ドキュメンタリー72時間。

*ここ最近、めしを食いながら「ドキュメンタリー72時間」という番組に釘付けになっている。NHKが制作している番組なんだけど、これがおもしろいんだ。毎回、ひとつの場所を決めて、そこに72時間、つまり3日間張り付きで取材するというもの。その「場所」のセンスも、なかなかおもしろい。新宿にある24時間営業の格安弁当屋や、日本ダービー前の正門、北九州の歴史ある旦過市場などなど。この前観ておもしろかったのは、日本一大きい熱帯魚を売るお店だった。

まず、この番組の何がおもしろいかというと、「人」ではなく「場所」に焦点を当てたドキュメンタリーだということ。あくまで場所に焦点を当てているので、その場所に来る人に話を聞いたり、背景を伺うことはあるが、深入りはしない。「こんな人がその場所には来る」までは番組の中で紹介されるが、その「人」がなぜそんな人で、その背景を持っているかまでについては言及しない。その深入りしない姿勢、あくまで場所に密着しているところが、ぼくにとっては非常におもしろい。観ているこちらの想像力で、あとは補うことができるからだ。

日本一大きい熱帯魚を売るお店の回では、3日間、様々な人が魚を買いにその場所に訪れていた。ぼくは魚どころかペットを飼ったことがないので分からなかったんだけど、みんな魚を飼うことを「趣味」だと言うんですよね。それはぼくには知らない感覚で、おもしろかった。犬や猫を飼うことを「趣味」と呼ぶ人はいないだろう。しかし、水槽で魚を飼うことは「趣味」だと、訪れている人たちは口々に話していた。

犬や猫を飼うことと、魚を飼うことの何が違うのか。あくまで想像でしかないが、ひとつは「育てる」という感覚なのかな。犬や猫は敷地内を自由に歩いたり走ったり散歩に出したりできるが、魚は水槽から出ることはない。扱いもすごくセンシティブで、掃除や餌やりを少しでも怠ってしまうと、病気にかかったり亡くなったりすることも多いそうだ。

自分の世話がなかったら、明らかに命を落としてしまうもの。大仰な言い方をすれば、生殺与奪の権利を自分が握っている状態で育てるから、「趣味」と呼ばれるのかなぁ。「命を育てているのに趣味だなんて!」と言いたいわけではない。その感覚が、ぼくは面白いものだなと思った。「子育てが趣味です」とは言わないものねえ。

いや、もしかすると逆かもしれない。魚を鑑賞するという側面があるから「趣味」と呼ぶのかなぁ。犬や猫、子どもはあちこち動き回るが、魚は水槽に目をやることで、鑑賞して癒されたりする。その要素が「趣味」と呼ばれるゆえんになっているのだろうか。

話は逸れましたが、この番組、おもしろいんですよー。自分の知らないことを、好きな人たちがいること。それを知れるのが、この番組の面白さの一つでもあるんだよなぁ。


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