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信号を待つ人

*おいら、この前おっでれえたことがあんだ。都会のトーキョーって街はえんれ人が多ぐでよ、車も、歩行者も、いっぱいいんだ。んで、おいらは信号のある横断歩道を渡ろうしていたんだべ。そしたら、青信号がこう、チッカンチッカンと点滅するもんだから、急いで走って渡ろうした。そしたらだべ。横断歩道の向こう側にいたお方は、チッカンチッカンと点滅するのを見て、渡るのをやめたんだっぺな。おいら、これにはえれえおでれえたもんよ。

…むづかしいので、普通に書くことにする。でね、わたし、そのときおっどろいたのよ。小さなお子さんを一緒に連れてたりしたら、まだ分かるわ。でもその女性はひとりで歩いていて、点滅を見て、渡るのをやめたのよね。そんな人を見るのは、ワタシ、初めてだったわけ。もちろんそんな人はたくさんいるんだろうけど、見たことがなかったのよ。点滅って「急いで渡れ」だと思ってたから。

世の中には2種類の人間がいる…なんて使い古されたテを使いますが、「点滅になったら急いで渡る人」と「点滅になったら次の青を待つ人」がいるんですね。文字にしてみれば、すごーく当たり前なことなんです。でも、自分が目の前で渡ろうとしていた信号が点滅したら、たいていの人は渡っちゃうんじゃないかなぁ。で、これを「待ってみる」って発想は、ぼくにとって「普段しないこと」だから、おもしろいなぁと思ったわけです。

いざ点滅でぐっとこらえて、次の信号を待ってみると、まず向こう側から急いで渡ってくる人がよく見えます。そして、これが意外だったのが、向こう側で同じように待っている人もよく見えるんですね。さらに、こっち側で待っている人や、急いできたけど赤になっちゃったよ、なんて人も見えます。急いで渡っているとき、そんなことに気付かなかった。これはね、いつもと違う帰り道で帰るくらいのおもしろさ、ありますよ。

こういった「日常」を味付けする調味料みたいなものは、探したり考えたりすれば、いっくらでもあるんだろうなぁ。ちょっとの時間をかければ、いつもと違う出口で出てみたり、階段を使ってみたり、鈍行電車に乗ってみたりと、いっくらでもある。たった5分や10分を節約して、その節約した時間でぼーっとするくらいなら、そうしたスパイスに使ってみても、おんもしろいかもしんねえべ。


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