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大根を剥いてたら指が大根になった話

*ぼくはほぼ毎日料理をするのだけれど、今日、大根の皮をピーラーで剥いていたら、ザクっと中指の先が持って行かれてしまった。痛みは一瞬のことなのでそこまで感じなかった。ただ、身体の中で音を立てるように「サーッ」と血の気が引いていくのが分かった。対して、指先からは血がぼとぼとと次から次へと落ちていった。

すぐさま水で血を洗い、患部をあらわにする。指先ほんの少しの肉がえぐれ、爪もちょっとだけピーラーで持って行かれていた。おそるべし、ピーラー。こんなに軽そうな名前なのに。すぐそばにあったキッチンペーパーを指に当て、上から輪ゴムでぐるぐると縛る。痛みはさほど感じない。ただ自分の身体から血が少しずつ抜けていく感覚がある。気のせいかもしれない。

幸い、利き手ではなかったので右手でスマホを持ち、器用に検索をかける。「ピーラー 指先 もげる」。検索窓を使うときにいつも思うが、カタコトの外国人になった気分だ。出てきたのはとりあえず病院に今すぐ行きなさいということ。最寄りの整形外科がちょうど15分後から開いていたので、電話をかけて一番にみてもらうことにする。

白髪でメガネをかけた先生はくるっと椅子ごと振り返り、どれどれ...とキッチンペーパーを剥がす。「あー、これなら一週間あれば治るね。切り傷の方がめんどくさいんだよ。縫ったりすることもあれば、治っても傷が残るから」とぶつぶつ先生。茶色い消毒液みたいなのを塗りたくり、上からガーゼを押し付ける。「心と一緒でごっそり持ってかれたら再生するだけなんだよ。切り傷は傷が残るからうずいたり開いたりするわけ。分かる?」と包帯をくるくる巻きながら言う。「はあ」と僕は返事をする。おおきなため息だったかもしれない。

そうして僕の中指はいま、くるくると包帯だらけになっている。大根を剥いてたら、指が大根みたいになって帰ってきた。「できるだけ手は上げといてね。指だけでも立てたりしておくといいよ」とは言われたのですが、なにぶん中指なもんで...一週間、タイピングが不便ですが、がんばります。

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