねて来て、何時間も話して行きました。
絵を見てあげたこともありました。
自分の絵を見てほしいと訪ねてくる障がい者には、書き方などを教え、絵の本を見せたりもしました。そうして、その間に、ほとんどの人に、脳の改善が見られた事実もありました。
私は、それらの方(無償でしたけど)をクライアントと呼んでいます。
主に分類すると、
〇軽い認知症状、
〇脳卒中やガンなどの後遺症による思考と身体能力の低下(右半身が動かない・左半身が動かない等)、
〇統合失調症による脳神経の損傷による記憶の障害や混錯に分けられました。
〇躁うつ病による、記憶の混錯乱や、別な記憶との入れ替わり、そう状態での迷惑行為や経済的被害も体験しました。
どの病気も、結局は、「記憶障害」が含まれるということは興味深かったです。重度の症状の方も何人もいらっしゃいました。勝手に来ていたので、ある意味、外には出られるレベルでした。(一人で外出できない人は、深刻な症状です)
どなた様に接するときにも、特に、カウンセリング的な治療の時間は持ちませんでしたが、一生懸命に自分の事を語ろうとする人の話を、「うんうん」と聞いてあげて、まず、感情を安定させてあげます。
記憶障害や、精神障害に陥った方は、自分が認められているかどうかを確認するために、自分の事をどんどんと話しては、認めてもらおうとする傾向が高いです。(これは、一般の人にも当てはまりますけど)
その後、具体的に、どのような問題が起きているのかを、日常会話をしながら、確認してゆきます。
例えば、絵が描けない、字が書けなくなっている、大切なことは覚えている。大切なこと(家族の名前)も思い出せない。など、絵を描かせたり、手紙を書かせたりすることにより確認します。
年齢や、居住地域、普段どんな食生活をしているのかとか、家族構成、趣味なども聞き出します。絵を描く人は何人かいました。
例えば、Sさん、(80歳女性)の場合、手紙が好きで、字の上手な方でしたが、ある時、手紙の文字が読めなくなっていたため、そのことをSさんに伝えました。
Sさんは独り暮らしで、性格も激しく、趣味で絵を描いている方でしたが、急速に記憶力が低下する症状がみられました。私のところには、週二回以上来ては無料でコーヒーを飲み、文句を言って帰る人でした。
「Sさんはね、一人で生きていかなくちゃいけないんだから、このままだとね、字が書けなくなるからね。何度も何度も練習すると、また、字は書けるようになるから、頑張って、一人暮らしで、面倒見てくれる人がいないんだから、一人で練習するんだよ。字が書けないと、(生活に必要な書類を作成できませんので)生活できなくなっちゃうよ。」
そう伝えると、意地っ張りの彼女は、相当に頑張ったんだろうと思います。3か月ぐらいして、ある程度読めるぐらいの文字の手紙を書いてくれました。そのあとは、前と同じぐらいに美しい文字に戻して来ました。それらの手紙は、今でも保管してあります。
80歳を超えると、字が書けなくなる、簡単な計算ができなくなるという、老化現象に対し、「年だから仕方がない」という、加齢のせいにして、症状を放置しがちですが、「字が書けない」というのは、太い脳神経の大きな分断があった可能性もあるかもしれないと私は考えました。
脳のCTを取れば、そのあたりも最近では判るらしいですが、ドクターも面倒なのか、辛いリハビリを高齢者に強いたりはしない傾向です。
これは、もっと、改善してゆくべきだと思います。
認知症と、神経細胞の破損による記憶障害は、治療方法が全く異なります。
もし、神経細胞の破損なのだとすれば、まだまだ、ほとんどの記憶は取り戻せて、人間らしく生活ができるのです。
日本人の大衆の考えが、80過ぎて字が書けなくてもたいして困らないという認識なのかもしれませんが、私は、そうは思いません。
字が書ける状態ということは、ある程度、他の記憶も取り戻せているという状態ですから、長寿で、健康で、脳も元気で、楽しかった思い出を思い出しながら、子供や孫の顔や名前を記憶しながら生きられるほうが、幸せに決まっているんです。
脳神経は、使わないと、細くなり、壊れやすくなるという仮説も立てています。なので、実社会で、経済活動に加わり、どんどんと情報を増やし、脳神経を鍛える事が大切なのです。
引きこもり、入院などにより、社会から閉鎖され、日常生活の中での運動量が極端に低い、動物性たんぱく不足と必須アミノ酸不足がなどがおきると、脳はどんどんと壊れてしまいます。
私は、脳科学者でも、ドクターでもありませんけれども、家の外に出て多くの情報を消化して、社会生活に適応するということは、たぶん、脳を鍛えることなのだと思い至りました。
なので、子供(大人も)を家に閉じ込めて育ててはいけないんです。
引きこもりといわれている人たちの、救済は、社会の急務だと考えます。
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分断された脳神経は、死んでしまったので、もう、見限るしかありませんが、脳細胞は、別な回路を再生する力があります。
こんなイメージです。(絵が下手ですみません)
③破損した脳みそを、補う形で、まず、小さい細胞が伸びて来て、
④太い脳神経の欠落した部分に、まず、細い神経がつながります。
⑤その神経を太いパイプに育てていきます。
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この段階で、一旦改善したように見えた④の神経は、まだ細いですので、壊れやすいんです。なので、折角つながったようでも、また壊れるというのを繰り返すと、記憶が突然消えたり、混錯したりして、周囲の人も驚き、自分も、どうしていいか分からないような状態になり、再入院したりする流れが起きます。
大きい記憶の混錯や、こちらが起こす予定のアクションが、違うアクションにすり替わったりするときには、メインの太い神経が破損したと考えていいと思います。
脳神経は、どんどんと新規ができてきますので、あきらめずに、まず、脳神経を繋げる、幼児向けカリキュラムを繰り返し実施してみてください。
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私の経験では、精神病院に入院した人のほとんどが、4か月ぐらい入院していると、新しい神経がつながるのか、退院してきます。
でもまた、引きこもり不規則な生活や、自炊(お菓子しか食べない)などによる栄養失調で、脳細胞が壊れてしまう。また入院する。
という、不のスパイラルが続いてしまうということになります。
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私のところに来ていた人の中には、記憶の障害がある人もいて、集中力の欠如などにより、知力が育たないで成長がストップしてしまった人もいましたが、逆に、私に勧められた脳のリハビリをやり切って、通信で大学を卒業した方もいらっしゃいました。
要するに、記憶の障害を克服するトレーニングプラス、知力を増やすトレーニングをする意欲があるかないかという話なんだろうと思います。
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次に、どんなリハビリをしたのかという話です。
絵とか、読書とか、本や新聞の音読とか、イロイロご提案してみましたが、やっぱり、「漢字や文字の書き取り」と「簡単な算数の繰り返し」「新聞や小説などの朗読」
この三本柱が一番効率いいと思います。
朗読は、公園などでしてもいいかもしれませんね。外に出て、外の情報を脳が消化してゆくことは、相当に重要だと今は思います。
細い神経は沢山できて、切れたり繋がったりを繰り返しています。
簡単なトレーニングを、大量にすることで、情報処理が、脳神経同士で行ったり来たりしながら、情報を通過した分だけ、どんどん太くなるイメージです。(イメージです。ざっくり、感覚的に感じてください)
記憶そのものは、記憶のロッカーに保管されていますので、破損していない場合が多いんです。(破損した場合には、記憶は取り戻せませんが、新しい記憶は蓄積される場合はあります。)
ですから、簡単な作業で、まず、細かい神経を沢山出させて、反復書き取りなどを繰り返すこと。
少しずつ、作業を難しくすることで、神経を繋げ、繰り返す、外出、運動することにより、神経のパイプを太くするというトレーニングを実行します。
オススメは、小学生用の漢字書き取りのドリルや、算数のドリルを一年生から六年生まで、どんどん進む感じです。
大人なので、集中力のある人は、ドリルは、数日で軽くクリアできます。
軽く考えずに、きちんと、えんぴつやボールペンで、紙に書き取り、情報を脳に伝達して、どの回路が適しているのかを、脳神経が考えるらしいんですよね。
文字を書くという作業は、相当量の情報を脳に送り付け、脳内の情報伝達の速度を早くするのだと考えています。
そうすると、新しい神経回路が、元通っていた、太い場所につながる場合もあるらしいです。別な場所につながって、遠回りして、元の場所に流れていくこともあるらしいので、この、小学校低学年ぐらいのドリルや教科書を音読するなどカンタンな作業を、多めにすることをオススメします。
これにより、最短ルートで、脳のリハビリが進められるという仮定を、私は立てているからです。
その他、単語も仕入れていきます。子供学習辞典のような、わかりやすい説明で、図や写真が沢山あるものを眺めたり、音読したり、単語の発声をしたりすることで、脳は、記憶のロッカーまで神経を辿り、記憶を引き出して戻ってきます。
ですから、最初から、難しいことをしようとすると、簡単の情報の神経が育っていないので、考えることや、行動する時間が物凄くかかってしまったり、結局思い出せなくなって、絶望してしまいます。
簡単なトレーニング重視、少しずつ難しく、レベルをアップしてゆき、脳のパイプを太く鍛えて、育てるというイメージです。
絵本を読んだり、簡単な対話のやりとりの繰り返しなども必要で効果があります。
テレビ番組であれば、幼児向けの、ポンキッキーズとか、アンパンマン、ちびまるこちゃん、スヌーピー、など、対話の多い、難しく無い内容の番組を繰り返し聞いたり、自分でも話したりし、情緒や、人間的な感動(花が咲いたらきれいだとか、雨が降ったら濡れる、冷たい、寒いなど)日常生活なども習得します。
精神障害の人たちは、社会生活の経験が皆無なので、社会に放たれて、買い物をしたりするだけでも、店員さんとモメたり、苦情を言い続けたり、迷惑行動につながることも多いのです。
正しい買い物の仕方、つり銭の確認、店員さんに苦情を言わない。買い物したら、こちらもお辞儀をする。など、人間として丁寧に、トレーニングしてあげないとならないのです。
そういう時間が、治療に全く入っていないということも、社会問題だと思えます。
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トレーニングを繰り返すと、ある日、太い神経に、新しい神経がたどり着いて、正しい神経回路にバチっと繋がると、イロイロな記憶が一気に戻ってきたりすることもあるみたいです。
性格が別人になるということもあるらしいです。
知性がある程度修復できたのであれば、以前に戻れないことに不満を抱くのでなく、自分の努力を誉めて、改善した機能に、感謝して、今後の人生をハッピーに歩んでゆくことが最良です。
そのためには、会話のトレーニングも沢山します。
最近は、アレクサでもいいと思います。
言葉を聞くだけでなく、対話の時間を増やしてください。
英単語のカセットで、リピートなどの機能がありますが、あんな発声繰り返すだけでも良いです。何時間も繰り返し、脳神経を太くしてゆくこと、正しい回路を通させることが重要です。
聞き手は、昔の思い出や、楽しい記憶、趣味とか、どんな遊びをしたのかとか、そういうことを、沢山聞いてあげると、脳神経の回復が早いです。
それから、社会経験値が低いので、お詫びをしたり、こちらがへりくだるなどの、基本的な社会活動の訓練もしてあげる必要があるでしょう。
私が見た自閉症の子供は、もう大人ですが、ずっと引きこもりのため、精神の成長がなされず、本も読まないため、精神年齢が、小学4年生から中学3年生ぐらいの範囲で留まっていると感じることが複数ありました。
精神の成長というのは、学校内で起きる些細な出来事に対する問題解決の方法、ケンカの方法、謝罪の方法、悪いことをしたときに、みんなで考えて、結果を出すという体験。イロイロな、実体験に発生する、問題解決能力の経験と、ゴールに向かうために何をすればよいのかを考えることによりなされます。
このような、精神成長の必要な大人には、まず、小学校四年生でやりとりするような、グループ学習や、料理、キャンプとか、電車に乗る、切符の買い方などの日常生活で必要な経験から教えなければなりません。
大人だから何でも知っているというのは、周囲の思い込みです。
人間は、知らないことはできません。
ですから、引きこもりの人を社会に返す前に、専門のトレーニングを受けられる機関も作る必要があります。
私の所に来ていた方は、もう32歳でしたが、ダンボールの組み立て方も知らず、銀行口座も持っていませんでした。就労したことも、精神病院に入院していたこともなく、誰にでも嘘をつき、親のお金を盗み、部屋からは一歩も出ず、友達もいない子でした。
そうして、私は、この人は、社会の汚らわしさを一切知らずに生きて来て、幸せな娘だなとも思えました。
でも、本人は、買い物に行ったり、友達と遊びに行ったり、普通の人生を楽しみたかったと私に話してくれたことがあり、どんな人にも、そういう願いがあると知ったことはよかったです。
ダンボールの組み立て方など、日常生活で必要なスキルは、一度教えれば、子供でもできるようになります。しかしながら、親が、引きこもりをつづけさせたせいで、子供は、社会的経験値も上げられず、子供のまま、肉体だけ大人になって、日常生活に必要な情報すら学ぶこともなく、高齢になっていくということになります。
これはこれで、また、今後大きな、日本社会の問題となってくると思います。
ひきこもりはひきこもりで、やっぱり、デイケアに通うとか、本を読ませるとか、カンタンなドリル問題からスタートさせて、ボロボロになった脳を鍛えるとか、皿洗いや、料理などの家事をさせて人間らしい生活が送れるようなケアをするとか、トレーニング機関を国がもっとサポート、障がい者枠での就労を目標に、社会復帰の道を開いてあげるのが、健常者の役割だと考えます。
精神障害の方との接し方
一番大切なことは、相手を認めてあげること。
人間らしい気持ちにしてあげる事だろうと思います。
精神病の子供たちは、いじめなどによる不登校も含み、自分はほかの人(ができない、遅い)と違うという理由で、家族や友人などに、軽んじられて、いやな思いをし続け、心に傷がある場合が多いです。
なので、自分を認めてもらおうという強い気持ち(不安)から、自分を大きく見せるための嘘をつくのです。コミニュケーションが上手くいかないと、暴力的になったり、攻撃的になったり、騒いだりするケースもあり、そうすると、親は、その子を育てることが面倒になり、個室に閉じ込めて、子供の好きにさせてしまったりするのです。
富裕層で、子供の知能がほかの子供より少し遅れたりすると、親がそのことに絶望して、幼少から、個室に放置されてしまうこともあります。個人的な感覚では、親の子育て放棄です。
私の立場から言わせてもらうと、親やドクターが、勝手に、子供の病気は治らないと決めつけてしまい、子供の将来の可能性を奪ってしまった傷害事件のようなものです。
以前は、私も脳の病気は治らないと考えていた時期もありましたが、今は、本人が頑張れば、周囲の理解も向上させ、脳神経を育てる食事療法なども取り入れることで、改善できる場合もあるかもしれないとまで考えています。
もともと、脳の神経細胞が、壊れやすい人だということはあるんです。でも、それは、やっぱり、生活習慣が、引きこもりとなると、外から経験できる情報量が皆無になりますから、脳が成長しない、情報を処理しないんで、脳細胞が弱くなってしまうんですよね。
学校などでの、小鳥の囀りのような、小さい、柔らかいやりとりも、友達の名前を覚えたり、化学の実験とか、歴史上の人物、音楽、体育など、すべてが脳の発達に必要不可欠なカリキュラムなのです。
ですから、イジメなどによる不登校であっても、子供が必要な社会経験値を高めるプログラムは必要です。
学力とは、別な、社会適応経験能力を、最低レベル、出来るようにするという流れを作るという話です。
親も、いつまでも普通学校にこだわらず、子供の将来のために、専門のコースを探して、一緒に乗り越えてあげてください。
デイケアに通わせるとか、小さい子どもがする、ドリル学習などを、低学年から、また、トライさせて、集中力を高める、習い事をさせて、会話能力を高めるなど、家から家族が積極的に外に出し、話しかけ、人間らしい気持ちにし、脳を育ててあげてください。
やっぱり、集中力のある人は、改善も早いですね。
私が提案した、いくつかのカリキュラムを自分で構成して、どんどんこなします。図書館なんかにも通って、読書によって脳を鍛えていたのだと思います。私は、無償なので、その人たちのリハビリを強制したりはしません。強制しても、サボるだけです。自分が、努力して、人間に戻りたいという強い意志と希望を植え付けてあげることは、大切です。
本来であれば、脳の損傷のレベルに応じて、必要なトレーニングが受けられる施設に入院して、リハビリをするのが一番良いのです。
若い人には、脳の修復機能が高いですので、可能性を信じて、道を探ることが親の役目だと思います。
最大の問題は、日本にはそういう機関が皆無だということかもしれませんね。
親や家族が、子供の病気を受け入れられずに、普通の学校にずっと通わせて、症状が悪くなることも普通です。
親の方が精神病気というケースもありました。
私は、その時に、カウンセラーの経験が浅く、子供が未成長だったので、親の育児が正常ではなく、保護すべきだったのに、何の手を打たなかったことがあり、今も後悔しています。
子供の成長が、著しく低いのは栄養失調、すなわち、親の育児放棄もしくは、食事を与えないという虐待ですから、すぐに保健所などに相談に行くべきでした。
中学校卒業までは義務教育なので、知力が足りなくても、卒業できてしまうということも問題を大きくしているのです。
学校には、セラピストを置き、問題の起きている子供たちを、将来社会で最低限の生活ができるように、個々の個性や症状に合わせて、社会経験値を上げて行ってあげなければなりません。
逆に、知力がものすごく高いのに、失語症とか、文字と発声の神経回路が破損していたりすると、話せるのに書けないという症状が起きたりもします。
この、話すという行動と、書くという行動をセットにするのが、書き取りの作業です。日本の美しい文章を、ノートなどに書き取り、更に、それを声を出して読み上げます。
その、【書きとる】と【話す】というトレーニングをセットですることが、脳神経への刺激を増やし、最短で脳神経を育ててゆくと私は考えています。
書き取りする材料は、何でもいいんです。
好きなものを書けばいいんです。
童話でも、百人一首でも、俳句でも、小説でも、辞書でも、
小学生の漢字辞典などというのもあります。
自分に関心がないと、集中力のない人は、続けられないんですよね。
好きな作業で、簡単な情報を大量に脳に投入し続ける。
というカリキュラムを、ご自身で、ご家族と一緒に考えてみてください。
20代ぐらいまでであれば、新しい神経はどんどんできますので、食生活の改善、規則正しい生活、早朝の散歩や園芸、ペットを育てる、料理などをし、生活の中で、新しい情報や楽しみを習得しながら、人間らしい人生を送れる人が沢山います。高望みしなければ、結婚もできます。
神経などの病気の人は、心が優しすぎて、忙しすぎる社会生活への適応が難しい場合も多いのです。
ですが、田舎に引っ越し、農業とか、工場勤務のような、決まった仕事の反復作業には、高度な適応能力は必要ありません。都心ほど急いだりもしませんので、都心を離れて、田舎ライフにチェンジして、野菜などは自給自足しながら生活保護費で生活するという方向転換もあると思います。
そういう人材を必要としている社会の仕事もありますので、なるべく、社会の経済活動に関われるように、経済のシステムも、変更してゆかなければならないと思います。
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最近学んだこと
私が、精神医学の勉強をして、最近学んだことで、大いに、クライアントとの接触方法や、治療の考えが変わったことがいくつかありますので、ご紹介します。
〇怒りや攻撃は、精神不安が原因。→暴れている人の不安を確認して、改善してあげる。諭す、説明するなどして、不安を解消すれば怒りも解ける場合がある。
〇精神科医の診断が間違っていて、正しい治療が長期に行われていない
(躁うつ病なのに鬱の治療を受け続けた・不眠と思われる症状は、別の脳障害だったなど)
〇脳の修復はできているのに、リハビリテーションの方法が間違っていて、脳の回路が別のところに繋がったまま修正されない、不要な精神薬を長期に引用して副作用で脳がボロボロ
〇小さいころに病気の症状が重い子どもは、親が先に絶望してしまい、孤立して長い時間生活しているケースが多い。長い時間の間、脳の修復はある程度完了しているのに、リハビリをしないので、改善が見られない。
〇自分の病気を受け入れられない人には、どんなに説得しても正しい治療は受けさせられない
などが挙げられます。
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私は、精神障害の人に、強い攻撃を受けることが多く、それは、今まで、何が原因なのかが分からずにいましたが、精神不安が原因ということが理解できたので、そういう方達に、適した方法で、ケアも開始しました。
職場で、攻撃力の強い人の攻撃が始まった時には(躁うつ病の躁状態)周りの人にも、病気の特徴や、対処の仕方などを説明し、こちらが、不条理な攻撃に振り回されたり、心を傷つけたりしないように、グループで、病気への知識を上げてゆく活動もしています。
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脳に障害が起きた時の、簡単なリハビリテーションをもう一度列記しておきますので、身近に、認知症と診断された高齢者とか、若いのに、記憶障害になった方などに、トレーニングを勧めてみてください。
〇小学校一年から六年までの こくご・漢字・算数のドリルを全部やる
〇文字を書きながら しりとり をする(100語ぐらいを1セットにして、一日に2回ぐらい)
〇百人一首や、俳句、万葉集、名著など好きな文を選び書き写す
(毎日原稿用紙3枚ぐらい、1200文字以上を目標にします)
〇アエイウ エオアオ発声を、握力を鍛える道具(*)と一緒に朝夕繰り返す
〇好きな歌を大声で三曲歌う
〇好きな歌の歌詞をA4用紙に1曲、3曲書き写す
こんな感じで、書き取り、発声のトレーニングを毎日、楽しく取り入れるカリキュラムを患者さんに合わせて、工夫してみてください。
*100均で売っている、握力を鍛えるスポーツ用具があります。「ハンドグリップ」、高齢者などは、テニスボールなどでも大丈夫です。器具を2個用意し、両手に持ち、両手を心臓より下に下げて
あ(右手握る)え(左手握る)い(右手握る)う(左手握る)
というように、一音で、一回握る感じですね。
この握力のトレーニングを発声のトレーニングと合わせて毎日2-3セット行うことで、血管も太くできますし、脳への刺激が相当に流れ、脳の神経も太くできるはずです。(臨床はしていません。ドクターではないので)どなたか、これは、仮説なので検証したい方がいたら、ご研究してみてください。
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ある程度知性を持っていて、もっと、話したり、社会生活に関わりたいという気持ちが強い人は、メニューを見せれば、自分でカリキュラムを組んで、問題を乗り越えるための活動を開始します。
私は、いちいち、これをしなさいなどと言わなくても、「こうするといいですよ」とか、親御さんに、「小学一年生のドリルから買ってあげてください」などというと、それを、自分から消化して、作文などを作れるようになってゆきました。
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今までの経験から、脳機能の多くは、改善できるのではないか。
というのが持論です。
親もドクターも、本人まで 最初から絶望し、放置された子供たちが、インターネットの中で、問題を起こしています。
知力はある程度持っている(脳の修復はある程度完了している)のに、対話の能力や、社会経験、経済学習などがなされていないので、社会適応能力が著しく低く、一般社会への迷惑行動を繰り返したりする人も多くいます。
カウンセラーの立場としては、必ず治るとは断言はできませんけれども、ほとんどは治せる、大部分は治せると信じ、患者さんや家族、関係者を励まし、最大の効率で、患者さんのケアを果たして行く信念です。精神医学に絶望はありません。希望しかありません。
患者さんともっと対話し、正しい治療がなされているかどうかだけでも、定期的に見てあげてください。
精神の病気を治せるものは、人間の優しさと愛情であり、薬ではありません。
外に出られるか、出られないかというのは、重要な部分です。
自力で外に出られる人は、短期間で回復もできるし、リハビリも頑張れば、相当に脳神経も回復できるでしょう。
外に出られない人は、まず、病院の回数を増やして、カウンセリングやデイケアなどに出かけて、外に出られる行動を家族が促してあげてください。
可能性は、まだまだあります。
リハビリを続けて、太い脳神経がつながると、急速に元の思考に戻れることもあります。
普通の生活でなかったとしても、普通の人の半分でも、人間らしい生活というのは、どんな人にも作ってあげられると私は考えています。
そのために、このコラムを書きました。
ご参考になるところがあれば、どうぞ、問題を抱えた方のケアにご利用してください。皆様の問題が、少しでも改善し、問題を抱える方が、人間らしく、幸せに前に進めるよう、お祈りしております。
byおじゃら りんご