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祖母と私と父と猫

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祖母と父、猫とのエピソードを綴っていきます。
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減らないクリスマスケーキ、終わらないクリスマス、終わった日々

 クリスマスの思い出話をしよう。  私の父は昨年まで、製菓関係のパッケージメーカーに勤めていた。お菓子の包装紙や容器などを作る会社だ。父は家業と兼業しながら何十年も勤務し、支社長的なポジションに就いていた。  製菓関係は、今回のコロナ禍で打撃を食らった業界のひとつだ。人との交流が減り、贈答品の需要が減少。相次ぐ結婚式の延期や中止で、引き出物用のお菓子も売れなくなった。その結果、倒産や廃業を余儀なくされた製菓店・企業は少なくない。  父の会社の主な取引先は、地元密着の中小

『90歳、何がめでたい』

92歳になる祖母がいる。 腰は曲がりきり、杖無しでは歩くのも難しく、耳は遠くて会話も一苦労。 だけど頭はしっかりしていて、ボケる気配はまだ無い。 老体ながらも毎日畑に行き、台所に立って炊事し、家業を切り盛りしている。 そんな祖母だが、80歳を過ぎた頃から「もう疲れた。早く死んでしまいたい」と言うようになった。 こちらとしては長生きしてもらわねば困る。 「何を気弱なことを」「同年代は皆ボケて認知症だ」「頭がしっかりしているだけ幸運と思わなきゃ」と、さんざん父と慰めてきたが