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野良ネコに家を…3:第6話 極寒の2月

⑥極寒の2月

このころ、日中、家にいる間はなるべく玄関ドアを開けたままにして(人間は通れない幅で固定)、猫が自由に玄関先に上がれるようにしていた。
猫が来ると、ごはんついでに一緒に遊ぶ。
フローリングにはバスタオルを敷いてあるが、ドアが開けっぱなしなので玄関先はけっこう寒い。

そこでまずは電気ストーブを導入。さらに細長い板状のホットカーペットもどきを廊下に敷く。
これは台所で使うといいよと、むかし親戚がくれたものだが、台所のコンセントが足りず有効活用できないまま物置に眠っていたものだ。

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この暖かい板は好評で、トラはその上でゴロゴロするようになった。ウリもよく温まりに来た。
おそらく親戚がこれを購入してから30年以上は経っていると思うが、この板が誰にも捨てられることなく存在してきたのは、いずれうちにやってくる猫のためだったとしか考えられない。

2月になり寒さは一段と増してきた。
にゃんこたちと親しくなってから、私は古い洗面器に水をはって外にネコ用の水を置いていた。
これがあるから、ママニャンや、シロちゃん、そしてにっちゃんがうちに遊びに来る。まあそのせいでウリとケンカになったりもするのだが…。
真夏は水が腐りやすいので毎日替える。冬場はあまり外に出たくないので数日おき。

ある朝、外に置いていた猫用洗面器を見て驚いた。表面が完全に凍っている。厚さ1.5センチくらいのきれいな氷の円盤ができていた。トラも寄ってきて一緒に見る。そして氷の端をペロリ。
うわー、すごいね、トラちゃん。昨日の夜、よっぽど寒かったんだねー。ごめんね、お水飲めなかったね。

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それからは、今夜は冷え込みます、と天気予報で言うたび寝る前に洗面器に熱湯を継ぎ足すようにした。朝まで凍らないように。
猫舌、というように、猫に限らず動物は熱い食べ物が苦手。自然界にはないものだから。
しかし猫は、ほんのり暖かい食べ物が好き。トラが小鳥を捕って体温の残っているうちに食べていたのは、本人にとってはまたとないごちそうだっただろう。
猫缶やゆでササミなどのキャットフードもほんの少し温めてあげると喜ぶ。匂いが強くなるので、おいしさも増す。

2月の夜。7時ごろに玄関のチャイムがなった。インターフォンの向こうにはお隣のご主人。
辺りはもう真っ暗。こんな時間に何だろう、しかも奥さんじゃなく旦那さんが来るなんて珍しい。

「あのー、お宅の木が倒れていて、うちに入れないんですけど…」
「はあ?!」
この日は朝から雪だった。どんどんひどくなり夕方には数十センチ積もっていた。風も強く、天気のせいか猫も遊びには来ず、私は一歩も外に出ていなかったのだ。
それにしても木が倒れているとは一体!?

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