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認知症の母と歩く

これは 2019/2/14 のこと
そう、ちょうどバレンタインのことだ...…

この時すでに
母は認知症と向き合い始めていた

ゆえに日々彼女の心が揺れ動くさまが手に取るように感じられた
私にとっても揺れ動かされた時期だった..…




この日私は母と一緒に神戸へ出かけてきた

例年バレンタインには神戸でチョコを買っていた 
でもここ3、4年はご無沙汰だった

なぜなら 
様々なコトで母と喧嘩をして別れて暮らすようになったから
その時のわだかまりがいまだにあったのはきっと私の方で
母は話しても分かり合えない相手と区切っていたから..…

だが、
大家さんから母はきっと認知症だと言われ
お医者に一緒に行くようになり
そこから何かとまた交流するようになっていた


お出かけの前日..…


「明日、頼まれてた電話の不調見に行くから、
そのあと神戸にチョコ買いに行こうか?」


「うん、わかりました」

彼女にしたらどれくらいぶりの神戸だったろう?
大阪へは結構行く機会あるけど、神戸はなかなかね......

久々の神戸に、

なんて変わってしまったのか....と

驚きっぱなしの母

震災後の綺麗になった神戸にも
数年前までは何度も何度も一緒に来ていたんだけど
全然覚えがないらしく
どこがどこか全然わかんないらしい.....

〝 この道は
あなたがつれて歩いてくれて
お陰で覚えた道だょ..... 〟

でも母の記憶には何も残っていなかった

かろうじてセンター街は覚えがあった
懐しぃと言ってアーケードを見上げて歩く

彼女の虚ろな記憶に

「うんそうだょ」
「そうそう、そうだったね」

と確信を与えていく

そうしたら彼女に、

〝 私はまだ大丈夫 〟

という自信を与えられると思うから.....

母は
認知症とお付き合いを始めています

わかるかな......
天空の城ラピュタで仲間のお墓に毎日お花を添えてた
一体の巨神兵がいたでしょ

母を見てるとあの巨神兵が頭に浮かんでくる

毎日とつとつと
自分の幻想の世界へと確実に歩みを進めている母

ありもしないことを言い
自分のやったことを忘れ
少しずつ少しずつ私たちとの記憶を手放して行く母

彼女の記憶に残るのは

田舎のこと
子供の頃の記憶
自分の両親にされたこと
自分の兄姉妹のこと
兄嫁の心無い言葉
彼女の人生に起きた嫌なこと

などなど.....

こないだは

「お母ちゃんのお母さんの顔、見たことある?」

と聞かれた......…  祖母のこと......ょね!?

「うん、あるょ、おばぁちゃんでしょ?」

「ヘェ〜、あるんや。なんかこないだ片付け物してたら
お母さんの写真出て来てね誰が撮ったんやろ、こんな写真.....」

それはおばぁちゃんの入院中に
おばぁちゃんがベッドに横たわる姿を撮ったものだった

神戸に行って
チョコを買って
ステーキランドでランチをした

目の前の鉄板でステーキを焼いてくれて
目の前のそれぞれの皿に置いてくれる

小学生の頃
お肉が好きな父親が
よく神戸にステーキを食べに連れて行ってくれた

それは今回と同じく
目の前の鉄板でポコっとボールをかぶせて焼いてくれるところで
とても美味しかった

でも、

「のりちゃん、こう言うところよく来るの?
おかぁちゃんこんなとこ来たん初めてやゎ」

〝 !?.........そんなはずはない
あなたも一緒にお父さんとよく食べに来たぢゃない...... 〟

そんな言葉が頭に響く中

「そうなんや!
ここも同僚に教えてもらって一回来たいなと思ってたんだょね....」

そういうので精一杯だった

忘れちゃってるんだね.....

というか、

忘れられちゃったんだな....


これが、

彼女が最後に選んだ道

あまりに辛いことばかりの人生だったから
忘れないではいられないのか
誰しもがそうなのか

忘れない人もいるのか
確かなことは何もわからない

ただ

母が遠くなっていく......





Norico

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