「尊敬」と「軽蔑」のちがい。

*ナオユキさん、というスタンダップコメディ、もとい漫談を生業にされている芸人さんがいる。2年ほど前だったかな、愛知県のフェスで見て以来トリコになり、ちょくちょくとライブに通うようになった。右手にハイボールを、左手でタバコを持ちながらスタンドマイクに向かって、ショートショートのネタをリズム良く披露していく。それはまるでブルースのようで、メロディの中にある音符の矛盾や可笑しさに、聴いているこちらが思わず「くすっ」と笑ってしまう、極上の酒のアテのような噺。

ナオユキさんの噺の中には、よく「酔っ払いのおじさん」が出てくるのだけど、これがほんっとーに面白いし、好きなんだよなー。会ったことあるもん、あんなおじさん。そして会ったことがなくても、浮かぶもん。酔っ払いながら(演技だよ)「おで、おで、、、酔ってもじぇんじぇん変わらんなぁって言われるネン!!」「おまえシラフのときもそれかい」みたいなね。そんな短い、時間にして10秒に満たないショートショートのネタを、演奏するかのように話していく様は、まさに音楽なんです。

こうして文字だけで見てしまうと、ナオユキさんの噺はどこか、そうした人物たちを小馬鹿にしているように見えてしまう。けれど、実際に見てみると、そんなことはこれっぽっちも思わないんだよ。むしろ、哀愁と愛執さえ漂うほど、好きだなぁと思って見ちゃう。揚げ足をとったり、馬鹿にしたり、毒舌と呼ばれる笑いの取り方が流行る世の中で、ナオユキさんの芸は、出汁から取ったくらい愛があるんだよなぁ。

「真似」には2種類あるという。「尊敬」と「軽蔑」だそうだ。ナオユキさんは言わずもがな、前者なんだよなぁ。で、その違いは一体何なのだろう?と考えたときに、やっぱり細部にあるんだと思う。軽蔑の真似は、一見似ているように見えても、雑だ。軽蔑しているから、その人の細かいところまで目が行き届いていない。対して「尊敬」の真似は、すっごくリアリティがあるよ。誇張されていたとしても、芸が細かいというのか、すっごく細部までよく反映されている。それはまさに「尊敬」というまなざしだからこそ生まれる、細部のクオリティなんだろうな。思えば、「目を向ける」って愛情だものねー。


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