シェア
香崎
2024年4月12日 06:14
春の風物詩。さくら。それを見ながら、ご飯を食べる。和気あいあいと言葉を交わす。そんな温かな風景が私は好きだ。みんなといる時間が好き。お花見が好き。でも、桜は嫌い。桜はいつだって綺麗で美しくて、みんなの目を奪う。桜は、愛されている。そんな桜の愛くるしさ、美しさが嫌いだ。桜には野花の気持ちなんて分かるはずがない。桜から目線を外して彼を探す。見つけた。真っ黒な黒髪に優しそうな笑
2024年4月12日 06:11
「ねぇ、この花の花言葉って知ってる?」私は近くにいた君に問いかける。それでも君はこっちを見てはくれない。「いきなりなんだよ。」手を動かしたまま君は答える。不機嫌そうな物言いに思わず胸が痛む。「別に。」「まぁいいや。」そういって君はある程度花に水やりをして、おもむろに立ち上がると、ズボンについた土を払った。そしてやっと私の方を見たあと素っ気なく呟いた。「じゃあ、また明日。」「うん
2024年4月12日 06:05
『彼女はとても綺麗だった。優しく、寛容で素敵な人だった。』その次を促すように、花達は揺れる。『最初はただ見つめるだけだった。それだけで充分だった。でも、それだけじゃあ、耐えられなくなった。自分のものにしたいと思った。それが間違いだった』脳裏に、彼女の姿が浮かび上がる。『彼女は、こんな俺を愛してくれた。ずっと一緒にいたいと言ってくれた。それなのに、俺は…』『自分の平穏のために、彼女を人なら