書かなきゃ、書き直せない

*ぼくは今まで取材だったり、エッセイだったりを書いてきた人間で、あんまり「創作」を書く機会がすくなかったんです。例えば「小説」みたいな物語をつくる機会はなかったし、つくろうとも思えなかった。そもそも自分が物語を書くのが苦手で、長い文章を書くのに向いていない、と思っていたのもあるんだけど。

しかしここ最近は、友人とやっている文芸部が面白くって、そこでは基本的に短い小説めいたものを書くようになった。それらを毎月書きながら思ったんですけど、書かなきゃ、書けないんですよねえ。当たり前のことだけど、そうなんだ。書かなきゃ、書けない。書かなきゃ、完成もしないし未完成の状態すら出てこない。もっとちゃんと言うならば、まず書かないと「書き直す」こともできないんですよ。

ぼくはコピーが好きで仕事でしているのもあるけれど、だいたい短いセリフから着想するんです。「このセリフを物語に出したいな」と思って、そのセリフがどんな人間が、どんな状況で、どんな文脈の中で、誰に言うのがいいのかを考えていきます。物語を線で書いていくというより、点々とところどころにセリフや一文を用意して、その間を埋めるように書いていくことが多い。

そして良くないところが、完璧主義というかなんというか、100点を思いつくまでなかなか書けないんだよなぁ。もっといいシチュエーションがありそうだ、とか、もっといい情景が思いつきそうだ、なんて言い訳をして、なかなか書かない。しかし、ここまでやってみてようやく思ったんだけど、その状態でもまずは「書くこと」だ。空想の100点を追い求めるよりも、40点を出して、それを80点へと昇華させていくほうが、はるかに難易度は低い。

とりあえず書いてみりゃいいんだ。書いてみて、納得がいかなければ、書き直せばいい。そもそも最初から納得がいくものを書けると思ってることが、傲慢じゃないか。自分にそこまで才能なんてないし、そーんなたいしたやつじゃないよ。だから、納得がいかなくても書くしかない。書かなきゃ、書き直すこともできない。何度も何度も書き直して、ちょっとぐらいは納得いくものをどうにかつくるしかない。そんなことを、自分に言い聞かせながら書いている。

そうなんだよなぁ、書かなきゃ、始まらない。始めなきゃ、始まらない。軌道修正をするにしても、取りかからなきゃ軌道は残せないし見えない。やらなきゃ始まらないんだよなぁ、おれよ。


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