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人生は壮大なコントだ

*先日、お世話にしかなっていない人に、とある偉い人を紹介してもらった。といっても、僕から紹介してくれと頼んだわけではない。なかば無理やり「紹介するよ」と言われ、断れず、待ち合わせの10秒前までイヤだなと思いながら向かった。待ち合わせの10秒前まで悩んでいる出会いに、いい出会いなんてあるわけがないことをこの時点で分かっておくべきだったのだ。

僕と親ほど歳の離れたその人は、お店について挨拶するなり、早々に自分の経営している会社のこと、沖縄から裸一貫で出てきて、今や某国の祭りの仕事までしていること、つまり自慢にしか聞こえない自慢を元気よく話し始めた。最初こそ「きっと自己紹介として、ちゃんと話してくれているのだろう」と思っていたのだが(思うようにしていたのだが)、自慢話を1時間近く続けた後、僕に向かって「君はまだ若いから。稼ぎとか関係なく、どんどん働いたらいいフェーズだよ。で、何の仕事してるんだっけ?」と、麦焼酎を頼むついでくらいの感じで聞いた。そこでもう心が折れかけてしまった。

きっとこの人は、目の前に座る人間は誰だっていいのだ。とにかく自分の話をしたいだけなのだ。そんな人と仕事をしたいとはなかなか思えないタチなので、タイミングを見計らってお手洗いに行くふりをして帰ろうか本気で悩んだ。本気で悩んで、ある考えに踏み切った。そうだ、コントだ。コントだと思うのだ。僕はこの社長からどうしても仕事を取ってこないと経営している会社が危ない新人営業。おべっかを使ってでも、頭を下げてでも、この人から仕事をもらわないと明日はない。その設定をハイボールに口をつけるたびに頭に染み込ませ、話した。

・うまくいかないとき、何やってんだ俺と思うとき、たまに「人生は壮大なコントだ」と思うようにしている。それだけで、役に入り込むように乗り切れることがある。というか本当に、人生は壮大なコントのようなものだったりする。真面目すぎてもおもしろくない。ふざけすぎてもつまらない。そんな虚実入り混じった世界でぼくたちは生きている。


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