見出し画像

「ルール」を守りながら、「ルール」を変えることを教える。

「その『ルール』は納得いかない。もっといいやり方があるはず。だから私は守りません。その『ルール』じゃなくてもいけるし…。」ってことは、よくあること。

でも、「ルール」を守らなければ、社会では生きてはいけません。「ルール」を破ってしまえば、周りの方に迷惑をかけてしまったり、それなりの代償を払う必要があったりします。これは、学校でも同じ。学校で決まっている「ルール」の中でやっていく必要があります。

だけど、納得いかない「ルール」もあるし、変えていくべき「ルール」もあります。いくらそう思っていても、今ある「ルール」を破ることはできません。今日は、「クラス会議」を実践していれば必ずと言っていいほどぶつかる「ルール」との付き合い方について、まとめてみたいと思います。

「ルール」は「守る必要のあるもの」だけど、「変えることができるもの」であることを示す。

「クラス会議」を実践していると、特に「議題の話し合い」の時に、学校の「ルール」や社会の「ルール」に関わることが挙がってくることがあります。子どもたちの主張は、説得力がある時も多々。だからといって、「そのままやりたいようにやっていいぞ!」とはいきません。

例えば、ある学校の3年生のクラスで、こんな議題がありました。

「給食の時に、いつも教室で食べているけれど、たまには外でお花見するみたいに食べたいです。」

これ、みんなで話し合って決めたから…と言って、勝手にやる訳にはいきません。「クラス会議」をやっていく時、「話し合って決めたからと言って、やりたいことを勝手にやってしまってはいけない。」ということは、しっかりと押さえておくべき点です。

では、この議題、担任の先生はどう扱ったか?ですが、外でお花見するみたいに食べるためにはどうすれば実現できそう?ってことを考えました。子どもたちから出たアイデアは下の4つ。

・給食委員会にお願いしてみる。
・栄養教諭の先生にお願いしてみる。
・校長先生にお願いしてみる。
・お弁当の日があったら、その日にやる。

このクラスでは、「栄養教諭の先生にお願いしてみる」ってことと、「給食委員会にお願いしてみること」の2つを選びました。その結果、栄養教諭の先生と給食委員会が協力して、「お花見給食」というイベントを考えてくれたそうです。

その日は、割り当てられたクラスのみ、配膳が簡単で、移動がしやすいメニューに変更し、全校の全てのクラスが「お花見給食」ができるようになりました。

全てがこんなにうまくいくとは限りませんが、「クラス会議」は、どう提案していけば実現できるのかを考えて行動する方法を学ぶことにもつながります。

また、ある学校の5年生のクラスでは、こんな議題がありました。

校外学習では、以前に「ルール」を守らない子がいたことで、お菓子を持っていくことができない「ルール」になっていますが、せっかくの楽しい行事なので、お菓子を持っていけるようにしてほしい。

以前の校外学習で、その学年で「ルール」を守らない子がいて、お菓子を持っていけないルールになっていたのです。それを何とかしたいけど…という提案です。

「それはだめ。」と言ってもいいような状況ですが、担任の先生は、「どうすれば実現できると思う?」と問いました。すると子どもたちから、

・学年の先生を全員説得する。
・校長先生にお願いしてみる。
・みんなできちんとできるところを見せて、納得してもらう。

というアイデアが出ました。子どもたちは、まず学年の先生に順番にお願いにいきました。数名いる先生に順番にアポを取り、作った提案書を見せながら、「学年のみんなにこのことを提案し、しっかりとできるところを見せます。」「今回ルールが守れなかったら、修学旅行もなしにする。」といった内容も考えて、話をしにいきました。

つき返されては提案書を練り直し、何度もお願いにいき、学年の先生を全員説得することに成功しました。その後、校長先生にもお願いに行き、承認していただくことができたのです。

その後、提案書に書いてあったように、学年のみんなにプレゼンし、各学級で話し合い、全員がしっかりと「ルール」を守ること、それ以外の場面でもしっかりと「ルール」を守っていくことなどを共通理解して、校外学習での「お菓子」がOKになるということを実現できたのです。

実は、これって、社会の中でも同じことができます。やりたいと思ったことがあったら、行政にお願いしてやってもらえるようにしたり、仲間を募ってお願いに行ったりすることで、社会を変えていくことができるのです。

「クラス会議」も「ルール」の中で行う。

このように勝手にやるのではなく、しっかりと根回しして、手順を踏んで、「ルール」の中で行っていけば、無茶苦茶な提案ではなくなります。それって社会でも同じですよね。時に、実現しないこともあるけれど、それも学び。いろんなやり方で動いていく…ってことを、「クラス会議」の話し合いからつながっていくことで学ぶことができます。

なので、このベースとなる「クラス会議」も「ルール」の中で行うことを意識したいものです。例えば、学校でやるべきことが決まっているのに、自分のクラスだけ「クラス会議」をする…となると、批判されてしまったり、やること自体を止められてしまったりするでしょう。

だけど、しっかりと説明をし、しっかり根回しをして、学年の先生や校長先生などに、「クラス会議」についての説明をしてから実践していけば、実践することが可能になります。

私が20年ほど前に「クラス会議」を始めた時、どう頑張っても時間が30分近くかかってしまっていました。そのために、校長先生や学年主任に、やることを説明し、できるだけ時間を短くしていくことや、成果をシェアすることを約束してお願いしました。また、知り合いの大学の先生にお願いし、校長宛に「クラス会議」の実践に協力してほしいという手紙を送ってもらい、研究の視点からも協力してほしいというお願いもしました。

初めはどうしても時間がかかってしまうこと、それを取り戻すだけの授業をしっかりとすること、「クラス会議」でねらうことについても、しっかりと説明をしました。勝手にやるのではなく、しっかりと説明をしたり、根回しをしたりしていくことを教師自身が率先してやっていくことが大切だと思います。

これは、子どもたちが「ルール」の中で、いかに自分たちのやりたいことを実現していくのか…という課題に対処していく時の動きと同じになります。

「学習指導要領への位置づけ」についても説明ができるようにしておく。

「クラス会議」は、どんな教科にも関わってくるので、いろんな先生から説明を求められたり、研究授業等で「クラス会議」のことを紹介したりする機会は多くあると思います。

その時に、しっかりと「学習指導要領に位置づくことができる」という説明ができるようにしておくことが大切です。そこが説明できないと、納得してもらえないことがあるからです。「クラス会議」は、本当に素晴らしい活動だし、否定する理由はないかも知れません。でも、「学習指導要領」という一定の「ルール」の中でやっていくことができるってことを説明できないと、「勝手なことをやっている」というイメージになってしまいかねません。

人によっては、冒頭に紹介した「その『ルール』は納得いかない。もっといいやり方があるはず。だから私は守りません。その『ルール』じゃなくてもいけるし…。」って思ってやっていると、「その『学習指導要領』には納得いかない。もっといいやり方として『クラス会議』がある。だから、私は「学習指導要領」は関係ありません。」と言っているようなもの…ととられかねないと思います。

それだと、広がるものも広がりません。まずは、説明できることを意識しておいて、どうしても難しい場合は、周りの方にしっかりと説明をして実践をするようにしておくことがオススメです。

今は、もしかしたら、めんどくさい手順が必要かも知れません。でも、いきなり枠の外に出てしまって行うのではなく、しっかりと枠の中で周りの方と協力しながらやっていくことこそ、枠を変えてしまうくらいの影響力が発揮できる…と思っています。そういうことを子どもたちにも教えてあげられたらな…と思います。

「クラス会議」には、少々やり方を変えても、しっかりと成果につながると思います。周りの枠を意識しながら、その中で最大限のやり方で進めてくださいね。そして、子どもたちにも、「ルール」を守りながら「ルールを変える」力をぜひ育ててあげてください。

「クラス会議」には、枠の形や大きさを選ばないくらいのパワーがあります。ぜひチャレンジしてみてくださいね。オススメです!


店長敬白。


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?