3つの状況について考えてみましょう。法律は,実際の教育現場で,本当に教師を守ってくれるのでしょうか?

次のような状況(3つの状況があります)になったら,教師はどうなるのでしょうか?

法律的に,倫理的に,職業的に,現実的に,考察してみましょう。

安易に法律の表層的な解釈だけで考えて,早急に結論を出すと,現実の教育現場では,対応を間違えることにもなりかねません。

かといって,常に,教師に重大な責任があるわけでもありません。

何が問題で,法律的にはどう考えるべきで,そして,職業的には,どう対応すべきかを考えてみましょう。

状況(1)
教師Aは,休日の夜に,友人と一緒に,キャバクラに飲みに行きました。そこにはBさんというスタッフ(「キャバ嬢」)がいました。教師AとBさんは,話しているうちに仲良くなり,時々,店外でも会うようになりました。
しばらくして,担任している生徒Cの保護者から,校長に,「A先生が,風俗店に出入りして,うちの娘(生徒Cの姉がBさん)を誘惑している」と猛烈に苦情を言ってきました。
よく聞いてみると,確かに,キャバクラのBさんは,教師Aが担任している生徒Cのお姉さんでした。保護者は,「教師として許せないので,教育委員会にも申し立てて,事実をマスコミに公表する!」と怒り狂っています。教師Aは,どうなるのでしょうか?

状況(2)
教師Kは,SNSで匿名で投稿しています。普段は,食べたものや,ちょっとした気づきなどを投稿していましたが,最近の学校現場がブラック過ぎると感じるようになり,特定の学校の名前などは出さずに,一般論として,部活動指導が超過勤務や休日勤務の原因になっているとして,部活動指導について,勤務時間以外の勤務をやめるべきだという趣旨のことを投稿しました。ある生徒が,その匿名のSNSアカウントは教師Kのものであることに気づき,友人や保護者に伝えました。それが広がり,生徒の多く,そして,保護者の多くが,教師Kは部活動の指導をないがしろにしている,部活動指導に関してやる気がないと思うようになり,複数の保護者から,SNSのスクリーンショットなどとともに,校長室や教育委員会にクレームが来るようになりました。教師Kは,どうなるのでしょうか?

状況(3)
教師Nは,特別支援学校の教諭です。あるとき,知的障害(発達障害)の子供がパニックになって,暴れ出しました。その子供の安全と周囲の子供の安全を図るために,教師Nは,その子供の体を抑え込みました。それでも,その子供は暴れることをやめなかったので,その子供を壁に押し付けるようにして,動けないようにしました。しばらくして,他の教員も駆け付けたので,その場は,それで収まりました。しかし,その後,その子供は,骨の一部にひびが入っていることがわかりました。おそらく,パニックになって暴れたときに,ひびが入ったと思われます。保護者は,医師の診断書を取って,学校と教育委員会に対して,暴行傷害罪で訴えると息巻いています。また,教師Nに対して,厳重な懲戒処分をするように要求しています。教師Kは,どうなるのでしょうか?

教育法規をそれなりに勉強して,少しでも判例等を読んでいる人にとっては,法律的な解釈は,問題なくできるかもしれません。

でも,教育現場は,法律的な解釈だけでは動きません。

それぞれの状況の最後は,「教師Xは,どうなるのでしょうか?」で結んでいます。

実際の教育現場では,このような場合,教師は,どうなると思いますか?

そして,その結果,どんな不利益が起こるのでしょうか?

もし,法律が教師の味方なら,なぜ,法律によって守ってもらえないのでしょうか?

この辺りのことを,法律的に,倫理的に,職業的に,現実的に,考察してみましょう。


河野正夫
レトリカ教採学院


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