見出し画像

野良ネコに家を…3:第12話 乗っ取り完了?

⑫乗っ取り完了?

膠着状態かと思われた階段攻防戦で一歩リードしたのはウリだった。
とある午後、2階にいるときに視界の端で何かがすっと動いた。
えっ?とそちらを見ると、猫のカリカリを入れた赤い缶にウリが首をすりつけていた。
こらこら!ウリちゃん!上がっちゃだめでしょ。
あーびっくりした。音もなく、ついに階段の上まで到達されてしまった。これはさらに壁を強化せにゃ!まだ勝負はついていないぞ。

画像1

暖かくなり、猫も外で過ごすことが多くなってきた。
仕事を終えてうちに帰ってくると、いつも我が家の2,3軒手前あたりでトラがにゃおにゃお叫びながらお出迎え。駆け寄ってきて一緒に帰宅。ドアを開けると私より早く中に入る。

声はすれども姿は見えず、の日もあり、トラちゃんどこにいるの~?と小声で言いながらきょろきょろすると、こっちにゃー、こっちに来いにゃーと、よそ様の敷地から呼ぶので困る。

ウリもたいてい玄関の周辺でごろごろしていて、私が帰ってくると、待ちくたびれたにゃ、さあご飯にゃ、とばかりに家に入る。
猫が中にいるときに出かける場合は、閉じ込めないよう玄関脇の小窓を必ず開けて出かける。だが、猫たちが外にいる場合、つまり家の中に人も猫もいないときは当然、小窓も含めて戸締り。

画像2

ある日の帰宅時、いつもならどこからともなく走ってくるトラちゃんが来ない。ウリの姿もない。
おや、今日は誰もお出迎えしてくれないのか。お散歩中かな。
家に入り、階段の壁を動かして2階に上がった瞬間、愕然とする光景が。
居間のソファにウリとトラが並んで座っていた。

画像3

どうやって階段の壁を越えたのかは分からない。いや、それ以前にどうやって家に入ったのか…ってそれは、まあ私が小窓を閉め忘れて出勤してしまったのだが…。
そして我が物顔でソファでくつろぐ二人を見たとき、思わずつぶやいた。

負けました。

こうして階段の壁は撤去された。
玄関の小窓も、日中は開けっ放しにすることが多くなった。猫さまたちは人間の留守中も勝手に家に出たり入ったりして、ソファでお昼寝。
夕食時にはソファの端で伸びあがって、人の食卓を凝視。ちょっとおこぼれを期待。着々と家ネコ化していくふたり。

画像4

ただし夜、寝室に移動する前には猫を外に出す。さて寝るか、という段になると、家人と一緒ににゃんこ運びレースの開始。ノルマは一人一匹。
毎日のことなので、追い出されることを察して、じゅうたんやソファにしがみつくウリとトラ。それをひっぺがし、とっ捕まえて外にポイっ。夜中や早朝は外でご自由に遊んでください。

夜中に変なものを持って帰ってきたり、知らない猫が小窓から入って来てしまったりという可能性もあるので夜は締め切り。
雨が降っているときなどはちょっと心が痛むが、びしょ濡れで家の中をうろうろされても困るので仕方がない。

ウリと出会って1年半。こうして私の家は半ば野良ネコに乗っとられた。
しかし。

ここまでは前置きに過ぎない。これまで以上に衝撃的な事件が、その後も続々と起きるのである。
まずは3月、ウリが急激に太りだした。

「野良ネコに家を乗っ取られるまで」完
「野良ネコに家を乗っ取られてから」に続く

←3・第11話「2階を死守せよ!階段攻防戦」に戻る

いただいたサポートはうちの中や外にいるネコさまたちへの奉仕活動に使わせていただきます。