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ルックバック

*話題の映画『ルックバック』を劇場で観てきました。1~2年ほど前でしたっけ、『チェンソーマン』で一世を風靡した藤本タツキさんが出した読み切り漫画。僕もその日、突如として現れたその読み切りを一気に読んで、めちゃくちゃ感動したことを憶えている。藤本さん、調べたら僕の1つ上の年齢で、ちょっと腰が抜けそうになってしまった。

映画はもう、それはそれはよかった。あと10回は劇場で観たいほどよかったです。60分という短いアニメ映画ですが、随所にこだわりも散りばめられているし、本当に総合芸術という感じ。何より音楽を担当されたharuka nakamuraさんというピアニストの方が僕は大好きで、それもあってもう、開始30秒のセリフも何もない最初のシーンで、ぼろぼろと涙をこぼしてしまった。そこから60分、ずっととめどなく涙が。べつに泣けたからっていい映画なわけじゃないんだけれど、個人的にずっと涙が止まらないほどの激情と美しさがそこにはあった。

グッと来たシーンはいくつもある。生き様のような部分もだが、それ以上にひとりの人間が抱えるさまざまな感情に対して、ものすごく正直に誠実に描かれていて、それがたまらなかったんだよなぁ。大好きな演劇作品のラストで「そこから見た私は泣いてる?笑ってる?」「ううん、光ってる」ってセリフを思い出した。そうだ、喜びも悲しみも怒りも悔しさも、あらゆる感情は遠くから観測すればすべて光なのだ。その光が、スクリーンに60分もの間、ありありと映し出されていた。

一緒に観に行った役者の人と、観終わってから飲みながら「この映画を観て、筆を折る人多いのかなぁ」なんて話をした。その若さで、あれだけのものを作られたら、自分はとうてい敵わないと思って筆を折る人は確かに多いだろうと思った。ただ個人的には、あの映画はそこもテーマのひとつであるように感じていて、意地でも筆を折ってたまるか、という思いも自分の中にある。そういう意味では嫉妬と勇気を同時にもらったような作品だった。

これから観る方はぜひ、音響設備の良い映画館で観ることをおすすめします。ほんっとうに音楽がいいんだ。最近はサブスクで出てから観ようって方も多いらしいですけど、自信を持って劇場で観た方がいいよ!とおすすめできる、素晴らしい映画でしたよ。

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