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平熱のままで

*先日、久しぶりの友人と会った。彼女と会うのは一年以上ぶりかもしれない。なんだかんだ、21か22くらいからの付き合いになるので、もう8年ほどの月日が流れている。気の置けない、どーでもいい話をうかつに口走ることのできる、大切な友人だ。

彼女が運転する車に乗りながら、町中を走っていると、それはまあ運転の荒い車が現れた。それを見た彼女は「なんなん今の車?頭悪いん?」と独り言をつぶやく。もう8年もの付き合いになるのに、彼女の口の悪さ(好きなところですよ)に気づいたのは、本当に最近のことだった。僕も似たようなことを思うタイプなのもあるが、それ以上に、彼女が本来持つ口の悪さを出してくれるほどの、平熱の付き合いがようやくできたんだなと思った。なぜかそのことに、ひっそりと感動してしまった。

彼女は大きな病気を患っていて、そもそも僕たちが出会ったきっかけは、彼女の病気が原因でもあった。最初の1,2年は、それこそ頻繁にやりとりをしていたのを憶えている。感情をぶつけ合う、ドッジボールみたいなやりとりも多かったはずだ。生きるとか死ぬとか、そういったやりとりも多くした。ただそれは、どこか熱を帯びた、異常気象のようなやりとりだったのかもしれない、と振り返ると思ったりもする。

正直、僕は彼女のことを「かわいそう」だとか思っていたのかもしれない。彼女ではなく、病気を抱えていたことを中心において考えていたのかもしれない。今振り返ると、そんな気も少しする。けれどそんな時期があったからこそ、今僕らは、平熱で口の悪いまま関われているんだとも思う。ことあるごとに口が悪くなる彼女の話を聞きながら、僕はなんだか嬉しくなってしまった。ようやく僕らはお互いに、本当にただの友人として関われているんだなと思った。

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