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SNSにおける「新規性」の喪失例

現代ならではの特許出願時の「新規性」確認方法とは

発明をされる方々はご存知のことと思いますが、
日本や外国で特許を取得しようとすると、
・「その発明の内容が産業上利用できること」
・「公序良俗に違反しないこと」
・「最先の出願であり、新規性及び進歩性という特許要件を満足していること」
という規定があります。
これはどの国でも要求される基本的な要件です。
 
この新規性・進歩性に関して、
審査官がどの観点からチェックしているのか、
ドイツの特許弁護士からいただいたSNS絡みの事例がありますので共有させていただきます。

YouTubeが公知例に?

今日のSNSの普及と相まって気を付けなければならないことの一つに、YouTubeへの動画アップがあります。

最近ではこういった動画共有サービスを活用し、
ものづくりのメーカーにおいても、広告を兼ねて新製品の製造の様子や新サービスの内容をアップしていることが多いですよね。
特許関係者にとっても、その工場の様子や製造過程をオンラインで見られので勉強になることも多いと思います。
 
しかし裏を返せば、特許庁の審査官もYouTubeを見て、その出願に新規性があるか否かを確認することができるということです。

例えば、欧州特許出願No. EP 22 20 0939の欧州サーチレポートには、以下のようにYouTubeの動画(19:48 ~ 24:22)が公知例の一つとして引用されています。

欧州特許出願No. EP22200939サーチレポートより抜粋

この出願の場合、いくつかの請求項を進歩性で拒絶するために、この動画の19:48~24:22に及ぶ5分足らずの映像部分が1つの公知例として扱われているのです。

日本の審査においても、「ウェブページ等に掲載された発明(考案)」は、電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明として新規性の観点から拒絶されます(特許法第29条第1項3号)。
日本でも注意が必要な例です。

因みに、審査官は公知例を調査するときに、まずは出願に記載された発明者名や会社名をデータベースに照会するとも言われています。
このため、出願して権利化を目指す際に、YouTubeなどへアップした動画があるのであればそのアップ内容に気を付けなければなりません。

必ず事前に弁理士に相談することをお勧めします。

特許におけるSNS戦略は慎重に

一方で、自社で特許出願を目指さずに広告宣伝などの目的で公開するのであれば、逆に他社の権利化を阻害することができる可能性もあります。
ただし、自社の実施行為を世の中に晒すことにもなるので、ノウハウを秘匿したい場合を含めて注意が必要です。

テレビ放映のように、「ここは企業秘密だから残念ながらお見せできません」といって「画像をぼかす」のとは違って、SNS動画の場合は気づかないうちに発明やノウハウに関する特徴をそのままスーッとアップしてしまうこともあり得ますので御用心を。

 

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