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絵を描く筋肉

*小さい頃、絵を描くのは好きだったが得意ではなかった。というよりむしろ、ヘタな部類だったと思う。猫を描いたらタヌキと言われ、犬を描いたらキツネと言われる始末。しまいには中学の美術の授業で、先生から「君は絵は下手だね」と言われて明らかにやる気を失ったのを憶えている。いや、先生のせいにしてもいけない、そう言われてもやり続けるだけの熱量が自分にはなかっただけだ。

広告やコピーの仕事を担当していて、さいきん自分の弱みが少しずつ浮き彫りになってきた。それは「文章ですべてを伝えようとしてしまう」のだ。それはことばを過信しているとも言えるし、自分の実力を過信しているとも言える。ただことばはことばであって、それはひとつの情報やデザインを構成する要素のひとつに過ぎない。ことばで何かを伝えるのではなく、デザインや写真やそれらを含めた総合的なすべてで何かを伝えるのであり、ことばはその手段のひとつだ。

さいきん仕事をしていて、自分のその「ことばですべて伝えようとしてしまう」キライがあることにふつふつと気付き出した。これはまだ僕がコピライターとして三流な証拠だと思う。コピーライターは言葉を扱う仕事ではあるが、言葉で何かを伝える仕事ではない。その広告や伝えたいものをあらゆる手段を使って、企画からやるのが仕事だ。ことばを、ことばだけの枠組みに当ててしまうとどうしても世界は狭くなる。ことばは、その広い舞台の中で踊るもので、舞台そのものではない。ということを、改めて気付いた。

で、そのキライは僕に絵を描く力が弱いからなのかもなぁと。スケッチやデッサンを勉強したら、ちょっとでもその「絵を描く」筋肉が身につくのかもなぁ。なんてことを思いながら、数年前からデッサンでも練習するかと思ってはいるが一才始めていない。ダイエットと同じ。こりゃちょっと本腰入れてやろうかなぁ。今のままでいたら、今のままだもの。


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