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帰国編4

~コバンザメのシチリア滞在記~

順調なフライトで予定通り成田に到着。飛行機が止まったとたん上の荷物を降ろそうと何人もが立ちあがったのだが、機内アナウンスで、検疫のための書類を書くまで待機するようにとの指示。全員座らされて待たされるその光景が、まさに非常時。といっても検疫検査の了承のサインだったのでまあまあ理解できた。座席番号を記入させられたのは追跡調査のためなのだろう。
書類を記入して降機。しかし当然すんなり入国できるはずもなく…。特定の国からの帰国者には全員PCR検査が義務付けられているのは分かっていたのだが、その待機の仕方がなかなか酷い。田舎町のカターニアでも自主的に人と人の間隔を1m以上開けていたけれど、熱を測る場所ですら雑然としていて緊張感が感じられなかった。検疫の部屋前には15人ずつ呼ばれていくのだが、そこへ行ってからも検査が終わってからも大病院の待合室レベルの混雑。そこでひたすら待つ。
PCR検査室に入ったときはさすがに少し緊張した。スタッフが何人もいて、みんな防護服。検査される我々は、ビニールのカバーに覆われた椅子にまず座らされファスナーで閉じられる。雨除けビニールをかけられたベビーカーに形は近いだろうか。その側面からスタッフが手だけ入れてきて、インフルエンザの検査のように鼻の奥に綿棒のようなものが差し込まれる。
検査自体はすぐ終わるが、一見ものものしい検査椅子には疑問が残った。もし感染者がその中でくしゃみなどをしたら、その後に入った者は危険ではないのだろうか。一時期話題になった注射器の使いまわしが頭によぎった次第。
検査後はロープをひっぱっただけのスペースでまた延々と待たされる。待ちくたびれて大声で泣いている小さい子の声も聞こえる。そして1mなんて全然間隔があいていない。この中に感染者はいないの?
この場所で感染しても不思議はない気がした。
危険地域からの帰国者は、家族が迎えに来るかどこにも寄らずレンタカーなどで帰るか、それができない人は国家予算で成田のホテルに検査結果が出るまで待機することになっていた。
私たちはレンタカーを予約していたが、検疫官の一人が私たちが車に乗るまで確認のためついてきた。徹底している。それでもこのときはすぐ帰れたのでまだ良かったのかもしれない。この数日あとの帰国者は空港に数日足止めされた人もいたらしい。
そして法令に従い実家にて2週間の自主隔離。この間夫には検査結果が陰性だった旨の電話があったが私には来なかった。その後も連絡がなかったので一応陰性だったのだろう。

将来の歴史の教科書にまちがいなく載るであろう2020年にこのような体験をしたということは、まさに歴史を実感したということかもしれない。
短い滞在ではあったけれどかけがえのない体験となったシチリア滞在生活。思い出しながら少しずつ記録していこうと、半年たった今思っている。

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