少ないパワーで速く走るとは

2011年に「おにぎり」が登場してからサイクリストの間でしばらくブームになった「ペダリング効率」というワード。丁度変速精度が成熟してきた楕円リングの登場もあってか、2015年初頭までどこにいってもペダリング効率という言葉は聞こえてきた。

私はペダリング効率というのはLT走時に65%程あれば充分だと思っている。というよりそこから高めようとすると逆に体幹を上手く使えなくなるし、それによるフォームの乱れがデメリットとして浮き彫りになるわけだ。

そして当時はまだ「ズイフト」が出てきておらず、ローラー練と言えば心拍数とケイデンスがメインパラメーターだった。最近ローラーに乗っていて気がついたのは、ローラーに乗れば乗るほど実走が下手くそになるということだ。紛れもない事実だと思う。

さて、前置きはここまで。

ローラーに乗ると何故実走が下手くそになるのか。そしてペダリング効率が必要ない(厳密には意識しなくていい)のかを解説する。

ローラー練習の環境について

ローラーというのは道であって道ではない。

私が使用しているグロータックのGTローラーのコンセプトに真っ向から異議を唱える。
勘違いしないでほしいのは実走との比較だ。GTローラーは散々私が言っている通りズイフトをプレイしないのなら最善の選択肢となりえるローラーだ。

そもそも実走での巡航とローラーでの巡航は意味が全く違う。

ローラーでは等速巡航=パワーは一定だ。
対して実走は等速巡航≠パワーは一定だ。

物理的に何も間違っていない。仮にローラーでのペダリング効率が100%だとしても、実走ではそのスキルは意味をなさない。

さてどういうことか。

実走では自転車は常に移動している。その移動中は当たり前だが常に自転車を後ろに引っ張る抵抗(R)が発生する。対して自転車を前に進ませる力(N)は一定ではない。人間の体の構造上ペダリング効率100%は不可能であること、そして路面のガレを拾ったりBBのしなりなどにより、確実にNのベクトルは一定にならない為である。

端的に言うと、ローラーでトレーニングをするということは上記の連続的抵抗の変化及び自転車がライダーの意志とはまた別の方向に僅かに移動する事に起因した、路面状況等への対応力が落ちてしまうということだ。

そうは言ってもローラー練習のフィジカルの向上効率は実走とは比べ物にならない程高いため、バランスを考えてトレーニングを行うことの方が大切である。どちらか一方では良くない。

ペダリング効率を意識してはいけない理由

これは先にも述べた通り実走での抵抗のかかり方が大きな理由になるが、もうひとつ別の理由も紹介したい。

先のペダリング効率100%は理論上不可能というのを前提として、無理にペダリング効率を上げることで発生してしまう弊害があるからだ。

パイオニアが行った実験によると、ペダリング効率は大体LTパワーで最高値をマークするらしい。私も同じような体験をしているので外れてはいないだろう。

だがそれより高い強度ならペダリング効率は僅かに下がる。大体5~8%程か。正直ここまで来るとペダリング効率云々を気にしてられる程の余裕はない。

そもそもペダリング効率なんて、その瞬間に必要なものではない。必要なものを履き違えて走るのは楽しくないだろう。

その上でペダリング効率が必要ない理由とは、「ペダリング効率を上げること」には長期的トレーニングが必要だからだ。さらに言えば、ペダリング効率なんかを意識するより体の使い方を意識する方が絶対的に速くなれるということに尽きる。

「少ないパワーで速く走る」は間違い

確かに少ない出力で速く走ることは理想である。というよりプロコン以上の選手ならその意識で間違いないだろうと思う。

しかし我々アマチュアには決定的に「体の強さ」が欠けている事が多い。サガンレベルの体幹がある人は多分日本の自転車乗りにはいないだろう。すなわち、体の使い方を工夫しつつ、体を強化、その上で少ない努力度で速く走ることを意識すべきだ。

最近の私の発見として、「アンクリング」は絶対悪ではないというものがある。

アンクリングは足首が動くことでパワーロスに繋がる動作であり、筋肉に負担をかけるから良くないというのが通説だった。特に踵を下げるのは絶対悪で、踵を下げるなら上げろというのが良く言われていたことだった。

しかしそれは違う。足首が硬い人に関しては踵を下げるアンクリングはむしろー効率的とは行かないまでもー悪くない。

母指球後方でペダルを踏むのであれば、基本的に踵は水平で良い。登りでトルクをかけるのであればストッパーとして踵を使うペダリングもアリだ。もちろん効率は良くはないし、踵を常に下げてしまうと引き足が使えないためしっかりと「アンクリング」する必要があるのだが、ペダリングのひとつの在り方として正しいと思う。特に後ろ乗りの選手にオススメだ。

総括:ペダリング効率を気にするなら体幹トレーニングをしろ

案外安直な結論である。ここまで捻りのない結論は予想してない。

もちろんプランクだけではダメだ。サイドプランクやひねり腹筋などをしておくのがベター。プランクだけではインナーマッスルには刺激が届かない。

体を使いつつ、キツいときでも体幹に力を入れることを意識する方が速く走れる。それに気がつくまでペダリング効率なぞ無視してよい。

もちろんローラーではダメだ。ここは実走でのトレーニングが活きる。ちゃんと登りながら、平坦を高強度で走りながら入念に速く走る方法を探ってほしい。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?