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実力よりも礼儀だ

*いまお手伝いしている会社の後輩から「烈さんみたいな先輩になりたいんです!どうやったらなれるんですか?」という有難くもざっくばらんな質問をいただいた。その言葉自体は嬉しかったが、返答には困ってしまった。それを見かねた後輩が「どうやって先輩術・上司術みたいなものを身につけたんですか?」と助け舟をくれる。

ぼくはずっとフリーランスでやってきたので、組織に所属した経験は皆無だ。つまり、クライアントという存在はいれど、上司も部下も持ったことはない。そんな僕をいい先輩と慕ってくれるのは嬉しいことだが、正直どうやったら?という方法も、とくに後輩へ意識していることもなかった。あるのは「人」に対する意識だけで、先輩としてどうか、みたいな立ち振る舞いもほぼしたことがなかった。

その質問に答えられなかったのが心残りで、昨日の帰り道、なんでだろうなぁとずっと考えてながら、仮縫いのようなひとつの答えに至った、それは「こんなことされてやだったなぁ」ってことを、人にやらないようにしてきたということだ。

なめられることはたくさんあった。雑なお願いなんて日常茶飯事だし、誰かの代わりのような仕事をいくつもしてきた。責任をなすりつけられることも、クライアントの上司部下の関係を横から見ながら「大変だなぁ」と思うことも多々あった。そんな「嫌だなぁ」と思う経験を、避けるように避けるようにぼくは振る舞っているのかもしれない。

もちろんその全部ができているわけではないし、自分をいい上司だとも思わない。どこにでもいる普通の人間として、普通の人間である相手に失礼のないように、とはわりと思っている。普通の人間が普通の人間にすることを、普通にやる。ぼくは仕事に必要なのは実力以前に「礼儀」だという感情がどこかにあるのかもしれない。

好き嫌いは激しいし、クセのように人を見下してしまうこともある。人にガッカリすることもある。そのたびに、なめられた経験を思い出す。ガッカリされたことを思い出す。自分もどこかでガッカリされてきた。ガッカリされてからが勝負だ、と自分に言い聞かせている。

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