症例紹介#10 【極度の肩こりと腕の痺れ】
【患者】
40代女性
【主訴】
肩こりと、腕から指先までの痺れ
【状況】
「美容師をしていて、常に腕を上げて作業をしているので、いつも肩が凝ったような状態で生活をしている。最近になって腕から指にかけて痺れが出てきて、仕事に支障が出てきた。」
イライラはない。
頭痛、めまいも特に感じない。
倦怠感がつきまとう。
【所見】
体格は細身でやや撫で肩。
鎖骨上の陥凹部を押すと、腕の痺れが再現される。
腕をしばらく上げていると、指先が冷たくなって痺れてくる。
表情は暗く、目に力がない。
脈は、細・軟
舌は淡、白
【考察】
極度の首肩の筋肉の緊張による、胸郭出口症候群の可能性が推察された。
体が冷たく血行不良が疑われる。
また脈が弱く、舌もやや白色が強いうえ、体温が低いのに肌が少ししっとりしていることから気虚状態である。
【処置】
極度の肩凝りのため、固くなった筋肉が、頸椎から出る神経と腕に向かう血管を締め付けていることによって腕の痺れが出ている。
まずは首の横から肩甲骨へ向かう「肩甲挙筋」と、耳の下から肋骨まで伸びる「斜角筋」を緩める。
この二つの筋肉は凝りやすい部位ではあるが、感覚が過敏でもあるため、指頭でのピンポイントでの圧迫は痛みを伴いやすい。
指の腹を使って優しく筋肉の緊張度合いを感じながら、少しずつ押し込んでいくと良い。
その後は肩のトップを構成する「僧帽筋」と両肩甲骨の間にある「菱形筋」を押圧していく。
【鍼灸での処置】
肩甲挙筋と僧帽筋は鍼で処置することによって大きな弛緩効果を得られるが、斜角筋・菱形筋の下には肺があるため、鍼での処置は行わない。
トリガーポイントを用いた手技で凝りを取り除いていく。
【結果】
指圧後に、鍼で痺れの核となる筋肉の硬結部を取り除くと施術中に「指先に血が流れていくのがわかる」といい、体温が上がってきているのが伝わってきた。
施術後は顔に生気が戻り、頬が赤みがかり、目にも力が戻っていた。
「今日はよく眠れそうだ」
といい帰って行った。
この患者はおよそ3ヶ月に一度の頻度で通ってくれているが、もう少し頻度を上げて通ってくれると、毎日の生活の質も向上すると思うが、仕事が多忙で中々難しいようだ。
【養生法】
下記場所に灸をするとよい。
お灸はせんねん灸が最も使いやすい。
火を使うことに抵抗がある場合は、火を使わない灸も活用したい。