Creepy Nuts「顔役」②

続いて2verse目です。

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8小節の間に”ai"を14個含んでいます。曲を聴くと分かるように、"ai"の響きを持つ言葉にアクセントを置いてフローしています。

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この8小節の前半では先ほどの8小節での"ai"にアクセントを置くフローを軽めに引き継いでいながら、"iiui"を メ韻※ としています。

後半4小節は主に "ioi" と "aa" をメ韻としています。"ioi"は5つ"aa"は7つ登場します。そのうち「"B-boyじゃな"い」「”匂いがちゃ”う」「”白いカラ”ス」「黄色い肌」では ”ioiaa"の5文字で踏んでいます。

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次の8小節からは言葉数を詰め込むのではなく、小節ごとに間を持たせたフローに変化していきます。「学校指定のNEWERA」「闊歩してた梅田」は「学校指定の」の ”の” と 「闊歩してた」の "た” を踏んでいないだけで、耳に残るラインです。

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最後の8小節では先ほどの8小節から続いている "ea"  または  "ia"の響きを小節のケツにもってくることでグルーブを生み出しています。

また、四角で囲んでいる「”バックれてな”い」と「バックルてな」はかなり意識的な配置になっているのではないでしょうか。同じ響きの「バックれてない」を8小節の頭にもってくることで、最後の「あのバックルてな 全MCが受け継ぐもんってな」というラインがより際立つように仕掛けられていると思います。

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さあ最後、3verse目を見ていきたいと思います。

ここでは "ai" をメ韻としながらも、"oai" "aaai" "aai" "uai" ”eai" "uaai"など様々なバリエーションで踏んでおり、色分けの表現も難しくなっています。しかし、"aai"に特化して注目すると、四角で囲んだ14個の韻が確認できます(「叩っ斬る」の重複を含む)。また、「やすらかに」と「わるあがき」は綺麗に5文字踏んでいるので下線を引きました。

個人的にこのバースは韻よりも同じフローで乗せ続けることを重視したように思われます。韻とフローは密接に影響し合っていることは大前提ですが、このバースでは韻の硬さよりも、フローに重きを置いているのではないかということです。

~まとめ~

筆者は「クローズ」を読んだことがないので、「クローズ」を読んでいないと分からない歌詞の意味を正確に理解できていませんが、R-指定がこの曲で試みたことは次の2つだと思います。

①日本のHIPHOPシーンをクローズの世界観に見立てながら、R-指定のシーンでの立ち位置そしてキャリアを語る

②日本のHIPHOPシーンの「顔役」として圧倒的なスキルを見せつける

今回の記事では「韻」という観点から②の側面を掘り下げてきました。個人的には1verse目の濃度・密度にそしてR-指定の舌の回転に舌を巻きました。

バトルでもそうでしたが、たぎって殺す目つきのR-指定はたまらなく好きです。もっというとMCバトルではなくbeefが勃発したらどんな楽曲を作るのかめちゃくちゃ気になりますが、昔のRIPやKICKのような、アングラから見た攻撃対象としての隙みたいなものは微塵もないですね汗

※ メ韻・・・バースでメインとなっている韻のこと             思いついたので、今回の記事からこの表現を使っていこうと思います。  何が”メイン”たらしめるのか?大抵は「数」だと思いますが、そうじゃない場合もあるかもしれません。


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