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家族の彼方  9

4月1日の顛末はこうだ。朝食後、いつものように食事時だけ居間に来る④弟が2階の自室部屋に上がってから、母さんがメソメソ泣いて、父さんに『あの子のこれからの生活が…』と訴えるにあたり、堪えられなくなった③弟は④弟の部屋の戸を叩く。二人で、一月の会議以来、本人は何もしていないようで、結局④弟言うには、今生きているのは、自殺をしたら親を悲しませるからであって、親が死んだら、自殺すると思う、といったと言う。覇気のないものに何をいっても届かない。少なくとも努力して、母に今のような姿を見せるな、と③弟は言った。そして両親(父さんも)の前には自殺するな、と。そして、君の人生だから、好きにしろ、ただこの家は汚すな、といったと言う。
 その日から20日ほど経過している。もと金物屋の珈琲店は程よく落ちた照明で、テーブル毎に違ったテーマの本を5、6冊並べてある。我々の前にあるのはスターバックスがどうしたこうしたと言うビジネス本であったが、恐らく読んでみても、今の我々の悩みを解決できる種類では無さそうだった。

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