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7月25日

 コロナの話題を少しずつ消していくように、オリンピックの話題を広げては視聴者を洗脳していく。いつのまにかコロナってそんな重大だったっけと思わせるように、自然とシフトチェンジしようとしているのか。
 こうして考えていても埒があかないはずなのに、どうすることもできないのに、憤りを見つけては自分自身を生きにくくしているような気がした。先の見えないトンネルに先頭切って進んでしまう正義感はあっても、決して一人で声を上げることはなく、進む過程でもし光が見えない場合に巡るであろう絶望を考えて心が腐っていくのだ。心の闇を掻い潜る術を知らないから、現実ではなんともなく見繕っても、心の内はみすぼらしく腐っている。どうでもいい虚無感が、他人を見るたびに感じるし、自分もそう見えているのだろうと思う。
 社会人になった先輩は毎日スーツを着て営業に駆け回る日々だ。足に合わない革靴のせいで靴擦れはするし、日焼けが酷いという。昼飯はどこかの飲食店かコンビニですまして、金が貯まらないらしい。彼女の誕生日が今月で、ディナーをご馳走したいがコロナだから家で自分がローストビーフを仕込むという。就職するために変えたアイコスだが、結局紙煙草に戻って毎日ぱかぱか吸っているという。自分は汚い煙を吸う掃除機だと自虐をかまして、笑っていた。笑った歯が黄色かった。ひどくこけていた。だが正気は髪型からだけ伝わってきて、マスクをしているから大丈夫なのだろうとも勝手に思った。
 先輩は頑張っているようだった。言葉以上に身を粉にして働いているようだった。行く先を知らない煙草の煙が先輩の口元から溢れ出ては消えていくけど、その先には綺麗な青空が見えていて、まだ先輩は大丈夫なんだろうと不思議に感じた。
 

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