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「憧れを超えた侍たち」

*「憧れを超えた侍たち」、ちょうど明日まで上映されている、今年のWBCのドキュメンタリー映画です。昨日観てきたのですが、これがよかったーっ。あのマンガのような奇跡の物語の舞台裏が、どんな雰囲気でどんなことがあったのか、撮影したカメラを通して知ることができます。

約一年ほど前から首脳陣が集まり、何度も重ねられる会議。どんな選手を呼ぶか、呼べるのか以前に、「どんなチームを作りたい?」といったところから、栗山監督の采配は始まります。メジャーにいる選手や、日本でも体調や球団との兼ね合いなどの事情もあって、全員が出場してくれるわけではない。その中で、理想のチームはどんなチームか、それを実現できる選手は、などとチームが結成される前から何度となく話し合われているんですね。

もう、ぼくはこの映画を「栗山監督の物語だ!」と言ってもいいんじゃないかと思う。いざ試合に臨むと出来ることは限られている「監督」という役者が、いかにしてチームを作っていくのか。出場してほしいと選手に熱を伝えたり、コーチ陣とコミュニケーションを取ったり、「世界一」になるためにできることを惜しまない。球団への交渉の仕方、選手への声掛けひとつとっても栗山監督の敬意と信念が感じられて、ぼくは観ながら映画館で唸っていた。

カメラマンからの質問にも、ほとんど即答ですよ。「迷ってる」のか「こうしたい」のか。それはすでにたくさん考えていて、まとまった考えと態度を一貫すると決めたからこそできる姿勢だ。こういう人が指揮官だと、付いていくものは相当やりやすいだろうなぁ。何より「一流の選手を集めて、世界一を目指そうとしたら、自然とチームが出来上がっていくことを学ばせてもらった」という言葉には、唸ったね。

ベンチ裏や更衣室、会議の内容や雰囲気、あの物語の舞台裏から、演技ではない「生」の情報が見て聞いて感じ取れる。そう、フィクションでも創作でもないから、演技ではなく「ドキュメンタリー」なのだ。仲間を鼓舞する姿、打って抑えての喜び、活躍できない悔しさ。その「生」の感情が、カメラを通して伝わってくる。とくに「他人が本気で悔しがっている」場面なんて、普通に生きてたって見れることは少ない。本当に悔しがれるのは、目一杯努力を重ねた先で、立ち向かった人間だけだ。あの姿は、観ている人の心を鼓舞したに違いない。ぼくも「俺はあれだけ悔しがったことがあるか?」と胸に手を置いて問い合わせてみた。

「憧れを超えた侍たち」、29日で上映は終わるそうです。ぜひぜひ、お近くの映画館で観てみてください。あ、エンドロールが終わるまでは、席を立たないようにね。


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