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新年早々、人間失格

 新年だから何か新しい事を始めなければならない。その強迫観念に苛まれた人生だった。

 年号が変わったのだから心機一転、身を引き締めて物事に取り組まなければならぬ。

 そうやって毎年正月になると、買ってきたばかりの真新しい手帳に一年の目標を書き込んできた。やれ今年は〇〇をするだの、どこどこに行くだの。実現可能なものもあれば、「おいおい、お前さん、それはちょっと現実的じゃないぞ?」と制止の声が聞こえるようなものまで。

 そして年末に振り返って溜め息を吐くのだ。箇条書きの項目、半分もクリアしていないじゃないか。

 そもそも、新年には目標を立てよう等という悪習、一体誰が言い出したのか。おかげでこっちは、毎年のように「志が高い人間」の振りをしなければいけない。いや分かる、道理なぞ分かり切っている。つまりこれは、顔も知らない古の偉い人への八つ当たりだ。

 お正月には年始の挨拶をしましょう。お年賀を送り合いましょう。心身を清らかに引き締め、明日に向かって切磋琢磨して生きていきましょう。

 こちらの事情はお構いなしでやってくる「圧」を、今年は全力で殴り飛ばした。

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2,158字
救われない遺書

感情の墓場。 この世から逃避行したくなった時に書き殴ったもの。

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