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いろんな春巻き

*「食べ物で何が好き?」と聞かれても、基本的に「好き」か「大好き」しかない僕は、この質問に対して答えあぐねるばかりの人生だった。ハンバーグや唐揚げなんていったメジャーリーガーたちも好きだし、実は結構「漬物」なんていう守備固めのバント要員みたいなやつらも好きだ。あ、意外かもしんないけど、最終回に出てくる守護神「ラーメン」も好きだけど、実はそんなに食べやしない。

しかしそんな僕も最近大人になったからか、この質問に対する答えを、はっきりと言えるようになった。それが「春巻き」なのだ。そうだ、思えば僕は小さい頃から、春巻きに関しては目がなかった。給食で出たら嬉しかったのを憶えてるし、中華料理を食べに行けばスタメンで頼むメニューのひとつじゃないか。

春雨とひき肉、千切りにした野菜を炒め、ごま油や鶏ガラなんかで味付けをした「餡」を、小麦粉で出来た大きな皮で包んで揚げたもの。食感のアクセントとして、たけのこが入っているとなお良い。パリパリの食感から、とろっとした餡が溢れ出すあの魔法の食べ物。餃子ほど餡の食感はないけれど、お肉の動物性の脂の感じと、野菜のコクみたいなものが合わさり、それらを逃さないように受け止めている春雨。

しかし「春巻き」をメインで押し出している中華料理屋も少なそうだ。麻婆豆腐や餃子みたいに「あの店は春巻きが美味しいんだよ」という噂も、たぶん聞いたことがない。

その理由を考えてみると、手間と料金が合ってなさそうだからだろうか。餡を炒めて作って、それを巻いて揚げてとそれなりに手間がかかるわりには、春巻きという一品に払いたくなる料金はせいぜい500円かそこらだろう。ボリュームで料金を調整できることはあっても、せいぜい2本や3本の春巻きで、1000円かそこらの料金を取ろうとすることは店側にとっても難しいのかもしれない。

でもさ、春巻きって、ものすごく工夫の凝らせる料理だとは思わないかい?餡は炒めて作るんだから、そこにまず味付けの変化を加える余地はあるし、脂だってラードで揚げてみたりといったこともできる。なんなら外国人助っ人選手みたいな「生春巻き」だってあるし、エビやアスパラといった具材をさらっと巻いて揚げる、和風チックな春巻きだって美味しそうだ。

そう考えてみると、「春巻き」はもっと評価されていい、幸せな料理な気もするんだけどなぁ。ネーミングにしたって、春を巻いているわけですからね。ちなみに僕の好きな春巻きは、神戸・満園という店の、皮に海老の風味がするおしゃれな春巻きと、店名は忘れたけれど、たけのこの代わりにほっそいゴボウが入ってる玉子春巻き。あれ、たびたび食べたくなるんだよなぁ。いろんな春巻き、食べたいなぁ。

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