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リーンのMVP(Minimum Viable Product)の車とスケボーの例えを改めて解釈する

リーンスタートアップのMVP(Minimum Viable Product)の説明において、車を作るときにスケボードからバイク、そして車へと進化していく図が用いられることが多いです。しかし、これは部分的にしか正しくないとする記事を見つけ、この例えの解釈を改めて考えてみました。

リーンとMVP

MVP(Minimum Viable Product) = 実用最小限の製品は、リーンスタートアップの文脈で提唱された概念で、「アイデアや仮説の検証のために作成するユーザが実用可能な最小限の機能を備えたプロダクト」のことです。製品やサービスの初期バージョンをできるだけ早くリリースし、それを基にユーザーのフィードバックを収集し、改善を重ねようという考え方です。

なお、この考え方はアジャイルの主流であるスクラムの「検査と適応」の概念とも親和性があり、アジャイルにおける初期バージョンの開発物をMVPと呼んだり、MVPの説明がそのままアジャイルの説明として転用されている例をしばしば見かけます。

車とスケボー(バイク)の例とそれに対する反論

車とスケボー(バイク)の例

MVPの説明としてよく用いられるのが、次の図です。

Making sense of MVP (Minimum Viable Product) – and why I prefer Earliest Testable/Usable/Lovable
https://blog.crisp.se/2016/01/25/henrikkniberg/making-sense-of-mvp

これに対しFred Voorhorstさんは、MVPとは、プロダクトアイデアにおいて何が重要で何が省略できるのかを模索する一連のプロトタイプを開発することであるといいます。そして、車のようなプロダクトを開発する場合、最終的に完全なオートバイを開発することはなく、出発点がスケートボードや子供用のスクーターになるかどうかは疑問だと述べています

そして、例えばUXに興味がある場合、MVPは下図の下段一番左の絵のような、UXは最終系に近い状態を保ったままテクノロジーを最小限にしたもの(エンジンの代わりに人が手で押すようなもの)ではないかとしています。

MVP - not "bike to car"
https://www.linkedin.com/pulse/mvp-bike-car-fred-voorhorst

解像度を上げる』の中でもこの記事が取り上げられており、著者の馬田隆明さんは、車を作るためにバイクや自転車を作るのは、最終的なユーザ体験が異なるし、解決している課題も異なることが多いと述べています。

どんな仮説を検証したいかによって作るべきMVPは異なる

この一連の議論を踏まえ、個人的にはどんな仮説を検証したいかによって作るべきMVPは異なるのではないか、と思いました。

① 設定した課題や提供する価値の需要を検証したい場合
全く新しい課題設定や価値提供を行う場合には、車とスケボーの例のように、プロダクト(ソリューション)ありきではなく、考え得る最も簡単なプロダクト(ソリューション)から始め、ユーザからのフィードバックを得ることで課題や提供する価値の仮説の精度を高めていくアプローチがよさそうです。

② 課題の解決策=プロダクト(ソリューション)の需要を検証したい場合
課題や提供する価値の需要はある程度明確で、課題の解決方法がユーザに受け入れられるかを検証したい場合は、手押し車の例のように、初期段階から可能な限り完成版のプロダクト(ソリューション)に近づけつつも、ユーザにとって本質ではないテクノロジー(バックエンド)の部分をそぎ落としたMVPを作る方が、仮説をより高い精度で検証できそうです。ジョブズが「人は形にして見せてもらうまで、自分は何が欲しいのかわからないものだ」と言ったように、スケボーを見せられたユーザから「4輪車が欲し」というフィードバックを得ることは難しいのではないかと思います。

以上です。

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