「天気屋さん」のはなし。

*これはナイショですが、じつは世界のどこかに、「天気屋さん」というのがあります。天気屋さんがなんのお店かって、そりゃ天気を売っているお店ですよ。魚屋さんは魚を売ってるし、和菓子屋さんは和菓子を売ってるのと同じです。あ、八百屋さんに八百は売ってないのでご注意くださいね。

「天気屋さん」のお仕事は、その日から1年先までの天気を売る、というお仕事です。例えば今日、11月の6日ですから、来年の11月5日までの天気を買うことができます。「来年の6月20日は雨でお願いします」なんて具合に、お客さんがそこで指定した日の天気を買っていくんですね。もちろん、購入できるのは未来の天気だけです。過去の天気を購入することはできません。

支払いはお金、もしくは同等の価値を持つものです。「同等の価値」は店主が定めます。金塊など分かりやすく換金できるものでも支払えますし、提示した額とお客さんにとって同等の価値があるものでもかまいません。例えば、大切な日の記憶だったり、ものだったり、人だったり。そういうものでも、お支払いが可能です。

「天気屋さん」には人間のみならず、さまざまな生き物が訪れます。動物はもちろん、虫や妖怪もきます。みなそれぞれ、その日の天気を買いたい理由があるのです。雨だの晴れだの雪だの嵐だの無風にしてほしいだの、それぞれの天気にする理由が、それぞれにあるのです。

天気の購入は、基本的に先着順になります。なので、どうしてもその日を天気にしたい方は、1年前からやってきます。が、もちろんすべての日程が予約で埋まっているわけではありません。明日の天気がまだ購入されていない、なんてこともザラです。

さて、この「天気屋さん」を舞台に、いろんなキャラクターたちがそれぞれの思惑で、天気を買いに来ます。晴れも、雨も、曇りも雪も青空も。店主は1匹のトカゲです。このトカゲは2代目で、先代の祖父から家業を受け継ぎました。まだ若いですが、なかなかに落ち着いた寡黙な人柄です。あ、トカゲ柄です。トカゲ柄っていっちゃうと、トカゲに柄があるからややこしいかな。さあ、ここからどんな物語がはじまるのでしょう…

なんて感じで、書いてみました。ま、これはまたいつか、どこかで出てくると思いますよ。


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