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プロセス化・仕組み化において再現性を高めるために考えるべきこと

社内における開発標準を整備するなど、先駆者としてやったことを後続の人たちがより簡単にできるようにプロセス化・仕組み化していく、ということがあると思います。この際に、できるだけ再現性が高くなるようにどんなことを考えるべきか、資料にまとめる際にはどんな項目を含むべきか、がわかってきたのでシェアします。

1. 目的設定 - 誰が何をできるようにするためのプロセス・仕組みなのかかを設定する

まずは、誰が何をできるようにするためのプロセス・仕組みなのかかを設定します。例えば同じ「社内における開発標準」を作る場合でも、「新米開発マネージャでも開発案件を安全に回すための開発標準」なのか「エンジニアの入れ替わりが激しいチームにおいて、エンジニア間で開発の流れの認識を合わせるための開発標準」なのかで書き方が変わってきます。

特に、「誰が」を考える際には下記の2点を意識します。
ポジション … 新卒エンジニア、既に一通りの業務を経験した中堅営業社員、グループマネージャなどのペルソナ。
前提知識・スキルセット … 特定の資格の保有、業界標準規格への理解、 特定の業務領域の経験などの前提事項。

2. アクタ定義 - 登場人物の役割と関係性を定義する

実際のプロセス・仕組みを回していく際には、複数の関係者が関わってきます。どんな人が登場して、それぞれがどんな役割で、互いにどのような関係を持つのかをまとめます。下記の様な資料があるとわかりやすいです。

アクタ表
アクタと、そのアクタの主な責任と役割をまとめた表です。簡単なプロセスや、プロセス整理の初めのうちはこれがあれば十分です。

関係図(ポンチ絵)
アクタ同士を矢印でつなぎ、どのような関係を持つのかをまとめた絵です。アクタ同士のコミュニケーションが重要な場合は、こちらがあるとよいです。

Role&Responsibility表
役割やタスクを縦軸に、関係者を横軸に取り、誰が何をするかをまとめた表です。アクタ同士の責任分解を明確にする必要がある場合は、こちらがあるとよいです。

3. プロセス定義 - 全体の流れをまとめる

プロセス・仕組みの全体像をまとめます。

矢羽根
並列のステップが存在する場合には下記の様な矢羽根の形式がわかりやすいです。具体例はこちらで紹介した障害対応プロセスです。

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時系列に直列に進んでいくような場合は、下記のような表の形式でよいでしょう。具体例はこちらで紹介した勉強会開催プロセスです。

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4. ステップ定義 - プロセスにおける各ステップを詳細化する

次は、プロセスにおける各ステップを詳細化していきます。下記の項目を含むと再現性が高くなります。
①目的
②インプット
③アウトプット
④手順
⑤テンプレート、ツール
⑥考慮点

一部項目について補足します。

②インプット、③アウトプット
このステップを実施するために必要なインプット、実施した結果得られるアウトプットをまとめます。大抵はそれより前のステップのアウトプットがそのステップのインプットになります。また、"資料"だけでなく、"情報"や"意思決定"がインプット、アウトプットになることもあるので、これらを漏らさないようにしましょう

⑤テンプレート、ツール
インプット・アウトプットのテンプレートや、手順を実施する際に活用できるツールをまとめます。これらが充実していると、プロセスがより再現度の高いものになります。

⑥考慮点
実際に失敗したポイント、ハマったポイントを記載します。④手順と違い、毎回起こることでなくても、「他部署の〇〇マネージャがカットインしてちゃぶ台返しする可能性があるから注意!」とか「この手順を曖昧にしたまま進めた結果後で大変になった!」といった実感のこもった内容を記載することで、ステップ遂行におけるリスクを減らすことができます。

5. 定着化 - 広く利用してもらえるようプロセスを定着化させる

プロセス・仕組みを整備したら、より多くの人に活用してもらえるよう定着化させていく必要があります。プロセス定着化には2つの方法があります。

トップダウン
マネージャや役員レベルからプロセス・仕組みに従うことを強制してもらう方法です。プロセスを簡単に、確実に定着させることができるため、可能であればこの方法を取るべきです。

ボトムアップ
一部のメンバから使い始め、徐々に利用を広めていく方法です。強制するための大義名分がない場合や、有志のメンバによって始まるプロセス化はこの方法から始まることになります。皆どうやるべきかわからず困っている場合は、喜んで受け入れられるでしょう。一方で、既にそれぞれが独自のやり方を行っているものをプロセス化・仕組み化しようとするような場合は、必ず反発派が出てきます。このような場合は上位者を説得し、トップダウンで強制してもらうようにすべきです。ボトムアップで続けようとすると、彼らの説得にエネルギーを要し、最悪の場合定着しきる前にとん挫してしまいます。

6. 継続的改善 - プロセスが陳腐化しないよう継続的に改善する

プロセスが定着したら、それが陳腐化しないように継続的に改善し続ける必要があります。継続的改善のコツは、プロセス化・仕組み化をするメンバの新陳代謝です。一度プロセス化・仕組み化されても、メンテや改善が属人化してしまっていると、特定のやり方に固執してしまったり、そのキーパーソンが抜けたとたんに陳腐化が始まってしまいます。そのため、定期的にメンバの入れ替えを行うとよいです。

この際、メンバの新陳代謝によってもとのの目的や熱量が失われてしまうことに注意が必要です。プロセス・仕組みの改善それ自体がプロセス化・仕組み化されると、プロセスを改善すること自体が事務的な作業になり、創造性やモチベーションがなった結果、もとのの目的や熱量が失われてしまうことがあります。これに対しては、エンジンとなるような中心的な人物が改善をドライブしつつ、その他のメンバを入れ替え、新しい風・アイデアを取り込んでいく、という体制が長く続くのではないかと考えます。

以上です。

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