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三越伊勢丹社員がCG制作?REV WORLDSのCG制作の裏側

3月にβ版がオープンした仮想都市プラットフォーム「REV WORLDS」。百貨店業をメインの事業とする三越伊勢丹がどのようにこのサービスをつくっているのか、このnoteではその裏側をご紹介していきます。

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今回は、CG制作についてのお話です。

「百貨店の社員がなぜCG制作を?」

REV WORLDSは三越伊勢丹と、いくつかの外部企業とで一緒に開発しています。
企画→CG制作→システム実装→審査&ローンチ(アップデート)までの過程のなかで、CG制作に関しては、外部発注だけでなく私たちのチームで内製もしています。
CG制作をメインで担当しているのは4名。全員が新卒から百貨店で働いてきたメンバーで、CG制作の仕事経験などもちろんありません。

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つい最近まで店頭にいたメンバーもいます。プライベートで趣味としてCG制作をしていた者もいれば、店頭にいた時にサービス上必要でCG制作をはじめた者も。レベルの違いはあれど、「面白そう!」という純粋な関心から、それぞれ自ら手を挙げてREV WORLDSのチームにやってきました。現在では商品や販売員のCG化、空間のCGを作り上げています。

百貨店の社員がCG制作にかかわるメリット

「百貨店の社員がCG制作をしているんですか?」と驚かれることがあります。CGデザイナーとしてはまだまだ……ではありますが、百貨店社員がCGを作るメリットもいくつかあるのでは、と考えています。

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・店頭で培ってきた「編集展開」の考え方がCG空間づくりにも活きる
私たちは日常的に、百貨店の店頭に来てくださったお客さまが商品を見つけやすいよう工夫したり、ふらっと来店されたお客さまに商品との出会いを提供したりするために売場のレイアウト変更(「編集展開」と呼んでいます)を行っています。

この「編集展開」とはお客さま(ユーザー)ファーストで、サービスを軸にした空間設計なので、CGで空間を設計するときにも、自然とこの考え方が活用されます。
ただカッコいい空間・かわいい空間を作る、だけではなく、大前提としてお客さまにとって心地よい空間・出会いのある空間なのかを重視する風土が根付いています。

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2020年、VRイベント「バーチャルマーケット4」に仮想の伊勢丹新宿店を出店した際の店内

・リアルな商品を販売してきたからこそ、モノ自体のアピールポイントを把握できる。
REV WORLDSはスマートフォン向けアプリのため、PCゲームやゲームソフトよりも容量に制限があります。またオープンワールドで他のユーザーともやりとりができるという特性上システムが重くなるので、CGオブジェクト(空間や商品などのモノ)の容量をできるだけ軽くする必要があります。

例えば、下記の画像、AからBのようにクオリティを落とす(ポリゴン数を下げる)などして軽くする必要があります。

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容量を軽くする中で、「そのモノのアピールポイントがどこなのか理解する」ことは重要です。ここだけは絶対にクオリティを落とせない!というこだわりの部分は残しながら、効果的に容量を軽くするようにしています。
このこだわりは店頭でお客さまと対話し、お客さまがどんなところを見ているのかを肌で感じてきた経験が活きています。

・「変更」「更新」のハードルが下がり、スピードアップにもつながる
プロジェクトを進めていく過程の中で「変更」はつきものですが、自分たちである程度修正することができるので、コストが下がるのはもちろんのこと、変更したり立ち戻ったり、追加したりすることのハードルが低くなります。
また、ともに開発している外部企業の方々とも、制作過程を理解している分コミュニケーションがとりやすく、スピードアップにつながっています。

CG制作の裏側

さて、ここからは具体的なCG制作方法を少しご紹介します。
CG制作は大きく分けると「スキャン装置を使う」と「一から制作する」の二つの方法があります。
① スキャン装置を使う
実物を撮影し、CG化する機械を活用する方法です。弊社にはこのスキャン装置が2種類あります。
1つは人をCG化する全身3Dスキャナー「RealAvatar」。

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オンラインストア用の撮影スタジオの一角にある全身3Dスキャナー。撮影商品が詰まった段ボールが静かに控えていますね。

Real Avatarは装置の中に入り、105台のカメラで全身を撮影。撮った写真を自動的に組み合わせてCG化――ここまでが数クリックでできる、すごいスキャン装置です。下記のように、人が中に入って撮影を行います。仮想伊勢丹新宿店にある婦人服セレクトショップ「Restyle」に立っているショップスタッフもこのように撮影してCG化しています。

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もう1つは小物などをCG化する「Ein Scan ProHD」です。卓上でもハンディタイプでも使えるので、細かいものや、洋服など吊り下げが必要なアイテムもスキャンすることができます。

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最近は、トライアルでクロワッサンやお弁当などもスキャンしてみました。
クロワッサンはボリューム感があり美味しそうです。

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② 一からCG制作する
撮影するだけでCGになる便利な3Dスキャン装置ですが、苦手分野があります。透過性が高いものや真っ黒なものなどは形が捉えづらく、向いていません。そのようなアイテムの場合は一からCGで作成します。
リファレンスと言われる参考写真を撮影し、それをもとにCGに起こしていく、といった流れです。時間はかかりますが、一からモノが出来上がっていく面白さがあります。

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伊勢丹新宿店正面玄関のアールデコ調の装飾のライトをCG制作。細かい……

CG制作の面白さ

スキャン装置は高額ですが、CG制作ソフトは無料のものもあり、弊社で使用している「Blender」もそのひとつ。
リアルなものを忠実に作るのも楽しく、また形状をとらえる勉強になりますし、CGならではの現実にないものを創作してみるのも面白いです。

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CGを制作しているメンバーの一人である、丸山がはじめて作成したCGがこちらのコップ。お世辞にも綺麗とは言えないですが(分厚くて飲みづらそう……)、CG制作の面白さに感動したそうです。(※その後他のクリエイターさんのCGクオリティを見て、かなりの絶望を味わったのだとか……)

そんな丸山ですが、Blenderをはじめて1ヶ月、VRイベント「バーチャルマーケット4」に出展するため、「仮想伊勢丹新宿店」の外装のCG制作に取り掛かりました。そしてできあがった仮想伊勢丹新宿店がこちらです。

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「バーチャルマーケット4」に出店した仮想伊勢丹新宿店の店内。昔、伊勢丹新宿店本館1階にあった大階段をインスピレーションに、空間をデザインしました。

VRイベント出店自体も印象深い楽しい体験になりましたが、一から伊勢丹新宿店を見つめてCGで作成することで学んだことも多く、この経験以降「自分たちでCGを作ることの意味」が見えてきました。

まだまだ、発展途上のCGチームですが、「百貨店社員の目でつくったCG」がREV WORLDSの中に散らばっています。


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