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未来のファッションデザインをデザイン画からリアル着用可能な衣装として実現するまで【FUTURE FASHION EXPO】

三越伊勢丹主催による、未来思考のファッションデザインコンテスト「FUTURE FASHION AWARD」、未来思考を育む教育プログラム「FUTURE FASHION WORKSHOP」。
コンテストとワークショップで選ばれた受賞作品は、受賞者が提出したデザイン画からリアルの衣装として制作を行い、3月から4月にかけて伊勢丹新宿店のショーウィンドウで展示しました。
今回のnoteでは、デザイン画から衣装へ制作するまでのプロセスをお届けします。


コンテストやワークショップ詳細については下記をご覧ください
■FUTURE FASHION AWARD
https://ffe.rev-worlds.com/award/
■FUTURE FASHION WORKSHOP 
https://note.com/rev_worlds/n/n4648d3ef8bbf

伊勢丹新宿店ショーウィンドウでの展示の様子(※展示はすでに終了しています)

デザイン画とコンセプトストーリーで応募できるファッションデザインコンテスト

FUTURE FASHION AWARDは、起こりうるかもしれない3つの未来「雨が止まない未来」「空中で暮らす世界」「月を行き来する世界」を課題テーマに、それぞれの未来での暮らしを想像ファッションデザインを募集したコンテストです。
提出物はデザイン画とストーリー記入によるデザインシートのみで、服が作れない方でもアイデアさえあれば応募可能。評価基準のひとつに「未来の暮らしに対する想像性」も入れて、想像すること・そこからのアイデアを重視しました。最終的に小学生から大人まで、国内外から1300件以上の応募が集まりました。

各テーマの大賞作品がこちら。どれも未来の暮らしの想像の解像度が高く、ストーリーやストーリーに基づいたデザインへの落とし込みが素晴らしいです。ですが、このままではイメージの状態であり、リアル衣装として実現するには…?
それぞれの受賞者の方とコミュニケーションをとりながら、アパレルの製作会社さまの協力のもと、実際に着用可能な衣装を製作していきました。


アバターデザインからリアル衣装を製作【かぐや姫の夢/月を行き来する世界】

まずは、ワークショップ部門 ⾹川⼤学教育学部附属⾼松⼩学校 大賞作品
「かぐや姫の夢」 から。こちらの作品はアバターウェアのCGを先に作り、それをもとにリアル制作するプロセスをとっています。

ワークショップ部門 ⾹川⼤学教育学部附属⾼松⼩学校 大賞
「かぐや姫の夢」 高田 莉央さん

上記のデザイン画をもとに、バーチャルファッションショー用のアバターCGを制作

CGアバターをもとに、リアル衣装制作のための詳細をつめていきました。

最終的には、インナーの着物ドレスとアウターの着物コートの2層となり、取り外し可能なパールチェーン付きベルトもアクセサリーとして制作。
月モチーフが特徴的な靴も制作しました。

ススキをイメージした黄色が鮮やかな作品。着物を洋服として現代風にアレンジし、さまざまな国の人が集まる月で、伝統衣装が人気になるストーリーです。シューズは立体的な三日月がポイント。
ショーウィンドウの様子

ワークショップ部門 ⾹川⼤学教育学部附属⾼松⼩学校 大賞
「かぐや姫の夢」 高田 莉央さん
衣装制作:タニデジタルラボ株式会社
靴制作:合同会社クランク


ストーリーを大切に、リアルへ具現化したドレス【雨晒しのカプセルコレクション/雨の止まない世界】

アワードでグランプリを受賞した「雨晒しのカプセルコレクション」。雨の止まない世界では居住空間が限られ、カプセル状で衣料を保管。水に濡らすことで膨らみ、日々着用する服になる…そんな未来の世界でのドレスを、一人の女の子を通じてストーリーが語られています。

グランプリ/「雨の止まない世界」大賞 「雨晒しのカプセルコレクション 」中村 理彩子さん

そのストーリーとデザインシートに書かれたリアル化の素材イメージから、上半身をシフォン素材で、スカート部分はビーズで制作。上半身は淡い寒色カラーを複数組み合わせることで紫陽花のイメージを作りあげました。
実際に着用可能な衣装にするため、上半身の内側はコルセットをベースにする工夫がされています。

何色もの淡い色のシフォン素材を重ねて製作
スカートのビーズの作業風景
上半身は紫陽花のようにふんわりと、ビーズスカートは雨の止まない世界で光る雨のようにきらきらと輝きます。
ショーウィンドウの様子

グランプリ/「雨の止まない世界」大賞
 「雨晒しのカプセルコレクション 」中村 理彩子さん
衣装制作:サルト株式会社


受賞者が研究・開発する特殊素材を使用して制作【Blank Solid/空中で暮らす世界】

「空中で暮らす世界」大賞の作品は、”その日の魂の調子に合わせたボリュームの服”を選ぶ暮らしのなかの、マタニティウェアをデザイン。

「空中で暮らす世界」大賞 「Blank Solid」 上條 陽斗さん

受賞者の上條さんは、デザイン案に描かれたファッションの素材を大学院で研究・製造されています。実際にその素材を使用して衣装を制作しました。上條さんの投稿に制作の様子が公開されています。

特殊素材によりふんわりとしたシルエットが特徴のドレス。空中では風を受けてさまざまな形に変化しそうです。
ショーウィンドウの様子

「空中で暮らす世界」大賞 「Blank Solid」
上條 陽斗さん
衣装制作:サルト株式会社


デザイン画をもとに、パーツに分けてリアル化を実現【Explorer/月を行き来する世界】

「月を行き来する世界」大賞の作品は、過酷な環境を生き抜くためのアイデアが詰め込まれた、機能とデザインに優れた作品です。

「月を行き来する世界」大賞 「Explorer」 Liang Chi Jungさん

ケープやアームカバー、フットカバーなど、パーツが多いため、それぞれを解釈して詳細を作成し、リアル衣装化を進めました。

パーツごとにイメージや指示をまとめたもの
メタリックなカラーのボディスーツが印象的な作品。重力が低く、過酷な環境下で体を守るパッフィーなパーツやシューズが、機能だけでなくデザイン性も高くまとまっています。
ショーウィンドウの様子

「月を行き来する世界」大賞 「Explorer」
Liang Chi Jungさん
衣装制作:タニデジタルラボ株式会社
靴制作:合同会社クランク


実現化に悩み、3Dプリントで帽子を再現【伝統のダンス衣装/雨の止まない世界】

ワークショップ部門 軽井沢風越学園 大賞の「伝統のダンス衣装」は、実現に向けて悩んだ作品のひとつです。
雨の止まない世界で、雨と太陽を崇拝する儀式のダンス衣装がテーマです。

ワークショップ部門/軽井沢⾵越学園 大賞 「伝統のダンス衣装」 西村悠呂さん

帽子がスチールパンのようになっていて、雨が当たることで音楽を奏で、その「雨の音楽」に合わせてダンスを踊る…というストーリーの素敵なファッションですが、このスチールパンのような帽子を実現するにあたり、非常に悩みました。

3DCGで作成したスチールパン帽子

最終的に、3DCGで作成し、3Dプリンタで出力、塗装することで実現することができました。

デザイン画を解釈してパーツごとに分けてイメージ化。イラストや指示はREV WORLDS運営チームのCGデザイナー田中によるもの
雨と太陽をどちらも崇拝する、青から赤へのグラデーションが印象的なファッション。
ショーウィンドウの様子

ワークショップ部門 軽井沢⾵越学園 大賞
「伝統のダンス衣装」西村悠呂さん
衣装制作:タニデジタルラボ株式会社
帽子制作:合同会社DMM.make


子どもたちのデザインを解釈してイラスト化し、CGでパターン制作、リアル衣装を制作【でっカエルパーカー/雨の止まない世界】

最後に紹介するのは、三鷹市立第三小学校でのワークショップから生まれた「でっカエルパーカー」です。

ワークショップ部門/三鷹市⽴第三⼩学校 大賞 「でっカエルパーカー」 4年3組1班

雨の止まない世界ではハエが大量発生し、それを捕食してくれるカエルが活躍、独自に進化した世界が舞台。大きなカエル「でっカエル」による「カエルタクシー」などのサービスも登場。「でっカエルパーカー」はカエルが仲間だと認識し、カエルタクシーに乗せてくれるようになる、カエルと仲良くなるためのアイテムです。

雨の止まない世界について深く想像され、とても素敵なストーリーです。そのストーリーと子どもたちが描いたデザインをもとに、どうリアルなファッションに落とし込むか悩みました。デザイン画に描かれていない部分を想像し、詳細をイラストイメージ化。CG・リアル化に向けてファッションの仕様を落とし込んで進めていきました。

こちらも他の作品同様、REV WORLDSチームCGデザイナーの田中による解説指示書。実現しなかった部分もありますが、よりカエルらしさを追求して解釈をいれています。
CGで調整しながらパターンを制作 ©タニデジタルラボ株式会社
フードのカエル部分の制作の様子
フード部分だけでなく、ベルトや袖の内側までこだわったパーカー。雨の止まない世界でもあたたかく過ごせる中綿仕様です。ブーツのカタツムリもポイント。
ショーウィンドウの様子

ワークショップ部門 三鷹市⽴第三⼩学校 大賞
「でっカエルパーカー」4年3組1班
衣装制作:タニデジタルラボ株式会社
靴制作:合同会社クランク

リアル制作の様子や展示の様子も含めて、FUTURE FASHION AWARDのダイジェストムービーにまとめています。ぜひご覧ください。

バーチャルファッションショー開催中(6月30日まで)

リアル制作衣装の展示は終了していますが、メタバースアプリ「REV WORLDS」にて、アワード・ワークショップの受賞作品のバーチャルファッションショーを開催中です。


衣装制作協力

■サルト株式会社(衣装製作)
 サルトは 2000年に創業した「洋服お直しサロン」です。専任のスペシャリストが一対一で採寸とご提案をするスタイルで、現在、銀座の他、日本橋三越本店、伊勢丹新宿店メンズ館などにサロンを構えています。 近年は「物を長く愛用する」という理念に立ち帰り、お祖父様のお洋服をお孫様用にお直しするとった「受け継ぐお直し」を積極的に提案しています。また、洋服お直し文化の発信にも力を入れ、海外でイベントも開催しています。 https://sarto.jp/

■タニデジタルラボ株式会社(衣装製作)
「アパレル DX新時代のスタンダード」を掲げ、産業・環境・次世代のためにアパレル DX化を推進し、新時代のスタンダードを築き上げます。CGによるアパレル DXで圧倒的な業務効率化と、企画開発から CGデー タ制作、ECサイトの CG代替などさまざまなシーンでのDXを支援。アパレル業界に向けてデジタル技術を 駆使し、課題解決型の事業を展開することで大量生産・大量廃棄のないサスティナビリティな事業を目指し ています。https://tanidigitallab.co.jp/

■合同会社クランク(靴製作)
 clanque(クランク)は、物作りを通して幸せの輪を広げたいと思っています。靴を作る職人が、靴作りを通して幸せを感じられる環境であり続ける。靴作りを中心にした輪が、いつしか物作りの輪となって広がって いく。物作りをする人同士が集まり、物作りへの愛を誰かに伝えていく。幸せそのものを作ることは難しい。 けれど幸せの輪を広げるためにできることはある。物作りを通して、幸せの輪を広げるために。clanque は靴作りを続けていきます。https://www.clanque.com/

■DMM.make 3D PRINT(3Dプリントによる帽子制作)
DMM.make 3D PRINTは、「誰もが 3D printingを使いこなせる世の中を作る」というミッションのもと、多様な素材や最新の産業用3Dプリンターの導入を行うことでスピード納品・低コスト・高品質な 3Dプリント サービスの提供に取り組んでいます。このたび、三越伊勢丹様が開催する「FUTURE FASHIN EXPO」にて 3Dプリント製造のご協力をさせていただきました。今回の取り組みによって、3D printingの可能性をお届けしたいと考えています。https://make.dmm.com/print/

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