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ヘルメットインプレッション~エアロより大切なもの~

ここ2~3年で、ヘルメットの空力がやけに注目されている。私もこれまでにTTヘルメットからエントリーグレードのヘルメットまで、5種類のヘルメットを使ってきたがどれも空気の抜けは面白い様に違った。さて、今日は個人的に思うインプレをしようと思う。

さて、まずは大人気のOGKからAERO R-1のインプレから。

こちらはかぶった事があるだけという形だが、ちょっと思うこともあってインプレ記事を上げておきたい。

エアロヘルメットの最大の利点は、ノーマルモデルに比べて明らかに空力に優れることだ。向かい風の中走ってみると良く分かる。進むというよりかは頭が風に押されないのである。

このヘルメットも数あるエアロモデルの中ではかなり使い勝手がいいのは事実だろう。軽く(S/Mサイズ215g、レンズ無し)、日本メーカーということもあり日本人が取っつきやすいエアロヘルメットなのはその圧倒的使用率からして良く分かる。レース会場でこのヘルメットは探さなくても目に入るレベルだし、ハイエンドモデルという括りにありながら税抜き2万円弱という価格競争力には目を見張る。

しかしだ。私はこのヘルメットがどうにも気に入らなかった。自分の場合XS(顔面は3L位なのになw)でジャストフィットなので僅かに軽量化に繋がるというのにだ。理由として、走行中に水を被れないのと、OGKが自社で行った風洞実験の行いかたが本気で呆れるものだったからだ。

前者の理由については、私個人の問題である。非常に汗を掻きやすく、極端な話ウェアに関してはそこいらのプロよりも拘りのある人間なため、私がヘルメットに求める第一条件:涼しいを達成出来てないのだ。友人から涼しくないと聞いてはいたが、被ってみて即納得した。通気孔の作りが少々お粗末だった。誤解してほしくないのは、R-1自体はそれなりに涼しいヘルメットだと思う。夏場の(特に一昨年のような)酷暑でなければ充分事足りる。しかし、あまりにもエアロを意識しすぎてヘルメット上面から水を被れないのだ。つまり気化熱という観点から涼しくないヘルメットなのである。

さて、後者の理由についてだが、まずはこのリンクを見て欲しい
http://blog.livedoor.jp/ben500/archives/41982598.html?ref=popular_article&id=4920697-1526786


このヘルメットは純粋なTTヘルメットであり、測定時のライダーのポジションがロードポジションとTTよりも高いことが空力性能が伸びなかった理由かもとの分析。

この一文を見た上で、R-1の風洞実験とCFD解析(と思われる)画像を見て欲しい。

グリーンのラインで囲ったところだ。明らかにロードポジションを想定されている。

十三峠さんのページより抜粋

このヘルメットの空力性能が具体的に示された一文を見つけた。ゼナートとの比較は条件が同じなので分からなくはない差である。しかしいくら前時代的なロングテールTTヘルメットであるエアロK2と比較したとしても同等だとはとても思えない。少なくともAERO R-1というロード用ヘルメットに有利な条件での実験なら上のリンクでの結果からして理解はできる。そうでないなら話を盛っているか、OGKのTTヘルメットが本気でお粗末なだけなのかと思う(まあ世界選でJCFの醜態を晒す結果になった間接的要因がTTヘルメット関連だし、さすがにR-1=AERO TLは無いだろう)。

というか日本の自転車関連の企業って空力関係弱すぎでは…?YONEXのエアロフライトとかアンカーのTTモデルとか、さすがにあれはないだろ…。ふざけてるとしか…。

私個人としては、使いたくないヘルメットというよりかは実験や設計面から興味が湧かないヘルメットという方が適切な表現だろうか。

最近新しいモデルがひっそりと登場したBBBより、ティトノス(2015モデル)のインプレ

さて、このヘルメットだが…

厚い暑い…いや、熱い…。割と本気で厚いし熱い。

エアロヘルメット黎明期のものであるから仕方ないのだが、とにかく熱い。一応エアーチャンネルは通っているのだが、ちゃんと設計したのかと開発陣を目の前に正座させて小一時間問いただしたいレベルで熱い。
3月中旬の対して暑くない時期なのに、軽く乗っただけで汗が垂れたのは相当ヤバイ。

しかもこのヘルメットの問題点は、フィッティングにある。後に紹介する同社のイカロスではS/Mサイズを使う私だが、このヘルメットに関してはMサイズが入らなかった。横幅を狭めたのはわかるのだが、もう少しどうにかならなかったのかというレベルでパッドが厚い。本気で夏場に使うと熱中症待った無しのヘルメットだ。これが活かせるのはおそらくTTポジにならないトラック競技(チームスプリントとか)か冬場のクリテのどちらかだろう。だが私は使わない。一応エアロヘルメットとしては平均的な重さ(270gS/Mサイズ)だが、あまりにもヘルメット内部の空気の抜けが悪いので使いたくないのだ。

さて、お次は同社のイカロスのインプレ

現在使用中のモデルその①。2018年まではFDJが使用してた。今はどこかのプロコン(ワンティだっけか?)が使っているはずだ。

さて、このヘルメットは2012年登場というプロトンの中でも超古参のヘルメットだが、私個人としてはかなり良くできたモデルだと思う(それなのにティトノスがあれなのは…)。空力性能はそこまで良くないが、パッドの配置、クーリング性能、フィッティングにおいて、このヘルメットは圧倒的にバランスが良い。重量は250g(S/M)程とオールラウンド系ヘルメットにしてはかなり重いが、ロングライドなら私はこれ一択だ。現行モデルならヘルメット上面を覆うカバー(レースでは使用不可)もついてくる。

パッドは薄めだが、それこそフィット感が良すぎるので私にとってはパッドがパッドの本来の存在意義を成してない。ちなみにパッドの吸水性は非常に高いので、私のように滝のような汗をかく人だとかなりパッドが臭くなることには注意だ。まあこれはどのヘルメットにも言える事だが。

少なくともこのヘルメットは日本人にはかなりの確率でフィットする。OGKを被りたくない人にはオススメだ。被りも深く、私にとってはそこいらのテキトーアジアンフィットより確実に頭に合う。

最後はMETよりトレンタのインプレ

現在使用中のモデルその②だ。色もそのまま。3Kカーボンモデルとノーマルモデルがあるが、私はノーマルモデルを使用中だ。現行はMIPSモデルとなり、安全性が高まっているそうだが、私の所有するモデルは非MIPSなのでその点はご容赦願いたい。

さて、私がこのヘルメットに感心した要素は、端的に言ってフィッティング以外の全てだ。

空力、重量、アイウェアの収納性、デザイン、中でも私が物凄いと感じたのは圧倒的な通気性である。

昨年1月にこのヘルメットを初めて着用して外を走った際、とてつもなく頭が寒かったのを覚えている。…いや、1月だからそりゃ寒いに決まってると思っているそこの貴方、私は前述の通りとんでもなく汗を掻きやすい=体温が上がりやすい体質なのである(平熱は35.8とかなのにな)。

例を挙げると、結構頑張ってローラー後にフレームを洗うなどの努力をしていたのに汗でグリスが流れでてステアリングがゴリゴリになったり、ローラーに乗る前にチェーンに注油し、乗った後にチェーンを拭いてもなお錆びる(ふくらはぎから汗が飛ぶ)程に汗をかく。

その私が「寒い」というのだ。それがどれだけエグい事なのか理解して欲しい…。

空力性能に関してはイカロスとの比較になるが、これも凄まじい。45㎞/hを超えると、イカロスの場合は頭が押し戻される感覚がある。トレンタにはそれがない。しかも寒い(褒め言葉)ほどに空気が頭に入ってくる。これがどれだけ凄い事か。同社のリヴァーレより空冷性能は高いのではないか。

空力に関してはマジで一線級だ。まあこれはGCNの実験で証明されているので、以下のリンクよりどうぞ。
http://morimotty.com/helmet-aero-test-2018-6/

ジロのVANQUISH(名前カッコいいよね。)のバイザー無しより空力が良くて通気性が化け物クラスとかもうそれは反則級の性能だ。

ちなみに実測重量はMサイズで217g(塗装重量的に黒が最軽量。白が最重、鮮やかな色ほど重いって知ってたかい?by YONEX)と、エアロヘルメットにしては最軽量クラス。3Kカーボンモデルならさらに10g程軽いだろうが、5%の軽量化に1万円も投じられるかとノーマルモデルを使用中だ。それでも十二分に軽いので気にならない(というか気にしようとしても気にならない)が。

さて、このヘルメットに唯一不満があるとすれば、MET独自のフィッティングシステムがあまりにもオールラウンド過ぎて、ジャストフィットしている訳ではないということだ。
これに関してはシステム上仕方ないと割り切れるかそうでないかで意見は割れるだろう。

ただ100点のフィット(R-1のXSやイカロスのS/M)ではないだけで、私個人の中では90点は取ってきている。それも殆どの人の頭の形で90点以上を取れるであろうシステムなので、ある程度は割り切れるし、気になるほどの不快感はない。ただニキビが額にあると少し痛いと感じるので、スキンケアには気を使って欲しいというレベルだ。強くアジャスターを閉めすぎると額に痕がくっきり残るのでそれにも気を付けたいか。

総括:ヘルメットは自分に合うものを

ここまでうんたらかんたら書いてきたが、結局はこれに尽きると思う。色々と本音が漏れまくったが、やはりイカロスは合わない!私にはバリスタがジャストフィット!という人(私はバリスタが絶望的にフィットしない)もいるし、被りの浅いヘルメットが好きだという人もいるだろう。あくまでもヘルメットやシューズ、ハンドルやサドルといった「フィッティング関連」には、絶対的にこうだ!という断言的表現を使用できない。だからこそ店頭でしっかりとヘルメットを被って選んで欲しい。クーリング性能とか空力性能とかは二の次でいい。命を預けるヘルメットは絶対に被りたいと思える物にすべきだ。

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