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投資対象としてのVerizon①

個人的に企業の事業内容や業界動向をある程度は理解した上で投資しようと思っており(また、為替が全く読めないこともあり)、個別株は日本のLarge Capsから選ぶことがほとんどです。

そんな中で「いきなり言ってることが違う」となりますが、個人的には、通信事業者へ投資するのであれば、当面はアメリカ企業への投資も「アリ」ではないかと思っています。
ということで、Verizonの話をする前に、通信という事業をどう見るかを少し考えてみます。


まず、日米の通信事業者に共通した特徴です。

①参入障壁が高いこと
通信事業を展開するには、その国の許認可が必要になり、また、巨額の設備投資が必要になります。これは、SoftbankのSprint事業がなかなか思い通りにいかなかったこと、日経新聞に楽天のモバイル事業が度々取り上げられていることを見れば一定の納得感を持っていただけると思います。
新規事業者が事業を軌道に乗せるまでのハードルの高さ故、既存事業者にとっては、新たな競合が現れる可能性は(他の業種と比較すると)かなり低いと考えられます。

②ストックビジネスであること
通信事業は継続的に収入を得られるストックビジネスの代表例です。特に、通話料などの従量課金されるサービスの比重が低下し、基本料やデータ利用料などの定額課金される部分の比重が高まった昨今、将来得られるキャッシュを見通しやすい傾向がさらに強まっていると思っています。
一般的に、ビジネスを行う上で、安定的なキャッシュインを確保することはキャッシュアウトをコントロールすることよりも難しいはずです。ほとんどの大手通信事業者はそのハードルをクリアしてしまっており、安定性の観点からすれば非常に魅力的な投資先だと思います。

③株主還元に積極的であること
新規参入が少なく、ストックで収入を確保できる通信事業は大きなキャッシュを産み出します。各社は、このキャッシュを次世代通信への投資や非通信事業拡大に向けた買収などへ振り向けてきましたが、合わせて株主還元にも積極的です。

日米通信各社の配当利回り(2024年5月末時点)

日本の通信各社が(配当以外に)自己株取得にも積極的であることも含め、配当利回りが6.5%近いVerizonなど、各社がかなり手厚く還元を行っていると言えます。


ここからは日米の相違点です。

①マーケットの成長性の違い
通信事業はregionalな事業、即ち、事業展開するエリアに成長性が左右される事業です。
1人で何台も携帯電話を持つことも、家に何本も電話をひくことも、普通はあり得ませんので、事業エリア(というか国)の人口や世帯数、あるいは年齢構成によって将来的な成長見通しが左右されることになります。この点、既に人口減少に転じた日本の通信事業者は限られたパイを奪い合うことになりますが、2080年頃にピークを迎えると想定されるアメリカは少し事情が違ってくると思っています。

②事業者数の違い
日本の携帯電話業界は第4のキャリア・楽天の新規参入があり、長く続いた3キャリア独占状態がどこまで崩れるか・・・が注目点です。他方、アメリカではT-MobileとSprintの合併により主要キャリアは4つから3つになりました。
「3」と「4」の違いというよりは、新規事業者の出現で先の見通しづらさがある日本か、SoftbankのSprint買収で生じた不透明感が無くなったアメリカか、という相違は大きいのではないかと思っています。

勿論、日本の通信事業者の良さもあります。

③事業領域の違い
日本の通信事業者は、各社ともeコマース、金融、エンタメなどの事業を拡大しています。アメリカではVerizonやAT&Tが2010年代後半にメディア企業を買収しましたが、結局モノにできず、大きな減損を出して撤退しました。結果として、アメリカの大手3社は本業の通信事業に注力する形になっていますが、ここは日米で大きな差が生じていると思っています。

④距離の違い
「何のこと?」と思われたでしょうが、「アメリカのマーケットでどういう動きが起きているかが非常に掴みづらい」という基本的なことです。
例えば、新しい料金プランに対するユーザの反応、あるいは「繋がりやすさ」などに対するマーケットの空気感はその国で生活していないと分かりません。これらの動向次第で、契約者数が大きく増える、追加の設備投資が発生する・・・といった業績影響が生じる可能性があります。
日本の通信事業者に投資するのであれば(日々の生活の中で)そういった傾向を掴みやすいでしょうが、アメリカのマス市場の動きは少し注意深く見ておかないといけないだろうと思います。


長くなりました・・・。
ざっと纏めると、通信事業者は日米とも安定性(と、それをベースにした積極的な株主還元)が大きな魅力であることは共通しているが、今後のキャッシュ創出力を考えると(非通信事業を拡大する日本の通信事業者も魅力は大きいが)拡大し続けるマーケットを持つアメリカの通信事業者を選定するというのも一つの考え方ではないか、というところです。

かなり長い目で見ると、非通信事業を拡大している日本の通信事業者の方が投資対象としてベターなのかもしれませんが、(個人的には、KDDIがローソンに出した5,000億円などはちょっと・・・と思っており)中期的には主力事業に集中しているアメリカの通信事業者は、より安定的な還元を期待できるのではないかと思っています。

長くなったので(というか、この先がさらに長くなりそうなので)一旦ここで区切って、Verizonの業績はまた別途見ていきたいと思います。


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