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#140 秋葉原のメイド美容室でメイドさんに髪を切ってもらったお話

 特に用事がなくとも、ふらっと出向いて活気があることを確認するだけで、嬉しくなれる街がある。わたしにとってのその場所は、秋葉原だ。上京して真っ先に向かった憧れの地であり、20代のうち、半分くらいはこの地でバイトをしていた、自分史としても重要な土地である。

 今朝、起きて今日は何をしようかと考えた。日曜日だし、堅苦しいことはやめておこう。ここ数日はお風呂も着替えもお洗濯もちゃんとできている。身なりを整えて、気分を上げるチャンスかなと思った。

髪を切りたい

 実は、もうかれこれ4,5年ほどセルフカットだ。ブリーチやカラーも風呂場で自前。ただし、やっぱり素人の散髪だ。たまには美容院にいって、綺麗に切り揃えたいところである。

 ホットペッパービューティーのサイトを眺める。美容院など徒歩圏内に山ほどあり、当日予約も大丈夫だ。しかし問題はそこではない。メンズか、レディースか。まず、この選択肢が選べない。

 せっかく伸ばした髪を爽やかイケメン風に切られてしまうくらいなら、自分で切る方がずっといい。一方、レディースの髪型をオーダーするというのも、その勇気がない。

ふと思い出した

 アキババイト時代の10数年前、セルフカットに大失敗したわたしが駆け込んだ美容院の存在を。検索すると、まだあった。メイドさんの美容室モエちょき by moesham。(ちなみにわたしは、男性に髪を触られるのが大嫌いだ。そのため、尚更都合がいい)

 秋葉原なら、女装男装コスプレだろうが、なんでも余裕で偏見なく対応してもらえるだろう。予約時のメモ欄に、デミジェンダーであり、女性的な髪型を取り入れたい旨を書いておいた。来店し、希望を聞かれる。

可愛くなりたい

 率直に言った。それくらい、わたしのアキバ文化への信頼は厚いのだ。その他、うつ病で休職中であり、仕事のことは考えずに思い切ったカラーを入れたいことも伝える。

 さすが、秋葉原の美容師さんである。いろいろお話ししているうちに、わたしは『推しの子』の有馬かなになることになった。現状のカラーは自前でブリーチ済みの金髪。最初はアッシュ系の色を検討していたが、赤が良く発色すると思う、というアドバイスもあってのことだ。

著者近影(シュタゲの聖地、ラジ館前にて)

めちゃくちゃアガった

 退店の際、このお店に来てほんとうによかった、ここが続いてくれていてよかった、ほんとうにありがとうございます、とお礼を述べた。これはもちろん、心からのお礼である。

 ところで、夕方に差し掛かっていた頃合いだが、今朝から何も食べていなかった。しかしここは秋葉原、かつては食の大貧困地帯だったが、今ではすっかりグルメの街だ。

カレーの有名店「カリガリ」初来店

アキバ盛りカレー1号

 口に入れた瞬間、目が星になる。キラーン!これはとてもとても、美味しい。辛くはないが、スパイスと具材の溶け合った圧倒的な旨みがある。とても嬉しかったので、こちらも退店時に「あの…とっても美味しかったです。ありがとう」と感謝を伝える。

 実際、現在の秋葉原は飲食チェーンがわんさか出店する、きわめて競争の厳しい土地である。どこで食べても同じ味、という安心感もいいものだが、やはり地域の名店というのはあって然るべきだ。この地に来た甲斐があったと思える、そんなお店も必要なのである。そういう訳で、こんなに美味しいカレーをいただけるということには、感謝しかないのである。

 さて、美容師さんのおすすめで、眉ブリーチをすると映えると思う!と言われていた。ちょろいわたしは早速マツキヨで眉用のブリーチ剤を手に入れて、これを書いている真っ最中、脱色の待ち時間である。

 今日はきっと、仕事以外ではここ1年間の外出最長記録を更新しただろう。こうして気分を上げていき、明日以降の現実に備えるのだ。

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